【第17回】どこを目指し、苦しくても向かっていくか

2018/8/14
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勝って反省できるのが良かった天皇杯

先週は難しい2試合が行われました。高知ユナイテッドSCとの天皇杯は、前回のコラムで「力でねじふせるところを見たい」と話しましたが、メンタル的な部分でちょっとしたズレがあったのか、いい方向に向かっていったかと言えば、上手くはいっていなかったと思います。そういう意味で苦戦をしましたし、ひとつ勝って、次のラウンドに行けた結果は本当に良かったと思います。本当に苦しかったですね。

天皇杯を迎えるにあたって、チーム内でも心身のコンディションには違いがあったかもしれません。しかし、試合に出る以上はまとまるのが重要なことです。J2と地域リーグの差はあるにせよ、同じサッカーを戦う相手である以上、あまり意識せず、「目の前のチームと対戦する」ことを考えることが大事。ただ、勝って反省できるのは大きなことだと思います。

サポーター目線で見ると歯がゆい

ヴェルディ戦は1-2の敗戦という重い結果に終わりました。いま、僕は選手登録をしていないので、皆さんと同じようにいちサポーターのような目線で試合を見ることが大部分を占めていると思います。その目線から見ると、本当に歯がゆい。

相手が3バックだった大分戦のように圧倒されて負けたわけじゃなく、2つのミス。たったそれだけで負けてしまう。サポーターからしたら納得がいかない、「もっとやれるだろう!」という期待半分でもあるでしょうが、想いがあるんじゃないでしょうか。皆さんに苦しい思いをさせてしまっていることは、クラブの人間として辛いですね。

前半戦ベストと言っていいゴール

得点場面は非常に素晴らしいものだったと思います。祥郎が後ろを向かずに勇気をもって前にドリブルで仕掛け、一枚相手をはがしてサイドを突破したのは大きな部分だったと思います。その次のパスが善朗くんのところに入り、サイドから中へ視線を動かすことによって相手がボールウォッチャーになりました。マサルくんがいち早く長い距離をスプリントして、空いているスペースに入り込み、そこに正確なパス。

今までの新潟にはなかったゴールだと思います。もちろんこれまでのゴールも素晴らしいものですが、前半戦の中ではベストと言っていいものではないかと感じました。新潟の特長であるショートカウンターからも、横浜FC戦のズミさんのゴールのように素晴らしい形がありましたが、今回はある意味で「新潟らしくない」というか(笑)、誰が見てもいいゴールだったんじゃないかと思います。

勇気を持ったチャレンジが、相手にとって嫌な選択

相手からしたら、後ろ向きでパスをだしてくれることほど楽なことはありません。前を向いてチャレンジするのは、難しい選択・判断だと思いますが、相手にとって嫌な選択ですよね。勇気をもって行けたのは、今後に向けても大きな部分だと自分は感じています。

また、今回、セットプレーからのボールがわりあい新潟ボールになって、シュートの形まで持っていく回数も多かったように思います。守から攻の切り替えも、相手より走って数的優位を作る、前線に行く点では、いい部分がたくさん見られました。敗戦の中でも良かった点でした。

攻めている時の守備は、少しずついいバランスができている

得点はボランチのマサルくんが取りましたが、どうしても相手のCBやDF陣は新潟のFWを警戒してきます。フリーでシュートを撃つのは難しい状況の中で、後ろから1枚パワーをもって入ってきてくれると、それだけで守備の形は崩れます。マークがいない中でのチャンスは増えますし、得点もそういう形でした。

そうした形が生まれるのは、後ろの選手がしっかり押し出して、カバーをしてくれているからなんですよね。リスクマネジメントができているから、マサルくんも出ていける。その点でもうひとりのボランチであるイソくんの働きも見逃すべきではないと思いますし、チームとしての攻めている時の守備の部分は、少しずついい配置、いいバランスができているんじゃないでしょうか。

瞬時の判断の統一が課題

それではなぜ、失点を喫して負けを受け入れなければいけないのか。正直に言えば、1点目に関しては、相手選手のクオリティーの高さが出た部分で、対応はなかなか難しかったかもしれません。ただ、そのひとつ前のサイドで、マサルくんがプレッシャーをかけてボールを触ったところで、もう一度相手が拾い直した局面がありました。

さらにマサルくんはボールを奪いに行って、イソくんと一緒に2対1の状況を作るのですが、結局相手にサイドをスルスルと行かれて抜かれてしまう。2人が数的優位の守備を活かして、どういう風に誘導してボールを奪うか、あるいは遅らせるかが、瞬時の判断が統一されていなかったのかなと感じました。まだまだこれからの課題ですし、改善できればピンチの回数は減らせると思います。

タテの段差の共有でスキのない守備を

2点目はDFとMFの間にいる選手をどちらが付くのか。そこが明確でなく、サイドで起点を作られるところがありました。もしかすると、ライン間はいいのかもしれませんが、DFとMF、MFとFWのタテの段差の共有がもう少しできてくると、さらにスキのない守備が出来上がってくるんじゃないかと考えます。

いつも言っていることですが、コミュニケーションを取り続ける。試合で背後を取られたのは、唯一あの場面だけだったと思います。正直、何ということのない場面で、ジュフンも顔を振って相手を認識していたのでは。把握して伝える、伝えられた側はどういうプレーをするべきかをもっとスムーズにできれば、そういうミスは無くなります。もうリーグは半分になりますし、徹底していかなければいけません。

どこを目指し、苦しくても向かっていくのか

いまの自分たちの順位は15位。ただ、アルビレックスというクラブとして、J1昇格という目標があります。そこにブレちゃいけないし、ひとつの敗戦、連敗で最終目標に達していない段階で「どうなんだ」と崩れる。その方が問題じゃないでしょうか。

自分たちはどこを目指し、苦しくても向かっていくのか。続けることがアルビレックスにとって大事なことだと思います。

あと一歩の頑張りと、プラスの反応を!

人間関係でもそうですが、悪い状況が起こってしまっても、悪い雰囲気に持っていかず、“リバウンドメンタリティ”じゃないですが、いい方向に持っていこうと伝えられるか。どうしても自滅してしまうようなチームは、自分たちで悪い方向に考えてしまいがちです。

応援をされる方々は、チームの勝利のためにと考えておられると思います。選手も、サポーターも、もっと前を向いて、ラインに出そうなボールをマイボールにしたり、DFが大きくクリアしそうなところを足を出してスローインにしたり。ちょっとのところで気持ちが見えるプレーに対して、もっと盛り上がっていい。それが相手にも嫌な空気で、自分たちにいいイメージにつながります。選手のあと一歩の頑張りと、サポーターのそれに対するプラスの反応で、新潟は良くなっていくと思います。

昔でいえば亜土夢くんがボールを追ってスライディングでカットしたり。そういう場面でビッグスワンは盛り上がっていましたよね。昔を懐かしがったり、美化するわけじゃありません。いまは新太や祥郎、善朗くんなど、みんながファイトしています。そこに僕たちがどう反応するか。新潟らしさを、みんなで表現していきたいですね。

福岡戦は気持ちの部分が大きく左右する

次は福岡戦です。福岡は井原さんが長く指揮をして、成熟しているチームだと思います。互いにJ1で戦っているチームですし、そのプライドは絶対に負けられない。気持ちの部分が福岡戦に関しては大きく左右するんじゃないかと思います。こういう状況だからこそ、気持ちを表現できる選手に注目したいですね。


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