【第20回】勲さんの言葉を噛み締め、肩を組んで戦おう

2018/8/14
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夏場の試合で難しい選手の交代

このところ暑い日々が続いていますね。トップチームは町田で勝点1を獲得し、先週末の6月30日は水戸とのホームゲームでした。水戸はトップの9ジェフェルソン・バイアーノの強さを活かし、46伊藤涼太郎や、この日得点を決めた32黒川淳史が入ってくる狙いがあるように感じました。実際、試合では9バイアーノの力強さが目立っていたと思います。

新潟はCBでカンペーさんと健太くん、そして町田戦同様に柳をアンカーに起用して、高さと強さのある選手を中央に配置していました。ただ、不運だったのは前半の健太くんの交代。どういう原因かは自分も分からないのですが、夏場の試合、後ろで枚数を使ってしまうのは、チームとしてゲームを難しくなったのではないかと思います。

大武くんは以前も早い時間での交代出場の経験があって、特に混乱はなかったと思うのです。でも、最後の切り札として1枚を切りたい時に、使うことができなかった。水戸戦で言えば、攻撃を上手く変化させられなかったのは、最初のアクシデントが響いたのではないかと想像します。

ターレスのコンディション向上がうかがえる先制点

先制は新潟。祥郎から、おそらくターレスを狙ったボールをマサルくんがヘディングでそらし、DFラインの背後に落ちたところからで、少しラッキーでしたね。ただ、仮にマサルくんが触らずターレスに入ったとしても、いい距離感からターレスがワンタッチで落として次の攻撃につなげられたのではないかと。また、そういった変化に、ターレスがしっかり背後を狙ってもいました。スプリントできたのは、彼のコンディションが向上しているのを感じます。

マサルくんがより高い位置に入り、ターレスが体の強さを活かしてポストプレーやボールを回してくれれば、祥郎も含めて三角形を作れる。その関係からボールを動かしたり、今回のように背後を狙う動きをすれば、より相手は崩しやすいと感じます。さらに相手が警戒して中を絞った時に、サイドのカワくんや新太が持っている、推進力が活きてくれればいいとも連想してしまいます。

横にいるのはマサルくんや祥郎

そのカワくんは、足元で受けてゴールを背にしていることがここ数試合多くなっているように感じます。以前も言いましたが、カワくんの最大の魅力は体の強さを活かし前を向いての仕掛けやドリブル。そういうプレーを出せれば、もっとゴールに近づいていけるんじゃないかと思います。

これまた以前も言いましたが、責任感が強いカワくんなので、ポジションでの役割に意識が回っているのかもしれません。もちろんそれは大事なことですが、横にいるのは信じられない運動量を持ったマサルくんや祥郎なんですよね。前に仕掛け、最悪戻り切れなくても、フォローをしてくれる。それほど守備に不安を抱くような布陣ではない。フォーメーション、組み合わせ出せないというものではないと自分は感じています。

失点はボールが入る前の対応に注目したい

ゲームは後半早々に失点をしましたが、守備について注目したいと思います。この日、新潟は4-1-4-1でのアンカーの「1」の脇や、アンカーとDFの間が空いている状況がありました。「1」を置くことで、間にスペースが生まれてしまう。そうした時に、DFラインを上げるのか、全体をコンパクトにするか。あるいはスライドを速くして対応するか。色々方法はあると思います。

失点場面で言えば、スライドが遅れたことで得点を決めた32黒川に入り、彼のストロングのドリブルを自由にさせてしまいました。ボールが入る前に対応をして、全体のポジショニングが整えられれば、ああいったピンチは未然に摘める部分があるはず。DFだけの問題じゃなく、全体の位置関係もあると思いますが、「どっちの方向に相手を進めていくか」を、自分たちが共有・理解し、守備でも優位に進める対応ができればと感じます。

夏場に向けて、チーム全体で意思統一を

シチュエーションによって柔軟に対応しなければいけないと思いますが、今はチームに少し迷いがあるのかもしれません。『どうしようか』という守備側の微妙な判断を相手は突き、入ってくるもの。何度も言うことですが、「どういう守備がこの瞬間は必要か」を徹底し、感じながらプレーすることが僕たちに求められています。

特にこれから夏場になり、選手たちの判断が鈍る時期が訪れます。そうした時に意思統一がチーム全体でできていれば。よりコンパクトで連動感がある、守から攻への鋭さが出てくるのではないかと思います。

左ならどう活かすか、右はどうか

攻撃では右サイドでひとついい形が見られました。前半33分、カンペーさんからのタテパスを受けた新太が、ワンタッチで輝綺に流して動き直し。輝綺も新太に戻しつつオーバーラップを仕掛けると、ボールを呼び込んでクロス。オフサイドになりましたが、最後にカワくんが詰めました。

流動的な、「出して動いて、出して動いて」は、相手も崩れやすい。特に新太が相手の嫌なところに顔を出し続けられるのが、こうしたプレーが生まれる一因になっています。もっとそういう部分をチームとして狙えれば。動きの連続性は、いまのチームに大きな武器になっていると思います。

サイドでプレーをしていますが、新太はどちらかと言えば自分で運んで決めるタイプではありません。出して動き、ゴール前に顔を出せるのが彼の良さ。カワくんと前への強さは共通していますが、バリエーションは異なるんですよね。だから、「左ならどう活かすか、右はどうか」と、選手を理解しながら、助けられるプレーを周りも出していければと思います。

いい準備をして、松本戦を迎えよう!

J2リーグは前半戦が終わり、次節は松本戦。前回は反町監督が早いタイミングでカードを切り、相手のウィークを突こうという意図が光りました。その点を見ても、夏場に山雅と戦うのはハードだと感じます。暑い夏場に間延びする状況はできやすい。ロングボールを活かした攻撃に対して、セカンドボール、セカンドボールの次のプレーも意識を高めたいところです。

松本には出し手もいますし、裏に抜けさせたら怖い7前田大然もいます。だからこそ、チームとして、特長があるなら出させないようなプレーをする守備のやり方があると思います。いい準備をしながら、試合を迎えられればと思います。

アルビの選手たちの強い結束

7月1日は「本間勲引退試合」に出場させていただきました。当日は13時集合と言われていたので、『若手は30分前には』とビッグスワンに行ったら、なんと勲さんと、イベント対応があったスクールコーチ以外は誰もいなかったんですよね(笑)。逆に待っている方が緊張というか、ソワソワしていました。野澤さん、ファビーニョや山口素弘さん…。ずっと見ていた選手たちが続々とロッカールームに入ってきて、ちょっと挙動不審になりながら挨拶をさせてもらいました。

僕が印象的だったのは、出場選手の皆さんも、勲さんの引退試合ということで久しぶりに顔を合わせる機会ができたと思うんですね。パッと会った時の嬉しそうな表情や、はしゃいでいる様子を見て、「アルビでプレーしていた時に、ひとりひとりが本当に一生懸命に一瞬一瞬を戦ってきたからこそ、ああいう笑顔があるんだな」と。本当の意味での強い結束を感じました。

今後どういう機会で、いまやっている選手たちと再会ができるかは分かりません。でも、僕も、同じようであれるように、その時々の行動やプレーは大切にしなければ、と強く思いました。選手たちみんなで大事にしていきたいことだと感じます。

先輩からかけてもらった言葉

先輩たちからかけられた言葉ですか? 野澤さんには、「いつもブログ見ているよ。俺のこと書いていいからね」と。なんというか、『さすがだな』と思いました(笑)。すごく優しくて、野澤さんらしい気遣いですよね。

健太郎さんやミカさん、大輔くん、堅碁くん。前にも会っているんですが、大伍くんやアトムくんたちは、「ずっと気にしていたぞ」と言ってくれて。僕はそういった人たちのプレーを見て、パワーをもらっていたつもりなんですが、逆にそういった人たちから、「元気をもらっていたよ」と言ってもらって。

先輩方には、ずっと気にしてもらっていたんだなと感じました。まだ完全復帰ではありませんが、そんな会話だけでも、この勲さんの引退試合に間に合って、出ることができて本当に良かったなと思います。

送ってもらった写真はどれも笑っていました

右サイドバックでのプレーは、まさかの基治さんからの指名です。『サイドバックはキツい!』と思ったし、勲さんが相手チームにいたから、どうしても相手が攻めてくるじゃないですか(笑)。でも、大輔くんが隣にいて、ずっと声をかけてくれていました。

やっている時はそんな感じはしなかったんですが、SNSで「写真をください」と呼びかけて、送ってもらった写真を見たら、どれも笑っているんですよね。自然と楽しさが顔に出てしまっていたのかな。今まで、試合で笑っていることなんてなかったんですけれど、サッカーに対する感じ方が変わっているのかもしれません。また、それをみんなが見て、「楽しそうだね」とほっこりしてくれるなら嬉しいですね。キツかったけれど、楽しさの方が勝りました。

勲さんの引退試合は僕のサッカー人生での大きな出来事

僕の中で、勲さんの引退試合は小さな目標でした。それが終わってホッと力が抜けた部分もあります。でも、あそこでプレーできて、色々な選手から力をもらって、落ち着いた反面、「早くまたああいう場面でプレーしたいな」という思いもいっそう膨らみました。7月1日の勲さんの引退試合は、僕のサッカー人生で間違いなく大きな出来事。その機会を与えてくれた勲さんには感謝しかありません。

勲さんは、最後の大事なスピーチの場で、僕の名前を出してもくれました。あの瞬間、正直泣きそうになりました。でも、アキ(秋葉)さんに、「史哉こっち来い。手ぐらい振れよ!!」と促されて(笑)。急にそんなことを言われたから、訳が分からなくなっちゃって。浸りたかったんですが、そんな時間を与えてくれない(笑)、先輩の優しさですね。

勲さんの言葉を噛み締め、肩を組んで戦おう

ピッチから、選手たちのチャントを歌うサポーターの皆さんの声の大きさを感じ、楽しそうに歌う姿が見られました。サポーターも昔のような気持ちに戻って、素敵な一日だったんじゃないかな、と思います。だからこそ、今の選手たちもそういう想いを共有できるようにがんばっていかなければとも思いました。

自分自身にとっても大きなことでしたが、苦しい時だからこそ、勲さんの引退試合はサポーターも含めていい方向に向かっていくためのきっかけにできたらと思います。勲さんが最後のスピーチで話した言葉を噛み締めながら、もう一回みんなで肩を組んで戦っていければいいと思います。



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