【第15回】25分

2018/8/14
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負ける試合ではなかっただけに、悔しさが募る

アウェイ・岐阜戦が行われた長良川競技場は気温27.6度。DAZNを見ていても暑さが伝わってきましたが、結果は残念ながら先制をするも1-2の敗戦でした。皆さんはどんな印象を持たれたでしょうか。

僕は内容的には悪くなかったと思います。ただ、ひとつのミスや、ちょっとした準備や、事前の状況把握を疎かにしたことが失点を招いていたのではと。その意味で、非常にもったいない敗戦でした。ボールを大事につないでくる岐阜に圧倒されることも、有利に持ち込まれることもありませんでした。負ける試合ではなかったのではと感じるだけに、悔しさが募ります。

選手全体が連動して守備を続けられた前半

言ったように、岐阜のつなぎに対しても、特に前半、新潟は崩れることがありませんでした。立ち上がりサイドにイソくんが厳しくチェックし、中に入ってきたボールを健太くんがインターセプトするいい場面がありました。まず誰かがアクションを起こし、次に出たボールに連動して奪いに行くことが明確にできていました。

誰かが特筆して高いパフォーマンス、ということではなく、選手全体が連動して守備を続けられていたことを示しています。岐阜がボールを持つ時間は多かったと思いますが、しっかり守備に集中して対応することができているな、と感じていました。

アンカー脇を狙って得点を演出した祥郎

いい入りから、10分にはさっそく新潟に得点が生まれます。そのひとつ前に、左サイドでマサルくんと新太がプレスを仕掛けて奪い切り、右に振って祥郎がオーバーラップした輝綺にいったん出し、もう一度受け直したいい流れがありました。岐阜は4-3-3で中盤底にアンカーを置きましたが、祥郎はアンカー脇のスペースを狙っていました。

得点場面も走りながらボールを受け、ファーストタッチで相手をはがして前へ。ゴチャゴチャとなりましたが、セカンドボールの意識が高い新太も狙いを持っていましたね。非常にいい得点だったのではないでしょうか。

クロスへの入り方の質をもっと高めたい

前回も挙げた、善朗くんや祥郎がペナルティエリア角で前を向いた状態でボールを持ち、上がってくるサイドバックを使える展開は構築できていたと思います。ただ、そこからの質をもっと突き詰めていく必要性を、この岐阜戦では強く感じました。その向上が、新潟の今後のサイド攻撃を左右するからです。

クロスをどこに出すかもありますが、クロスへの入り方。後半、安田さんから何本かクロスが入りましたが、ターレス、カワくん、達さんが入れ替わりなく、平行してそのままゴール前に向かった場面がありました。率直に言えばDFにとっては楽な動きで、誰かがニアからファーに動いたり、また空いたスペースに誰かが入ってくるなど、質を高められれば、相手を困らせることができます。

最警戒のニアに敢えて動くから、他が活きる

DFの立場で言うと、クロス対応では「まずニアを消しながら」というイメージを持ちます。もっとも危険な場所に入れられないようポジションを取っていくので、ニアでピンポイントで合わせるのは難しいかもしれない。でも、そこに動くから、DFはより意識を集めざるを得ず、ひとつ後ろやマイナスが活きてくるんですよね。まず勢いをもって入らないと、相手DFはなかなか崩せません。

そういった部分を強みにしているのは貴章さん。その点では、クロスが多くなった時間帯に、貴章さんが不在だったことが、チャンスを生み出しにくかった要因のひとつかな、とも感じました。貴章さんがいなくても、強いアクションを誰が起こしてくれるか。今後に期待したい部分です。

課題の解決によって、新しい課題も生まれるもの

繰り返しですが、新潟はサイドの高い位置は制圧できていると思います。アーリークロスが多かったところから、深い位置まで入り込むことができている。意図通りにボールを動かし、全体で重心を前にはこべるようになってきました。

ただ、逆にそれができてくると、「後ろのリスクマネジメント」という別の問題が生まれます。ひとつ攻撃の課題をクリアすると、今度は守備の課題が出てくるのがサッカー。成長は受け止めつつ、次に生まれる問題への修正意識を持ち続けていかなければいけません。

ボールを持てることが、弱点になり得る?

実際、後半は岐阜に後ろのスペースを使われるプレーが多くなりました。主体的にボールを持ち、相手を押し込むチームにとって、セカンドボールに対する配置や、スペースや相手のマークを共有してリスクマネジメントを怠らないのは大事なポイント。いや、むしろそのポイントを押さえられなければ、ボールを持っていることが、逆に弱点にすらなってしまいます。

ボールがなければ得点は生まれませんし、“持てる”ことはサッカーにおいて重要なこと。一方で、逆説的ですが、持っているからこそ、ほころびのようなものも生じやすい。強いチームなら、ボールを持っていても失点しない術があり、持っていなくても得点を狙っています。新潟のいい時は守備で相手を支配する、脅威を与えるとは前に話しましたが、攻守どちらでもスキのないチームになっていきたいと思います。

僕が上手いなぁと思うのは、やはりマリノスの中澤さん。裏に走られても、一発で入れ替わられることがなく、うまく時間を使いながら周りの帰陣を待てる。中澤さんは中で高さや強さなどの特長を出す選手のようなイメージがあると思いますが、そういうところでも経験値が高い。あれだけの年齢でもまだまだ活躍できる理由が隠されていると思います。

1失点目は把握できず触られたのがすべて

悔しい作業ですが、失点場面の振り返りも。1失点目は大分戦の失点がよぎりました。あの時もCB1人がつり出されて、残るCB1人とスペースをカバーしたボランチが見なければならない場面を作られました。今回も健太くんが引き出され、カンペーさんとスペースを埋めたマサルくんが中に。その奥に輝綺がいました。

本来CBが務めますが、2枚の真ん中の選手が相手を把握できなかった結果、中央で14風間宏選手に触られました。結果的には輝綺に当たってコースが変わる、不運とも言えるオウンゴールでしたが、触られたのがあの失点のすべてだと思います。ポジションが入れ替わるのは相手も狙っているからこそ90分で生じますが、そこでどういうプレーが求められるか。何度でも徹底して確認していきたいですね。

相手の良さを出しづらくさせておけば

2失点目は、ムラーリャのロングキックを相手がはね返した形から生まれました。ああいった場面ではある程度DFラインで深さを取っておくのはセオリー。おそらくカンペーさんは前のFWに入れてくると強く前に出た判断をしたと思いますが、予想に反してボールが大きく返ってきました。これも不運な部分はあったと思いますが、完全に防げた、もったいない失点でした。

11古橋選手のようなスピードを武器にした選手は、そこを常に狙っています。逆に言えば、裏を消してさえおけば、良さを出しづらい選手。アクシデントもありましたが、怖さを出させないために、どこを押さえておくべきか、共有しておければ良かったと思います。

練習でできないことは試合でもできない

冒頭で気温の高さにも触れましたが、90分プラスアルファ、試合で常に集中し続けるのは大事なことです。でも、それには練習などの習慣が大事になる。練習でできないことは試合でもできないはずで、まず練習からどういうシチュエーションでも解決できる能力が求められるんじゃないでしょうか。

前述の通り、前半は岐阜にボールを持たれながらプレーをすることになりましたが、あまり脅威はありませんでした。逆に、自分たちがセカンドボールを拾えたり、深い位置まで押し込めた後半にどういうポイントが危ないか。これも練習から、集中を常に高める作業を続けて、改善していけるはず。試合に出場している選手だけではなく、全員が共通の課題解決に向かって、努力していきたいですね。

つくづく感じさせられる達さんの姿勢

甲府戦が6月20日に日程変更になったため、開幕から連戦が続いていたチームは3日間のオフを取りましたね。僕はオフでも、今回のように負けていたら引きずってしまうタイプ(笑)。しっかり割り切っている選手もいるでしょうが、大事なことは心身リフレッシュして、次を迎えられるかです。

今日、僕はU-18の練習に加わったので、ひとりクラブハウスのロッカールームにいたのですが、達さんが独りで顔を出してグラウンドを走っていました。公式戦じゃなくて、明日の練習に“100”を出すための今日の準備なんですよね。つくづく、ひとつの練習、試合にかける達さんのサッカー選手としての姿勢には感じさせられるものがあります。

25分

最後に、僕の近況にも触れさせてください。これまでU-15やU-18の練習に参加させてもらっていましたが、先日初めてトップチームの練習に加わらせてもらいました。トップとU-18が練習試合的なメニューを行う場面があった時に、フチさんから声をかけてもらって。(本間)至恩や(岡本)將成、(五十嵐)新たちU-18の主力が対戦側に回って、サブの選手がトップチーム側に入ることになっていたので、「それなら史哉でもいいじゃないか」と言っていただいたんです。

僕としては「まだフルで動けないのに、そんな失礼なことはできないな」と思ったんですが、スタッフの許可もいただいて25分だけ、CBでプレーさせてもらいました。キツかったですけれど、楽しかったです。久しぶりに天然芝で、プロの選手たちと一緒にボールを蹴ることができた。それに、後ろにはヤスがいて、右には尚紀がいて(笑)。ユースの頃を思い出しました。まだまだですが、自分の中ではすごく大きくて、気持ちの面でもいい栄養をいただきました。

いままでもトップチームのピッチを走らせてもらったことはありましたが、チームの練習にスパイクを履いて加わって、相手があるゲームをする。それは特別です。僕はジュニアユース(U-15)、ユース(U-18)からアルビレッジで練習をしていますが、アカデミーが練習をしている人工芝ピッチから、少し高い位置にあるトップチームの天然芝ピッチに、「あそこに行くんだ」とずっと目指してやってきましたから。

正直に言えば、いま、アカデミーの練習に参加させてもらい、人工芝からトップの練習を見ていると、悔しさと、『いつあそこに行けるんだろう』という思いもあるんです。だから、今回はその第一歩。アルビレッジの天然芝は最高です。やっぱりサッカーはいいです。『本当に楽しいな』と心から思えました。今までで一番充実した25分でした。



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