【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第222回

2014/7/31
 「中断明け連敗」

 J1第15節、浦和×新潟。
 W杯中断明けのリーグ戦初戦。折悪くちょうど試合時間に集中豪雨がぶつかってしまった。バケツをひっくり返したようなどしゃ降りのなか、雨カッパ姿でサポーターが耐える。鬼門・埼スタでの勝利を見せたかったなぁ。僕の見た感じでは、過去最大に「埼スタ・浦和戦」が勝利に近づいた試合だった。あんなに自分らのペースで試合ができたことはない。ていうか、これは勝つなと思って見ていた。

 何で勝てなかったのか、キツネにつままれたようだよ。確かに前半はちょっとバタバタしたところがあって、そこを突かれ、オウンゴール(松原健)により失点してしまった。けど、立て直したよ。キャンプで相当、練習したなぁって感じの「短い距離でショートパスをつなぎ、敵陣に攻め込む」動き。試合はほぼ支配したといっていい内容です。

 ただ敵陣深くなると急に迫力がなくなる。おっかなびっくりアリバイ作りみたいなクロス(一応、俺、攻めましたよー?)を入れてみたり、後ろへ下げたり。いちばんアイデアも勇気も必要なエリア近くだっていうのに、不安そうになる。シュートは打ってるんですよ。トータルシュート数、新潟14、浦和6。数字通りの試合だったと思うんだけど、フィニッシュが決まらない。いちばん惜しかったのは、レオ・シルバのスルーパスに鈴木武蔵が抜け出してGKと1対1になったシーンじゃないかな。決まらないのが不思議だった。とにかく大量のチャンスを作りながら1点も挙げられない。

 まぁ、浦和は守備を鍛え上げて現在、首位に立ってるチームだ。長い中断で忘れてしまいかねないが、サポーターの不祥事(差別的な断幕掲示)で、スタジアムからゲーフラ、断幕等が消えている。実力でクラブイメージを回復したいといっしょうけんめいだろう。この日も素晴らしい守備ブロック(真ん中めちゃ堅いよ)を見せていた。

 試合後の会見で柳下正明監督は「怖がってる選手」について言及した。僕の指摘した、フィニッシュの部分で怖がる選手のほかに、守備の部分でも怖がってる選手がいたということだ。それは経験なのかな、覚悟なのかな。僕らは「怖がるな!」と言うだけだ。怖がってるのはスタンドで見ててもわかるよ。がんばれがんばれ、勝負にいけ、戦えよ!

 その会見で柳下さんは「でも、毎試合、発見がある。新潟の選手たちのプレーが変っていると感じている」と言った。そうだなぁ、本当に少しずつかもしれないけど、DFのウラへ抜けようとしたり、後ろから飛び込んできたり、面白いシーンが見られるようになった。続けていくしかないね。がんばれがんばれ、前を向け!

J1第16節、新潟×FC東京。
 連敗。スコアも0対1で前節と同じだが、試合内容もそっくり似通っている。得点が遠いなぁ。これはちょっとトンネルに入ったかもしれない。指折り数えてJ再開を待っていたサポーターはもちろんのこと、チーム関係者も「連敗リ・スタート」は誤算だと思う。再開していきなり試合日程が詰まっている。ここでつまづくとけっこう厳しいのだ。

 浦和、FC東京の2試合を比較すると、おそらくは相手のゲーム勘やコンディションのせいで浦和戦のほうが後半、つけ込むチャンスがあった。FC東京戦はノーチャンスに近かったなぁ。ボールは持てるんだ。2試合とも先に失点したから、追いかける新潟は前がかりになる。相手は「持たせてカウンター」を狙うね。実際、カウンターで2点めを奪われかねなかった。

 ボールは持てる。そうなんだよね 、持てるんだ。ただ2試合続けて思ったのは「ボールをエリア付近まで運ぶ」仕事と「エリア付近から勝負にいく」仕事は、ぜんぜん別のもんだなぁという感覚。「ボールをエリア付近まで運ぶ」は練習を積んで、なかなかいい感じになってる。が、そこからだよ。サッカーのいちばんの見せ場。フィニッシュと、そこへ向かう崩しの部分。

 それが柳下監督の会見コメントのように「判断の悪い選手がいた」という原因に帰するのか、もっと全体的な問題なのか、僕にはわからない。FC東京戦はちょっとチームがバラバラにも見えた。それは新加入の選手が多いせいもあるのだと思う。僕は試合中、「誰がゴールを決めるんだよ?」とひとりごと言ってたもんなぁ。合わなくて横に渡す、後ろに下げる。

 もう一度、戦い方を整理したほうがいいと思う。例えばこの試合、左サイドバックのイ・ミョンジェはほとんど上がらなかったけれど、あれじゃ田中亜土夢も生きない、攻めに迫力も出ない。新潟のサッカーは思い切りのいいサイドの上がりに支えられてたじゃないか。


附記1、まぁ、ここはあわてず立て直しましょう。とりあえず、直近に迫った次節・川崎戦ですね。関東は梅雨明けして、日曜日めっちゃ暑くなると思います。好調フロンターレに加えて、暑さも大敵です。

2、FC東京戦は「アディダス・サンクスデー」だったわけですが、さすが同じくアディダスをサプライヤーにするFC東京、チームスタッフのウェアがクラブエンブレム以外、完全に一緒でしたね。監督会見でもFC東京のイタリア語通訳さんと、横に立つアルビ・栗原広報が同じウェアで面白かったです。

3、そのアディダス・サンクスデーのイベント(選手スパイク・プレゼント)に川又堅碁選手が元気そうな姿を見せたそうです。「試合に出れるようがんばります」とコメントしたとのこと。心配してたんでホッとしました。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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