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2017.10.19スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第351回
 「ロッベンの花道」

 ロシアW杯欧州予選最終節(A組)、オランダ×スウェーデン。
 フジテレビONEの生中継にてテレビ観戦。会場がアヤックスのホーム、アムステルダムアレナだった。開閉式の屋根を備えた収容能力5万3千人の大会場。上層階の一部に空席があったが、4万は軽く突破していたと思う。オランダ人は本気だ。王室行事だけでなく、サッカー代表戦の日は(スタジアムへ行かない人まで)オレンジの何かを身に着ける。もちろんスタジアムはオレンジに染まっている。この試合は運命の一戦だった。

 試合前の時点でオランダは勝ち点16(9戦、得失点差+7)でA組の3位だった。出場圏(ストレートイン&プレーオフ)の上位2つはスウェーデンとフランスが占めている。何と2010年南アW杯準優勝、2014年ブラジルW杯3位のオランダが予選敗退するかもしれないのだ。可能性の扉はほんの少ししか開いていない。生き残りの条件は「最終節スウェーデン戦に7点差以上つけて勝利」だ。ちょっと非現実的な話で、ロイター通信は「スウェーデンに7対0では勝てない」とするロッベンのコメントを伝えている。

 これには前段がある。A組は僅差の三つ巴になり、得失点差で天国と地獄が分かれることになりそうだと衆目が一致していた。で、今月になってオランダ代表のディック・アドフォカート監督がメディアに余計なコメント(?)を発したらしいのだ。第9節を前に「スウェーデンがルクセンブルクに8対0で勝ったら?」という質問を受け、アドフォカートさんは「バカげた質問だ。あり得ない」と一笑に付す。そうしたらスウェーデンは本当に8対0で勝ってしまった。

 ロイターの伝えたロッベンのコメントは諦観の境地だ。オランダをけん引してきたエースストライカーはこう語った。
 「(スウェーデンの8対0勝利を受けて、こちらも)ベラルーシに8対0で勝つのは現実的ではなかった。スウェーデンに7対0で勝つことも同じだ。実現することはないだろう。もちろん最後の瞬間まで信じ続けるべきだが、誰もが考えてることを言ったほうがいいだろう」

 それが試合開始と同時に猛然とスウェーデンに挑みかかるのだから最高だ。もちろん英雄は腕にキャプテンマークをつけている。一方的にオランダが攻める展開が続く。もちろんオランダは4-3-3、スウェーデンは4-4-2、ともに伝統のフォーメーションだ。

 僕自身は(以前も書いたことがあるが)スウェーデン人の親戚ができて、欧州ではスウェーデンびいきである。この一戦もどちらかというとスウェーデンに逃げ切ってほしかった。そうすれば来年は立川のサチとマーティンの家へ遊びに行って、W杯で盛り上がれる。ワインを持って遊びに行こう。オランダに勝ち抜けされてもオランダ人の親戚はいないのだ。

 が、ロッベンのひたむきな姿を見てグッと来た。ちなみに実況は小野浩慈アナ、解説は山口素弘さん。前半のうちからオランダの思い出話に花を咲かせている。小野アナ「ダービッツがおりました、ハードワークの。それから9番のところには、いましたからね、ファン・ペルシ、クライファート、ベルカンプ、ファン・ニステルローイ、錚々たる…」、素さん「僕なんかはファン・バステンなんですけどね」。もちろんアリエン・ロッベンはそれらビッグネームに比しても遜色のない選手だ。

 ていうか、むしろオランダはロッベン依存症のような状態に陥ったのだ。ロッベンはスーパー過ぎた。この停滞は世代交代の失敗だ。オランダは伝統的に攻撃サッカーである。2010年南ア大会はともかく、2014年ブラジル大会は完全にカウンターサッカーになってしまって、全くオランダらしさがなかった。ロッベンとスナイデルとファン・ペルシの3人で何とかしてくれというサッカーだった。

 前半16分、猛攻の重圧でスウェーデンDF、リンデロフがエリア内でハンドを犯してしまう。PKキッカーはもちろんロッベンだ。難なく決めた。早々と先制したことで、ひょっとしたらという空気が漂いだす。更に40分には相手パスをカットして逆襲、ロッベンがド迫力のダイレクトボレーを決めた。アムステルダムアレナは騒然となる。ロッベンの名が何度もコールされる。「奇跡」は起こるのか。

 が、後半の追加点はなかった。大柄なスウェーデンがエリアを固めたらそう簡単にゴールは割れない。オランダの攻め疲れもある。まぁ、この1試合で「奇跡」を起こそうというのがムシがいいのだ。ここまでのツケがたまっている。ブルガリアに負けたのが痛かった。あれでダニー・ブリント監督(現オランダ代表、デイリー・ブリントのお父さん)が退任し、アドフォカートさんに交代したのだ。フランスに2敗もあり得ない。特に第7節、0対4の大敗は痛恨だった。そういうツケを1試合で帳消しにするのは難しい。

 ロスタイムは2分だった。ロッベンは最後の力をふりしぼる。試合が止まると観客席に向かって、手拍子をうながす。オランダの気概を示そうと呼びかける。スタジアムはひとつになり、誇りを歌う。オランダは2002年日韓大会のときも出場権を得られなかった。いいときばかりじゃない。が、何があっても屈しはしない。

 タイムアップの笛が鳴り、オランダは2対0で勝利したのだ。勝利したけれど得失点差で及ばず、予選落ちが決まった。国際映像はロッベンのアップだ。彼はスウェーデンの選手らに歩み寄り、ハグして、健闘を称えた。胸の熱くなる光景だった。試合後、ロッベンは正式に代表からの引退を発表する。ひとつの時代が終わった。闘い抜いた男が舞台を去ってゆく。


附記1、W杯予選は世界各地でドラマの連続でした。欧州ではアイスランドが初出場を決め、オランダやウェールズが敗退、イタリアがプレーオフにまわります。南米では大苦戦のアルゼンチンが土壇場で出場を決め、チリが予選落ち。北中米カリブではパナマが初出場、何とアメリカが敗退です。

2、日本代表の親善試合ハイチ戦はビミョーでしたね。後半47分の同点弾は香川が触ってますけど、9割9分、ゴートクのゴールですよね。それから同じく親善試合、韓国×モロッコではソン・ジュフンがA代表デビューでした。僕は中身は見てないんですけど、どうもそっちもビミョーだったみたいですね。

3、OBの梅山修さんの北海道・十勝FC監督就任が報じられました。同クラブは今季、社会人の北海道リーグを制覇、11月からJFL昇格を懸けた地域チャンピオンズリーグに挑むとのことです。梅さんが指揮を執られるのは来季から。これに合わせチーム名が「北海道十勝スカイアース」に改称されるというから、これは地元も力入ってます。Jリーグ入りを目指すクラブですよ。来年は帯広豚丼食べに行こうかなぁ。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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