【第19回】格好良さの定義

2018/8/14
photo
スポーツホームタウンミーティングに参加しました

6月23日(土)に、新潟日報メディアシップで開催された「スポーツホームタウンミーティング」に参加をしてきました。サッカーだけじゃなく、さまざまなスポーツを通じたホームタウン活動が紹介されていて、本当にいい機会をいただいたと思います。

講演されたスポーツ庁の齋藤総括官は、「国民がスポーツによってつながる」といった活動理念を話されていました。印象的な言葉でした。単にスポーツをする、観るだけではなく、支えたり、さまざまな立場があります。講演後の事例紹介では、僕らの試合を病院内で入院患者さんたちが観戦する「病院内ビューイング」も知ることができました。そこでは、さまざまな立場の人たちが、スポーツを通じてつながったり、パワーになっている。そうした無限大の可能性があると、改めて感じました。

支えてもらったことを、自分がどう返していくか

僕も参加者の方々の前に立たせていただいたのですが、「選手と患者、両方を経験している者としてできることを」といったことをお話しました。サッカー選手・スポーツ選手が大病からプレー環境に戻るのは、現状では限られた人しかいません。だからこそチャレンジする価値があると思いますし、周りの方々に支えてもらったことを、どう返していくかは、今もずっと考えていることです。

スポーツホームタウンミーティングの発表を聞きながら、自分自身、色々なところに顔を出して、つながって輪を広げられたらと感じました。自分の人生を豊かにするためにも、そうした活動は積極的に行っていきたいと思います。

新しい発見をさせてもらった病院内ビューイング

「病院内ビューイング」では、僕は当初、プレーする側と観る側の関係だけだと思っていたんです。「プレーを観てもらい、勇気をもらう」というのでしょうか。でも、それだけじゃなく、患者さんと医療従事者の方々の立場や向き合い方を変えるという意味もあるんだ、という新たな発見もさせてもらいました。治療の際の向かい合う立場から、モニターを一緒に観る横並びになる。そうやって関係を深められるのは、スポーツだからこそですよね。

僕自身も入院していた頃、病院を色で表現すれば暗いようなイメージを持っていました。先生との関わりもどうしても向かい合うものですが、病院内ビューイングを通して、違う立場で触れ合えるのは、すごくいいことだと僕は感じました。チャンスがあるなら、その現場も体験してみたいですね。

びしょ濡れになりながら一緒に戦ったサポーターに

では、モニターで映し出されるチームの戦いにも目を向けたいと思います。先週は20日(水)に甲府戦、24日(日)に町田戦が開催されました。結果はどちらも非常に重いものになったと思います。

ビッグスワンでの甲府戦は、日程が変更となり、平日のナイトゲームに。さらに雨も強く降る中で行われましたが、それでも8,000人を上回る皆さんに足を運んでいただきました。僕は雨が当たらない場所にいましたが、サポーターの中には、びしょ濡れになりながら、チームと一緒に戦ってくれている方もいました。そうした風景を見たり、思い返すだけでも、申し訳なかったと思いますし、サポーターを幸せにできず残念だったと思います。

チームの決めごとをもっと徹底しよう

前半2分に喫した失点を振り返ると、立ち上がりにサイド際でファウルを犯しFKに。そこからつながったCKでの失点でした。チームとして厳しく行くことは当たり前ですが、そこまでの場面ではないのにチャレンジしてしまったりは、チームとしてのやり方、決めごとがまだ上手く統一されていないのでは、と率直に感じました。

2点目もそうです。CKから、クリアが中に入ってしまい、さらにクリアが小さくなったところをコヅ(19小塚)に左足で決められました。「チームとして何をやってはいけないのか」が、ハッキリしていない状況で、ミスが連続すれば失点につながります。ゲームではさまざまな環境・状況があり得ますが、それでも「チームとして絶対にやってはいけないこと」を、もっと徹底できればと感じます。

ひとりの能力が掛け算になるように

人それぞれに感じ方は違うと思います。ひとつのプレーに感じている人もいれば、そのプレーでは感じられなかった人もいる。そういったバラつきがあるのは、人間ですから自然なこと。要は、チームとして誰かがちょっとでも感じた問題点・解決策をチームとして発揮できればいいと思うのです。「ひとりがどうこう」ではなく、ひとりの能力が掛け算になるように。

誰かが感じたら伝えないといけない。僕はいまの新潟のチームの関係性が崩れていたり、仲が悪いといった印象を持っていません。ただ、そこを伝えられないのだとしたら、“まとまっているように見えているだけ”と思われても、しょうがないと思います。大事なのは、選手として、本当の結束を見せられか。そこは勘違いをしないようにしなければなりません。

柳起用の効果はあったが前半は非常に苦しかった

町田戦はスコアレスドローで勝点1を獲得しましたが、内容的には甲府戦に続いて課題を感じました。この日はスターティングメンバーに柳が入りましたね。彼がいることで、真ん中のハイボールをCBだけでなく彼がはね返せたり、CBが引きずり出された時にその位置を埋めて、穴を作らないようにしていました。

その穴埋め自体はよくできていたと思います。ただ、はね返したボールに対するセカンドへの意識が薄かったり、クリアが中途半端で相手ゴールに背を向けた状態でのプレーが多くなり、町田の圧力をモロに受けてしまいました。彼らの狙いである、前線からのプレス、ラインを高く統率したスタイルに、前半は非常に苦しめられました。

変化に対応する力に改善を

ワントップに入ったのはターレス。裏に抜ける動き出しが得意な貴章さんや、サイドに流れるカワくんのようなタイプが前線の頂点にいたわけではありません。どちらかと言えば足元で受け、さばいたり、サイドチェンジを狙う彼のスタイルとはミスマッチのような状態になってしまいました。

それでも、祥郎が中から外に飛び出したり、新太が足元で受けてから、もう一度背後に抜けようという打開を試みていました。ピッチでどう感じたかは分かりませんが、その動きが上手くいったと認識できたのであれば、もっとチームとして使おうという意識があっても良かったと思います。「相手の狙いがこうだから、自分たちはどうするか」といった変化に対応する力に、改善の余地を感じました。

やり切れなければ解決策ではない

当然ですが、相手も新潟を分析して対策を講じます。それは自分たちも同じ。どんなに分析・対策をしても、ピッチで向き合わなければ分からないことがサッカーではあります。僕らは、「最初と最後の15分が大事」とよく話しますが、今回は15分で感じたことを修正し切ることができなかったと思います。ズルズルと相手に裏を狙われ、前に行ってもオフサイドにかけられたりと、相手のやりたいようにやらせ続けてしまいました。

いいか悪いかは別として、解決策のひとつとして、「タテにボン蹴りをして応酬する」というものがあったとして。それもやり切れなければ意味がありません。その点で、決断の弱さや、思い切りが欠けていた部分は否めないかなと感じました。

プライドを捨てて、愚直に勝負に徹する

僕は繰り返し言っていますが、選手としての質で新潟が劣っているとは思っていません。ただ、W杯を見ていても、クオリティーを持った選手やチームでも、どこか慢心と言うか、プライドがあると、いざ劣勢に立った時に逆に仇となります。「能力として上に立っている」ことを捨てて、愚直に勝負に徹することができるかが、大事な要素になると思います。

J2リーグは今度の水戸戦で前半戦が終わります。もう余裕はない。愚直に、泥くさくでいい。それがダサい、カッコ悪くても、ファイトする姿勢を見せるのが僕も好きですし、僕らのスタイルではないかと思います。

格好良さの定義

昔、(西)大伍くんと話す機会があったんです。僕が「なんで鹿島っていつも強いんでしょう?」と聞いたら、「俺らが思っている格好良さの定義が、他のクラブとは圧倒的に違うんじゃないかな」と話してくれて。それが強烈に記憶に残っています。

容姿やスタイルもありますが、結果を出して格好良さを伝えるのが、俺らと他では違うと。そういう意識を全員が持っていることで、鹿島というチームに大きな強さをもたらしているし、誰かが勘違いしても、周りの選手がプレーで気付かせたり、厳しい言葉でチームのために行動できているんですよね。

格好良さの定義を、僕は改めて見つめたいと思います。もちろんチームとしての理想もあるでしょうが、みんながちょっとしたことをがんばれれば、間違いなくもっといい方向に向かっていくはず。チームの仲の良さ、団結を元に、もう半歩でも、本当の格好良さを見せてくれれば、チームは変わる。スタンドにも伝わると思うんです。それがいい効果を生み続けると思うので、期待をしたいと思います。

僕らはにらみ合う関係じゃない。何ができるか!

6月30日はレディースF日体大戦とトップチーム水戸戦のダブル開催、7月1日は本間勲引退試合です。何度もビッグスワンに足をはこんでいただいている皆さんには、僕らが幸せにできずに申し訳ないと改めて思います。

苦しい状況ではあります。でも、僕らは余裕がなくなって、互いをにらみ合うような関係じゃないはず。病院内ビューイングではないですが、時に向き合ったり、同じ方向を向いたり、ちょっと後ろから見守ったり。色々な背景の人たちが、何ができるか考え、行動することが大きな力になると思うんです。僕は病院内ビューイングの発表を聞いて、「そうだ、まだ可能性はあるんだ」と前向きになりました。できることをやることで、後々の大きな力に積み重なっていけばと思います。


ユニフォームパートナー