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2016.10.20スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第313回
 「選手は力を持っている」

 今月4日、新潟県不動産鑑定士協会のセミナー講演会「地方メディアの昨日今日明日/新しいコミュニティーをひらく」(於・メディアシップ・新潟日報ホール。(株)ニューズライン、元『ストライカー』副編集長、井上和男さんとご一緒しました)のため、試合もないのに新潟市へ行くという珍しい体験をしたのだ。講演内容は半分ほどがメディア論、半分はサッカー談義になった。

 井上さんは、カズこと三浦知良選手を10代の頃から取材して昵懇の間柄であり、「カズに日本一食い込んでる男」と呼ばれたエディターだ。現在は故郷に戻り、お子さんと2人、Nスタンドの住人になっている。井上さんの発言で興味深かったのは「アルビサポは優しい。どんなに不満があっても、場内一周で選手が来ると声援を送り、拍手で迎える」「負けて皆がうつむいてるときも、指宿だけは必ず顔を上げてサポーターの視線から逃げない」等々。もちろんカズのエピソードは別格の面白さだった。

 で、その夜は懇親会があったりして新潟泊まりだった。と、翌日は聖籠へ行ってみたくなるじゃないか。うまい具合いに磐田戦後のオフが明け、練習再開の日だった。栗原広報に片渕浩一郎監督の取材をお願いした。「緊急事態」の磐田戦が一段落したところで、あらためて激動の一週間を振り返っていだだく。そして、来(きた)るラスト3節の抱負をうかがった。

― 今日は練習再開の初日でした。雰囲気が明るかった印象です。

 「ジュビロ戦の勝ちがもたらしたものですね。あの勝ちがなかったらポジティブな空気をつくることにすごいエネルギーを使ってたと思います。実際、今日は選手のモチベーションを上げるために何かする必要が全くなかったです。あの勝ちがこの3週間を前向きなものにしてくれました」

― 僕は磐田戦のとき、ベンチのムードに注目していたんですけど、選手もスタッフも最初緊張してるのがわかった。で、試合が始まって本当にひとつになるんですよ。全員一丸、控えも何もなかったです。

 「色んな状況がありましたね、監督が達磨さんから私に変わった、これを落としたら正直後がない、アウェーにあれだけのサポーターが来てくれた、ジュビロ出身の選手が3人もいてこの一戦にかける思いがあった。その色んな状況のなか、自然とひとつになって戦うムードができました。元々、苦しいシーズンですけどもチームは分裂してバラバラになっていたわけじゃなく、まとまっていました」
 「正直、私もジュビロ戦が初めてなんです、ベンチに入ったの。今までプロのリーグでベンチに入ったことがなかったんです。コーチとしても、ましてや監督としても。ああいう雰囲気っていうのは私も初めてだったんです。だから私もあぁ、みんなチームとして戦ってるなと感じてました」

― 僕は片渕さん落ち着いてるなぁと思って見てたんです。この人、やることハッキリ決めてるんだなって。

 「ゲームが始まるまでは緊張しましたし、自分がコントロールできるか不安でいたんです。けど、いざ始まってしまえば自分もそのなかで戦ってるっていう気持ちになれましたし、その反面、自分がそのなかに入り込んでしまってはダメだって冷静な部分も持てました。だから選手のことも、状況も、自分自身もまずまずコントロールできたかなという感じが持てたんです。ただ初めてなんで正解はないんですよ。何が正解で何が失敗なのかはわからないんで探しながらでしたけど」

― 試合前、ゴール裏へ挨拶に自ら出向いたのも評判になりました。

 「あれもプロの監督として何が正解かわからないんです。正解かどうかわからないけど、とにかくやりたかったことなので迷わずゴール裏へ向かいました。迷う余地がないです。戦うためにサポーターの方の力が必要だと思ったので、監督就任を決めたその日に『アウェーでスタンドに行きたい。行って挨拶させてくれ』ってスタッフに頼みました」

― ジュビロ戦は初陣としては100点じゃないですか? 試合後、オフをはさんでどう振り返られますか?

 「100点じゃないですね。正直、先に失点してもおかしくない状況でしたし、先に点取られたらどうなってたかわからないです。もっと改善しなきゃいけない点は沢山見受けられました。ただ交代で送りだした選手が結果を出したのは、たぶんどの監督さんも『監督冥利に尽きる』って言うと思うんですよ」
 「ただそれが私自身どこまで計算してできたかっていうと、あのときは能仲(太司)や内田(潤)や不老(伸行)や渡邉(基治)、コーチ、スタッフがいてくれたので、その都度相談しながら『俺はこう思う。どう思う?』って話をしながら、最後は自分の決断で、自分のフィーリングで、あの順番あのメンバーで交代をしていったんですけど。それも交代で出て活躍してくれた選手がいたからで、ムサシに『ターンからクロスありがとう』、ヤマ『よく飛び込んでくれてありがとう』、ガク『あの時間にゲームを落ち着かせてくれてありがとう』って話をしたし、もちろんそれまでピッチで戦ってくれてた選手にも感謝です」

― 片渕さんはずっと選手は力を持っていると強調されてますよね。

 「はい、それは就任会見でも言いましたし、ずっと思っています。今年は達磨さんがチームを構築し、私も傍らでコーチとして見させてもらって、確信してますからね。間違ってない、彼らにはパワーがある。ただ結果だけが出ていない。じゃ、何をするか。彼らのパワーを出させることに専心しよう。環境を整えるだとか考え方を整理するとかやれることがあります。それは私がこのチームにいたということが大きいと思うんです。今までやってきたことを信じられる。もし外から来ていたら違うことをやろうとしたと思います」
 「新しいことをやろうとするのは実はそんなにエネルギーいらないと思うんですよ。エイヤッとやってしまえばいいですから。エネルギーいるのは継続することですね。私は今までやってきたことを継続していきたいですし、これからもやっていきます」
 「ただそれだけではダメなので。私が変わったってことは継続するだけではダメだってことでしょ。達磨さんがやるのと一緒じゃないですか。私が変わったってことは何かを変えなきゃいけないってことなので、今、前へ行こうっていうところを強調させてもらっているんですけど。根底から変えようではなくてベクトルを軌道修正しようって感じです」

― これからブレークをはさんでラスト3節です。生き残りのために片渕さんがチームのここに懸けようと思っておられる、アルビレックス新潟のストロングは何ですか?

 「勤勉さですかね。チームのために仲間のためにっていう忠誠心、献身性っていうのは本当にいつも感じます。ラスト3節の強豪相手に押し込まれる展開になっても、そこでひとつになって戦う。ポジショニングも真面目に、生真面目にやっていかないと綻(ほころ)びからどんどんやられちゃいますから。それをやり切る勤勉さは彼ら持っていると思います」

 ラスト3節の具体的な戦術面については(これから詰めていくのだろうし、明かせないこともあろうし)伺わなかった。ひとつだけ「セットプレーの守備は見直しますか?」「(ゾーンディフェンスを)変えるかどうかは言わない。必ず見直します」というやりとりがあったことを報告しよう。片渕さんは大変オープンな方だった。そして常にポジティブなものを発しておられる印象だった。


附記1、インタビュー実現に当たり、新潟泊の日程を組んでくれた新潟県不動産鑑定士協会に感謝します。タイミング的にも完璧でしたね。ところでインタビュー中の「(生き残りへ向けた)アルビレックス新潟のストロング」は、実は吉田達磨・前監督にも全く同じことを訊いていて、達磨さんは「ボールを持つ。失わない」(セカンド第9節福岡戦後の会見にて)でした。状況が異なるとはいえ、片渕さんの「勤勉さ」と全く違っていて興味深いです。

2、トレーニングマッチ秋田戦で山崎亮平選手が負傷したという報道を目にし、ひぇ~と悲鳴を上げたんですが、幸い試合間隔が空くので何とかなりそうですね。もう離脱はカンベンしてもらいたい。帰ってくる一方にしてもらいたい。

3、単行本『アルビレックス散歩道2015/レオは家族だ!』の関連イベントは何とか最終節・広島戦で実現する方向で調整に入りました。今年の表紙はレオ・シルバ選手(とお子さん)のイラストなんですけど、許可をいただくためレオ本人に見せたら、『ぜひ原画がほしい』ってすごく気に入ってくれて、イラスト原画をプレゼントすることになりました。だからあの絵は額装されてレオの家に飾られてると思ってご覧ください。

4、来週は浦和戦直前の空気を和ませるべく、完全にネタに走ります。今年は中断がなかったので、フリーテーマらしいフリーテーマってぜんぜんやってないんですよ。春から温めてたアルビネタを投入します。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

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