【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 予告編

2017/3/2
 「今週は予告編」

 読者の皆さん、2017年シーズンのスタートです。新潟県は今週、荒天になり、週間予報に雪マークが並んでますけど、アルビレックス新潟は遠く広島の地で開幕を迎えます。僕は開幕戦の相手が広島に決まって以来、『サンフレッチェ・ラジオ・サポーターズクラブ"GOA~L”』(広島FM、火曜20時~)を毎週聴いて敵情を探ってきました。ここ2週のゲスト、フロントの鍋島史誉さん、千葉和彦選手とすごく面白かった。このオフはRadikoプレミアムのエリアフリー&タイムフリー機能にハマってました。もちろんFM-PORTの立石勇生さんの番組は欠かしませんが、敵の情報も仕入れて気持ちをだんだんアゲていくのです。

 だもんで第2節の相手、神戸を探るべく『GOGO!ヴィッセル神戸』(ラジオ関西、月曜18時~)も既に聴き込んでいます。カンケイないけど『達洋・まさひこのアディショナルタイム』(MRO北陸放送)を聴いてツェーゲン金沢のヤンツーさんの様子もチェックしてます。こう、Radikoは「密偵」って感じですよ。広島や神戸や金沢に「密偵」を放って、生の情報を仕入れる。

 ローカル局制作の応援番組が教えてくれるのは「こっちにはこっちの事情があるが、むこうにはむこうの事情がある」という事実ですね。「事情」という言葉は「物語」に置き換えてもいい。キャンプ入りして、トレーニングマッチを重ね、徐々にチームが仕上がってくる。サンフレッチェ広島はタイへ行ったんですよ。去年、アルビが戦った「トヨタプレミアカップ」です。つまり、お互い台湾やタイから始まる長い旅路の果てにエディオンスタジアムにたどり着くんです。

 三浦文丈・新監督を迎え、ロースター的にも大所帯となったアルビは「攻守にスピーディーなサッカー」を掲げ、新シーズンに船出していきます。本間勲、矢野貴章とクラブレジェンドが戻ったのも心強いことですね。「勲や貴章が再び(貴章は正確には三たび?)アルビのユニホームを着ること」の意味を知ってるのは世界のこっち半分、僕らの側です。あるいは「大野カズがついにキャプテンマークをつけることの意味」「小泉慶が8番を継ぐことの意味」を知ってるのは僕らの側です。この戦いは一歩も引くわけにいきません。「事情vs事情」の激突、「物語vs物語」の対決がJリーグの華だから。

 今季は(傾斜配分金のせいもあって)各チーム、意欲的な補強に出ています。2017年シーズンを「勝負の年」と位置づけているクラブ関係者も多い。正直言ってカンタンじゃないと思うんですよ。毎年、残留争いに巻き込まれているチームは果たして「勝負の年」を乗り切れるのか。

 ただね、マネーゲームのつまんなさっていうのもあるでしょう。もちろんアルビはマネーゲームで張り合える資力がないから言うんだけど、「あれが欲しい」「これも欲しい」「もっと欲しい」(あるいは「これイラネ」「あれイラネ」「全部イラネ」?)になってしまう地獄ってものもある。僕は愛情が勝つんだと思いたい。愛情はしぶといよ。打ち消しても胸の奥から泉のようにこんこんと湧いてくる。

 僕の目標は今シーズン終わったら、アルビやサッカーにもっと愛情を感じられるようになってることです。そのためにDAZNに加入し、新幹線に乗り、各地のスタジアムグルメを食し、高田世界館や吉田東伍記念博物館といったまだ見ぬ新潟県の名所を巡って、じゃんじゃん原稿を書きたい。新津温泉の石油の匂いも嗅いでみたい。これはね、世界のこっち半分、僕らの側の物語です。

 いつも書いてることですが、今年こそあまりリキむことなく、リラックスした読み物にできたらと思います。何か毎年、必死になり過ぎてる気がしますね。世界のあっち半分、敵方にだっておそらく「密偵」はいるでしょう。もし、「アルビの散歩道は必死になり過ぎてました」なんて報告されてたら顔から火が出る。楽しんで書きたいと思います。それでは皆さん、素晴らしいシーズンを!


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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