【第18回】後半戦を駆け上がるきっかけになり得るゲーム

2018/8/14
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W杯が開幕、メキシコ対ドイツで受けた衝撃

いよいよW杯が開幕しましたね。録画をしていたグループリーグのメキシコ対ドイツを、月曜の朝から見て衝撃を受けました。前回大会王者のドイツがまさかの敗戦を喫したのです。

試合開始から終始変わることのなかったメキシコの攻守の切り替えや激しい球際、体を張ったディフェンス、ドイツよりも多く走ろうという走力。メキシコのハードワークや、ゴール、勝利に沸くチームの喜び方や、サポーターの熱い応援を観て心が震えました。試合内容や状況が似ているわけではありませんが、僕は土曜日に行われた福岡との一戦に少し重ねてもいました。

左サイドに泰基が抜てきされた福岡戦

岐阜、ヴェルディと連敗を喫した新潟でしたが、2試合とも手の施しようのない内容ではなく、メンタル的には大きな問題を抱えたまま福岡に臨んだわけではなかったと思います。また、失点の課題もハッキリしていましたので、修正も難しくはなかったのでは。

メンバーでは安田さん右サイドに回り、左にはルヴァン杯でも堂々とプレーしていた泰基が初先発に抜てきされました。泰基はルヴァンで見せていたように、攻撃時の攻め上がりや、ドリブルに特長があり、前へボールを運べる選手です。自分の持ち味を理解し、この試合でも臆することなくボールを運んでいたことに好印象を受けました。

チームのアクシデントにも難なく対応した大武君

新潟は前半早々に、健太君が負傷で交代を余儀なくされ、大武君が急きょ出場するアクシデントがありました。早い時間での交代は、多くあることではないので少し慌ててもおかしくないのですが、大武君は最初から相手をよく見て、冷静にプレーをしていましたね! 試合を進めながら、ボールフィーリングや気持ちを整えて上手く試合に入っていました。

福岡のキーマンであるドゥドゥに対しては、厳しくマークをして自分のペースに引き込んでいましたし、福岡が横幅を使ったり、DFラインの背後を狙おうとしてもカバーリングや空中戦の強さを活かし、勝利と無失点に貢献していました(後半のCKからのヘディングは決めたかったと思います(笑))。前節のジュフンの負傷、そして今回の健太君のアクシデントはチームが動揺してもおかしくないところでしたが、大武君の活躍は、それを吹き飛ばしてくれるものだったと思います。

新潟らしくなってきたターレス

前線でインパクトがあったのがターレスです。福岡戦は、彼が自陣まで戻ってボール奪取をしたりと守備面での貢献が多く見られました。新潟のハードワークがだんだん体に染み込んでいるのかな(笑) 開幕時に比べると、コンディションも上がってきているように思いますし、さらに期待が高まります。

前半、マサルくんからのFKに合わせたヘディングシュート(バー直撃)を見ると、あの体勢からあれだけ強いヘディングができるのは、やっぱりシュート技術が高い選手なんだと感じます。だからこそ、早くゴールが生まれて欲しいですね。1点目のFK前のファウルをもらった場面も、ファーストタッチで相手を外せているんです。こういうプレーからも、徐々に調子を上げていることがうかがえます。新潟が順位を上げていくためには、ターレスのゴールがポイントになってくると思います。

いいキッカーがいる、相手DFが嫌がるプレーを

J2リーグでは千葉戦以来の複数得点は、非常に明るいニュース。1点目の安田さんのFKは見事と言うしかありません! また新潟に新しい武器が増えました。以前も言いましたが、いいキッカーがいるだけで相手には脅威。ペナルティエリア手前で厳しく行けばファウルになるし、怖がればFWに仕事をされてしまいます。いいキッカーがいるチームと対戦するのは、DFにとって本当に厄介です。それなら、攻撃の選手にはどんどん相手DFが嫌がるプレーをしてもらいたいと思います(笑)。

2点目は前がかりになっている相手に、狙い通りの展開でした。気持ち良かったですね! やっぱりフィジカルに強さがある貴章さんの周りでは、何かが起きます(笑)。そのこぼれ球を、優先順位の高いカワくんに素早くパスを出した祥郎もナイスプレーでしたし、カワくんのトラップの位置、切り返してからのシュートもテンポが速くいいプレー。こういう仕留め方ができるって強いなと個人的には思います。

僕はみんなが喜んでいる姿が見たかった!

こういう仕留め方をするためには、まず相手よりも優位な状況で試合を運ぶことが必要になってきます。ここ最近、先制することは多くなっているので、その後いかに失点をせず、相手を観察しながら進められるか。それができれば、チームはよりステップアップしていけるだろうし、J2リーグのその先もハッキリ見えてくるはずです。

僕が嬉しかったのは、ゴール後に安田さんはベンチメンバー・スタッフに飛びついたり、カワくんがサポーターがいるゴール裏に走っていく姿を見ることができたこと。僕はみんなが感情を爆発させて、喜んでいる姿が見たかったんです! この姿を見られただけで、『アルビはまだ死んじゃいない、もっと上に行ける!』って思いました。次のホームも、今回のようにみんなでファイトをしながら自信を持って戦ってほしいです。

結果を引き寄せる小さな、大事なポイント

「福岡戦は流れの中では決定的なチャンスを作れなかった」という指摘もあるかもしれません。4-4-2同士の戦いでは、どうしても局面のファイトにフォーカスが当たります。たしかに新潟はファイトできていましたが、セットプレー以外ではチャンスは多くありませんでした。

サッカーは相手があってのもので、力関係では互角ぐらいだったのでは。サイドバックの安田さんが、後半は上がってチャンスを作れているかが、新潟がリズムをつかんでいる表れ。ですが、福岡戦ではなかなかそういうプレーが見られませんでした。福岡のオーガナイズや組織力は素晴らしいものがあったと思います。

だからこそ、セットプレーで得点できたことに大きな意味があると僕は思います。まずベースとなる球際の勝負で負けなかったのは、結果を引き寄せる小さな、でも大事なポイント。その積み重ねが試合に影響するし、勝負のアヤをつかめるセットプレーや、守備からの鋭いカウンターという武器が大きく効いてくると思います。

福岡戦を見て考えさせられた、作り出す雰囲気

僕が福岡戦で気になったことがもうひとつあります。前半からファウルが多くなったゲームでしたが、新潟の選手たちは冷静に、プレーに集中していたように思います。一方で難しい判定でファウルになる、ならないはあったと思いますが、福岡のスタンドからは声が聞こえてきましたし、選手たちも判定に不満げな態度を示しているようでした。

「この判定はどうだ」というアピールは時に必要だと思います。でも、なんでも、ちょっとでもファウルがあったらすぐに反応するのではなく、“ここいちばん”があってもいいのかな、と福岡戦を見て考えさせられました。

たしかに試合を構成するのは選手と審判かもしれません。でも、周囲の方々が作り出す雰囲気は、無関係じゃなく、影響を及ぼし得るのがサッカーの魅力。福岡戦では難しい雰囲気になりましたが、ビッグスワンでは審判に不満を投げかけ続けるのではなく、チームのファイトを称える空気を作り出していけたらと思います。

僕は井原監督が試合後のインタビューで、「審判と試合をするわけじゃない」と仰っていたのが印象的で、すごくいい言葉だなと。結局、変えられるのは自分たちだけなんですよね。審判も相手も変えられない。自分たちのプレーの質をしっかり持ちながら、相手によってどうするべきかを判断し、新潟のサッカーを表現したい。自分もそうありたいな、と思います。

後半戦を駆け上がるきっかけになり得るゲーム

明日は甲府戦。もしかすると、新潟がボールを持つ展開になるかもしれませんね。甲府は伝統的に相手を引き込んで、しっかりとした守備から一発を狙うチームです。自分たちがボールを持っているから安心ではない。ボールを持っている時のリスクマネジメントや、フィニッシュを意識した攻撃が重要になります。

逆に相手にボールを持たせて、引きずり出してから福岡戦2点目のようなショートカウンターを仕掛けてもいい。繰り返し言っていることですが、相手の狙いをつかみながらプレーができればいいんじゃないかと思います。

甲府には小塚がいますね。小塚は小学生の頃から知っていますが、新潟出身には珍しく(笑)、ずっと高い技術が光る選手です。新潟にいる時は、その閃きをどんどん出してほしいと思っていましたが、敵に回すと、出し手になるのは当然、意外性のあるシュートも持っています。

しっかり体を付けながら、粘り強い守備をしたいですね。彼が気持ちよくプレーするかどうかが甲府の生命線。早いうちにメンタル的にも難しくできれば、新潟にとってはプラスになると思います。

選手にとって、これから後半戦を駆け上がるきっかけになり得るゲームだと僕は思います。次こそホームで勝ちたい。だからこそ、繰り返しですが勝利のための応援をお願いしたいと思います。いけないことにはいけないと言ってほしいですが、みんなが求める、きっかけとなる勝利をつかむため応援をお願いします!


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