【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第363回

2018/3/29
 「上がったり下がったり」

 J2第4節・横浜FC×新潟。
 守備でかっちり相手を型にハメつつ、勝負どころは逃がさないという会心の試合運び。強い勝ち方ができた。横浜FCさんに申し訳ないが「横浜アルビ祭り」くらいの活況である。観客動員7700人の試合で3300人がアルビサポだ。J2は西日本勢に劣らず関東アウェーが多いから、こういう光景を今季は何度か味わえるのかもしれない。

 「力の差があった」(不出場だったカズのコメント)を筆頭にアルビを持ち上げてくれる声が多かった。確かにこの日は「アルビ無双」と誇りたくなる内容だった。褒めたい選手ばかりだが、出色だったのは矢野貴章じゃないか。僕は鈴木政一監督のシーズン最初のヒットは「FW・矢野貴章」起用だと思う。完全に再コンバートが成功した。状態も良さそうだ。本当に身体の無理がきく。競って強いし、読みがいいから動き出しも早い。

 晴天のニッパツ三ツ沢球技場。3点のうち2点は新潟側のゴールだった。3点すべてファインゴールだが、僕のお気に入りは貴章の挙げた2点目(敵バックパスのタイミングで猛チャージ→奪って決める)だ。ものすごく盛り上がった。アシストをした#12の働きは特筆すべき値打ちがある。敵ゴールの真裏、新潟応援席からとてつもない「音圧」のプレスを繰り出したのだ。敵GK・山本海人は貴章のチャージに加え、#12のプレッシングに脅かされ、ミスしたのだ。#12は選手名を挙げることができない(この日は3300人もいた)が、今季は好調そうだ。尚いっそうの活躍を期待している。

 試合後の三ツ沢公園はふわふわ雲の上を歩いてる感じで、今、思い返しても桜が満開だったように記憶がねつ造されている。見るものすべてが美しく光り輝いていた。勝つって素晴らしいな。もうウヒョウヒョ状態で祝勝会に突入したかったが、この日は日光アイスバックスのファン感をサボってこっちに来ていた。飛び出しで新幹線移動、宇都宮でアイスバックス納会に顔を出す。フィンランド人のアリペッカ・シッキネン監督と同じテーブルになり、自然とホッケーシーズンを振り返り「戦術がハマった試合ハマらなかった試合」という話になった。

 「戦術が当たりうまくいった試合はポジティブなものです。ポジティブな試合から学ぶことが大切です。ネガティブな試合は誰でも結果を受け入れがたく、逃げようという気持ちが働きます。学ぶために傷をいやす時間が必要になります」
 
 翌朝、新潟日報(「新潟 テンポよく3得点/3戦ぶり白星 4位浮上」)を読んだら記事がこう結ばれていた。
 「ただ『きょうは後ろからつなぐチームに前からの守備がはまったが、蹴り込んでセカンドボールを狙うチームもある』とはDF富沢。厳しい連戦に臨んでいるチームに浮かれる気配はない」(3月18日付運動面)
 さすが富澤清太郎、いいこと言うなぁと思った。浮かれてちゃいけない。たぶんミッドウィークの愛媛戦も勝つだろうが、ポジティブな結果から学び、強くなる契機にすべきだ。ここから波に乗りたい。

 
 J2第5節・新潟×愛媛。
 それがまさか逆目で的中するとは。本当に「ネガティブな試合は誰でも受け入れがたく、逃げようという気持ちが働きます」ね。0対1で完敗。負けたこともショックだ。が、それ以上に中身がよくない。

 この日は(春分の日にもかかわらず)関東が雪になり、ギオンスタジアム相模原のJ3第3節・相模原×沼津が中止になる等、大変な一日だった。一方、新潟は降雪がなく、観客を悩ませたのは吹きつける強風だった。はるばる来てくれた愛媛サポが「信じられないくらい寒い」とツイートしていた。が、人数自体は決して多くない彼らこそ、この日、チームの今季初勝利を目にした文字通りの「勝ち組」だった。愛媛は開幕以来、負け続け、0勝4敗でビッグスワンに乗り込んできたのだった。

 日曜日の新潟日報・富澤清太郎コメントで言えば、愛媛は「蹴り込んでセカンドボールを狙うチーム」の部類だろう。敵将・間瀬秀一監督はよくアルビを研究していた。といってもピッチ上で展開された出来事はシンプルだ。トイメンに負けない。球際を激しく、1対1で闘う。闘志で相手を上回ったのは残念なことに愛媛のほうだった。個々のスキルや経験値はこちらに分がある。だから何とかかわしていたのだ。が、それにしても終盤押し込まれっぱなしだった。いつかはやられる。後半41分、セットプレーから決められた(得点者・丹羽詩温)。

 試合のイメージは松本山雅戦に似ていると思う。ガツガツ来られるとちょっと腰が引けた感じになる。選手の距離感もなかなか難しいものがあった。妙にスカスカな場所ができる。例えば中盤が薄く見えたり、堀米悠斗サイドのスペースを愛媛・前野貴徳(!)に狙われたりしていた。

 これは「ハマらなかった試合」なんだろうか。ハマらなかったのはハマらなかったんだと思うが、ハマらなかったで終わらせるわけにもいかない。ステージはJ2だ。(ポゼッション志向かどうかにかかわらず)アルビはボールを持たされる。相手はガツガツ当たってひるませて、横パスを出したら奪いに来る。目に見えている。「ハマらなかった試合」をどうするか。それが課題だ。

 ホーム勝利を期待し、寒さに耐えたサポーターには残念なことになった。試合後、選手にブーイングが浴びせられたが、納得だ。横浜FC戦の快勝がきっかけになると思ったけど、甘かった。中3日で徳島戦だ。やるしかないよ。ホーム連戦で条件は圧倒的に有利だ。


附記1、春分の日はアルビレディースの開幕戦とのダブルヘッダー開催で、対戦相手の長野パルセイロ&愛媛FCがともにオレンジのチームカラーという「オレンジダービー×2」だったんですよね。結果は連敗しちゃったけど、そんなオレンジ集結戦ってあり得るんですね。

2、しかし、上がったり下がったりホントに落ち着かない毎日ですね。まぁ、下がったまま落ち着くのも嫌ですけどね。

3、次節は僕の推しチーム(個人的には「2017年J2ベストチーム」!)、徳島ヴォルティス戦です。日程表を見て、ここがポイントだなと思ってました。今季は開幕から調子が出てなかったんですけど、大宮戦は素晴らしかったですよ。エンジンかかったどうしで激突する予定だったんだけど、ちょっとアルビは目算が外れたかなぁ。


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