【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第342回

2017/8/17
 「神奈川シリーズ」

 J1第20節、新潟×横浜FM。
 くも膜下出血から生還した神足祐司のイベントに友情出演するべく、この日は御茶ノ水のデジタルハリウッド大学にいた。DAZNの試合動画は翌日チェックする。新外国人選手、タンキのJデビュー戦。移籍書類が届いてるのか届いてないのか、一週間寄ると触るとその話題だったが、大丈夫、届いていました。

 「戦車」の異名通り、ガッチリした体躯だ。ターゲットになる。ボールが収まる。これはいい選手を獲得したと思う。ひとつ大チャンスをハズしたけど、そこは今度から決めてもらおう。タンキが加わったことで攻撃に軸ができた。タンキ自身の得点力も期待だけど、おかげでまわりが生きてくる。呼吸ができてきたら大変面白いと思う。逆にいうと最初からこれでやりたかった。

 前半は新潟ペース。開始早々、ロメロ・フランクが負傷交代(原輝綺IN)するアクシデントがあったが、やりたかった攻めの形は出せた。磯村亮太が素晴らしい。横浜FMは「前半ガマン、後半勝負」のゲームプラン。勢いのあるうちに得点を奪いたかった。

0対0で迎えた後半、横浜FMは齋藤学とマルティノスのサイドを変え、マッチアップをいじってきた。これで新潟は徐々に押し込まれる。前半はバッチリ抑えてたんだけどなぁ。極論を言えば、後半こっちも左右のサイドを入れ替えたかったくらいだ。

最初の失点は後半9分、堀米悠斗がパスを引っ掛けられ、ボールロストしたもの。ゴメスには酷な言い方になるが、試合を壊してしまった。これは前半、新潟ペースだった反動みたいなところもある。手応えをつかみ、あの場面もボールをつなげると思ったのだろう。

2失点めは後半28分、天野純のファインゴール。これは原の対応がちょっと軽かった。原は(途中出場ながら)自身が希望するボランチのポジションに入っていた。ゴールデンルーキーはこのところ失点に絡んでしまっている。プロの壁というやつだろうか。

終わってみれば0対2の完敗だ。横浜FMのプラン通りの試合をしてしまった。呂比須体制になってまだ結果が出ない。早くこのチームの勝利が見たい。あと、加藤大はもっと頑張れ。

 J1第21節、新潟×川崎。
 前節は出場停止だったチアゴ・ガリャルドが戻り、ほぼベストメンバーと呼べるスタメン布陣。上位の川崎相手にどのくらいやれるかが注目点だった。最初の30分くらいは元気に攻めていた。久々、スタメンに入った川口尚紀も活発に攻撃参加する。おおそうだ、尚紀がいるじゃないかと皆、思った。

 新潟は矢野貴章を一列上げたことで、「右SBをどうするのか問題」が生じていた。貴章は(2人いれば)SHとSBの両方で使いたいのだ。が、そんなわけにいかないから、これまではSBに原輝綺や小泉慶が起用されてきた。考えてみれば本職SBの尚紀がいる。これで行けるんならいちばんいいなぁと思ったら失点した。前半39分、川崎・車屋紳太郎に右サイドを突破され、尚紀と磯村亮太が重なったところをえぐられ、小林悠のゴールを許す。

 パターンとしては横浜FM戦に酷似している。先に失点しナーバスになり、それまでのいいリズムを失い、後半はいいところがない。後半17分、またも右サイドからの折り返しを中村憲剛に決められる。申し訳ないが、尚紀のテストは赤点だ。攻撃参加にセンスの片鱗を見せたが、守りが不安定すぎる。1失点目のミスの後、怖がるようになったのも問題だ。

 守備は改善されてないなぁ。DFがボールばっかり見て、人を見ていない。もっと顔を振るように意識づけないと、このまま毎試合2点くらいは失い続けると思う。1失点目のポジションのかぶりは「(磯村が)カバーに来たのが見えなかった」(川口尚紀)そうだ。情状酌量の余地としては、試合勘もあるかもしれないが、ピッチが見えてないと色々苦しい。

 グウの音も出ない完敗のなかで、胸熱だったのは終盤、交代出場した山崎亮平だ。もうね、ひとりでドリブルで持ち上がり、意地を見せた。負けムードの漂うなか、俺はあきらめないという姿を見せてくれた。


附記1、この原稿を今、水原駅の待合室で書いています。川崎戦の翌日、吉田東伍記念博物館へ行ってきた。吉田東伍とんでもない大天才ですね。Eテレでやった「さかのぼり日本史」の元祖みたいな史書までやってたんだなぁ。これから新津温泉に寄って帰ります。

2、川崎戦の試合前、行われた「スタジアム満員プロジェクト」新潟大応援決起会を取材しました。こうした営為がうまく最下位脱出に結びついてくれればいいですね。

3、次はお盆の大宮戦か。この神奈川シリーズは「上位との力の差」を思い知る結果でしたけど、大宮戦はボトム3どうしの6ポイントマッチです。言いわけは許されませんね。 


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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