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2018.05.10スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第369回
 「連敗ストップ」

 J1第11節、山口×新潟。
 初見参の維新みらいふスタジアムである。サッカーで山口県へ来るとは思わなかった。僕自身は30代の頃、山口大学で講演を頼まれて以来、二度目だ。あのときは長時間の新幹線(個室をおさえてずっと仕事をしていた)だったが、今回は羽田からスターフライヤー便だ。やっぱり西国だなぁと思うのは山口サポが「こんにちは!」と懐っこく声をかけてくれるところ。東日本の人見知り・照れ屋の文化と感覚が違う。

 快晴。「初夏を思わせる」どころでなく夏そのもの。気温は試合中に30℃を超えた。直射日光を受ける両軍サポの熱中症が心配だ。選手は間違いなくバテる。そこが試合のアヤになりそうだ。レノファ山口は目下、3位(6勝2敗2分、勝ち点20)の好調チーム、しかもホームで負けていないそうだ。14位新潟(3勝5敗2分、勝ち点11)としてはうらやましいかぎりだ。ちなみにこの試合に勝つか引き分けるかしないと、アルビは4月の勝ち点がゼロになってしまう。

 この試合の見どころはズバリ、チームの反発力だと思った。鈴木政一監督も含め、4連敗で危機感を持たないスタッフ関係者、選手は1人もいないだろう。それがどう形としてあらわれるか。スタメンはどう変わって、戦う意識はどう変わる? ベンチの雰囲気、スタンドにいる関係者の雰囲気はどう変わる? サポの反応、受け止め方はどう変わる? 早い話、このチームは生きてるのか死んでるのか?

 スタメンから見ていくとルーキー・渡邉新太が左SH(安田と左右入れ替え!)でリーグ戦初スタメンだ。それからボランチに磯村亮太キャプテン、CBに富澤清太郎が戻った。監督が今季、重用してきた坂井大将、広瀬健太が外された。うまくいってないときは勇気と闘争心しかないのだ。闘わなきゃ局面がひらけない。このスタメンはそれを託された11人なのだと思う。

 試合。アルビに積極性が戻った。たぶん前節・大宮戦を見てない人にはフツーにやり合ってる序盤に見えたと思うが、つづきもので見るとすぐに「あ、変わった!」と感じる。大宮戦は「これは体力温存の戦術なの?」というぬるさだった。この試合は速く、強く行っている。プレッシングの意識、奪ったら速く送る意識、入る入らないじゃなくとにかくシュートを打つ意識が見てとれる。

 積極性が実ったのは前半16分の先制点のシーンだ。敵陣で加藤大が奪ってショートカウンター、原輝綺がクロスを入れて、そのこぼれを磯村キャプテンが落ち着いて蹴り込む。ゴール前に人数をかけているので後ろから入る磯村が完全にフリーになった。勇気と闘争心。勝負すれば何か起きるのだ。

 時間帯としてはこの先制点から前半終了までの30分間だったと思う。ここがチャンスタイムだった。山口は(焦りから?)ミスが増える。拾ってショートカウンターで追加点、とはならなかったのが残念なところ。ここで2-0にしてしまえばもっと楽な試合だった。そうならなかったことで、あぁ、これはもつれるんだろうなと半ば覚悟する。

 後半はもつれるどころの話じゃなかった。暑さもあって前線のプレスがかからなくなり、すると1枚ずつむき出しの状態ではがされていく。危なっかしくてしょうがない。プレッシングサッカーの形は(たぶん鈴木監督が想定してる以上に)うちの強みであり、ベースになる部分じゃないかと思うが、反面これがあるのだ。これから夏場に向かってコンディションはきびしくなる一方だ。90分もつと思ったら間違う。プレスに行く時間、ボールを持つ時間、いわば速攻遅攻を使い分けるクレバーさが必要になる。

 僕は早く田中達也や矢野貴章を投入しないかなとハラハラしてベンチをチラ見した。フレッシュな追いまわせる選手が必要だ。後半18分、ついに田中達也投入。ところが、流れは急には変えられなかったのだ。直後の同19分、ゴールを割られてしまう。小野瀬康介に持ち込まれてのファインゴールだ。アルビは25分に貴章を入れてだいぶ持ち直すが、やられっぱなしだった。正直に言おう。僕はたぶん逆転されると思った。このまましのいで1対1のドローで終わらせてくれと天に祈った。

 またスタジアムの雰囲気が完全に押せ押せだった。山口は上げ潮に乗ってるチームだ。ファン、サポーターが明るくてノリノリ。いっせいにオレンジ&黒のタオルを振り回して後押しする。この場所で霜田正浩監督のニューモードのサッカーを楽しめるのは幸せだと思うなぁ。オナイウ阿道が見違えるほど良くなっていた。こういう選手の生かし方があるんだね。

 だけど闘っていれば何かが起きるのだ。ロスタイム、田中達也が坪井慶介(浦和時代のチームメイト!)とのマッチアップに勝ち、そのパスを受けた(交代投入)高木善朗がクロスを送る。と、矢野貴章が倒された!谷本涼主審はPKの判定。場内が騒然とする。あり得ないような幸運が舞い込んだ。PKキッカーは安田理大だ。これを落ち着いて決める。この場面は絵になった。

 サヨナラ勝ちだ。アルビは「九死に一生を得る」形で連敗を4で止める。もちろんぜんぜん褒められた試合じゃないが、勝つのと勝たないのとじゃ大違いだ。今はチーム全体で取り組んだことへの返りがほしい。やればできるんだという手応えがほしい。

 くどいようだが、これは本当に幸運の産物なのだ。こんなことは何度も続かない。もっといいサッカーをしてほしいと思う。だけどすごく大事なこと。何をすればいいか、どうすればいいかフォーカスできた試合だったと思う。チームは死んでいない。あるいはサッカーの神様が「死んではいけない」と勝利を授けてくれた。


附記1、田中達也選手が故郷の山口でピッチに立ち、しかも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたのは感動的でしたね。現地では報道も多くて大変注目を集めていました。試合前、リザーブの選手として場内アナウンスされたとき、それから後半投入でピッチに入るとき、山口サポーターから大きな拍手が起こりました。

2、同じく話題になっていた高木善朗選手、高木大輔選手の兄弟対決ですが、これも見応えありました。お兄ちゃんの善朗選手が決勝点アシストなら、大輔選手はあわやゴールというシーンを見せた。

3、僕は前日入りで萩泊、歴史散歩とジャズの名店「ビレッジ」を堪能しました。試合日はもう一度山を越えて、みらスタです。このコースだったおかげで山口側のダンマク「諸君、狂いたまえ!」「至誠」(ともに吉田松陰にちなむ)の意味もすぐにピンと来た。J2諸国漫遊のおかげで面白い土地、面白いサッカーに出会えますね。

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