【第27回】「大丈夫!」な空気を作ろう

2018/8/28
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アルビに捧げてくれている人たちと喜びたい
大宮戦があった8月18日。僕はメンバー外の選手たちと一緒に聖籠でトレーニングをしていたんですが、練習見学をされていたサポーターの方で、「これから大宮まで応援に行く」と話してくださいました。改めて、サポーターの皆さんのチームへの支えに、改めて感謝しなければいけないと感じていました。

厳しい状況でしたが、2,600人という多くのサポーターが、NACK5スタジアムまで足を運んでくださったのも、映像を通して見ることができました。みんながアルビのために捧げてくれています。そういう人たちとともに喜びたい、という気持ちは常に持っています。

マテウス選手を抑え込もうとした健太くんと貴章さん起用

大宮戦はスタメンに多くの変更がありました。まず、右サイドバックには健太くん、ハーフには貴章さん入りました。大宮の攻撃のひとつの特長は、左サイドで力強いドリブルを得意とするマテウス選手の存在にあります。彼を自由にさせないことで、大宮の脅威をひとつ減らすことができます。

どちらかと言えばセンターバックに近い健太くんを右サイドバックで、その前には貴章さんを配することで、右サイドを固めつつ、ボールを持ったら上下動を繰り返せる貴章さんの運動量を活かし、逆にマテウス選手を大宮陣内に抑え込もう、という意図が感じられました。この点に関しては、特に前半は上手く表現できていたのではないでしょうか。

カジさんとサチの役割分担

ボランチにはカジさんとサチが送り出されました。お互いにボール付近の局面に顔を出し続けることができる選手ですが、特徴は両者で少し異なります。カジさんは攻撃時にボールをワンタッチ、ツータッチでテンポよく動かし、相手守備が整う前にチャンスがあれば縦パスを狙う。これにより、大宮は奪いどころがハッキリしない場面があったと思います。

あえて役割を言えば、カジさんがシュートに行くひとつ前のパスを、サチは全体にボールを供給するような形かなと。サチは攻守の切り替えでは、いち早くカウンターに対応したり、気の利いた守備でチームを楽にしてくれていたのではないかと思います。

カジさんは“関わり続けられる”選手

僕はカジさんに、「技術が高くてボールを散らす選手」というイメージを勝手に持っていましたが、試合では3人目で動いたり、パスを出した後も自分がもう一度関わるという動きを続けていました。関わり続けるということは、ボールに対してアプローチに来た相手とは単純に言えば2対1が作れるわけで、守備者には厄介ですよね。

もちろんカジさんは中に密集させておいて、サイドに散らすこともできます。そうしたリズムを作って攻撃に出られるのは、現在の新潟はなかなかできていなかったこと。ワンタッチ、ツータッチでボールが出てくるテンポに周囲が慣れて、その基準でプレーを判断できれば、より楽な状況で攻撃ができるはず。より自由を与えられた中で、シュートを撃つチャンスが増えることにもつながっていくので、相互に理解を深めて、カジさんを最大限に活かしていきたいところです。

リズムを把握し、安定感を

FWには新太とカワくん。どちらもゴール前で鋭さを出すタイプだと思いますが、大宮戦に関しては、その作りの段階で相手CBにつかまり、ファウルになった場面もありましたが、奪われてからタテパスを入れられ、ピンチを迎える場面もありました。

前述のようにカジさんがポンポンと前に付け、顔を出してくれますが、ポストで強みを発揮する選手が前線にいても面白かったかもしれません。そのリズムを把握することもそうですが、ボールの収め方や、入った後の攻め手は、もっと増やしていければ相手に脅威を与えられたはず。繰り返しですが特徴を共有しつつ、奪われない安定感を求めたいところです。その先に、FW陣がさらに輝きを放つ場所があるはずです。

またも生じてしまった後半開始直後のピンチ

一方、守備で気になったのは後半開始直後の47分の場面です。スローインで入ってくるボールに対してのマークがあいまいで、スローインを入れる選手も含めると、大宮の3人を貴章さんと健太くんが見なければいけない状況になっていました。マークをハッキリさせるためには、ボランチをボールサイドに寄せるのか、マークにしっかり付きながら、カンペーさんに裏をカバーしてもらうのか。配置がどうであっても、マークの所在を明確にできたら良かったと感じます。

結果的には大谷さんのナイスセーブで失点にはなりませんでしたが、ここ数試合、後半立ち上がりでピンチの場面が続いています。それには、プレーか、意識的なものかを変えなければいけないかもしれません。突破された後も、もう少し早い段階で認識して、埋めることができていればと感じました。もちろんこれは相手のクオリティーとの勝負もあります。大前選手はCBとボランチ間のスペースを常に狙っていて、本当に上手だなと改めて感じました。得点を取れる勘所を押さえていて、それは自分たちもおおいに参考にさせてもらいたいですよね。

「大丈夫!」な空気を作ろう

実際にこの試合に出場していない僕が、憶測で語るのは失礼かもしれません。ただ、失点場面やロングボールの処理のミスは、色々な課題を自分たちに突きつけていると感じます。たとえば1失点目は、ボールが関与しない場所でのファウルだったかもしれません。2失点目も、一度は首を振って、マークを確認していました。キーパーから「OK!」や、「マークいるぞ!」というコーチングがされているかに関わらず、あのエリアで相手を押したり、マークを認識していながら自由を与えてしまうこと。

失点するのはチームです。その危機感や、ペナルティエリア付近でのファウルは極力避ける認識のもと、個々には辛抱強く守備を行えるかが大切になってくるのではないでしょうか。何かに耐えるのは、慣れるまでは苦しいし辛いものです。でも、今ここで課題にしっかりと向き合えなければ、後々さらに大きな苦しさが待っていることが想定されます。今こそチームとしての団結力を活かし、課題に立ち向かいたいですね。

もちろん他の選手たちは「自分ごと」として認識すること。人間ですから、極限状態で何かしらの反応が起こってしまうことはあり得ることです。それなら、周囲がもっと安心して、余裕のあるプレーをさせなければいけないかもしれません。「大丈夫!」という状況を作ってあげられればと思います。

これは難しくて、前回のターレスの話ではありませんが、関わり過ぎるのも問題です。そのバランスが問われていて、周りを楽にしてあげられる関係性、位置取りができれば、ミスも減ってくるんじゃないかと思っています。「大丈夫!」な空気をみんなで作っていきましょう!

相手に楽な選択をしていないか

後半、印象的だったのは、新潟がペナルティエリア付近でボールを持っていても、大宮は特に慌てたり、激しくボールを奪いに来るわけではなく、ボカしながら守備をしていたことです。悔しいことですが、大宮の守備の選手は楽だったのではないでしょうか。なかなかシュートを撃ってこないと分かれば、そこまで寄せる必要がないからです。

まず優先順位の高い「シュート」を頭に入れた中で、相手の変化を観察して違う選択肢を選べれば。そのためにも、互いがいい距離感、サポートを意識して、攻撃のポジショニングをする必要があります。その回答というか、光明となったのが、新潟の得点場面だったのではないでしょうか。

得点は新太がクサビを受けると、カジさんが3人目の動きで背後を狙いに仕掛けました。あの場面でボールを取られなかったカジさんのプレーは素晴らしいです。普通なら奪われるところを、チャンスに一変できるのはクオリティーに他ならないです。

同時に、いい距離感で関わろうとしていた新太のゴールへの意識があったからこそ、その次のプレーにもつながりました。スペースがあれば迷うことなく足を振れるのは、新太の大きなストロングポイント。いい場所に置けたトラップも含めて、一連のゴールへの流れは今後もどんどん狙っていきたいものです。

顔を上げ、胸を張っていこう

5連敗という結果は重いもの。でも、翌日の練習試合の前に、フチさんは「しっかり顔を上げて、胸を張っていこう」と僕たちにメッセージを伝えてくれました。自分たちができる最大限の努力をし、新潟の代表として試合を戦う覚悟を持って臨む。心持ちは難しいかもしれませんが、切り替えて一戦一戦に立ち向かうしか、残された道はありません。前を向いて、やっていければと思います。

積極的にコミュニケーションを取るカウエ

さて、その練習試合では僕も30分プレーしました。皆さんが気にされているカウエとも同じピッチにいましたが、一番感じるのは、「積極的にコミュニケーションを取ろうとしているな」ということ。選手の名前もさっそく憶えて、試合に関わろうとする姿が見られました。チームのためにどういう振る舞いが必要かを明確に持っていて、非常に頼もしいですね。

また、僕が強く印象に残ったのは、一緒にセンターバックで組んでいた大武くん。ゲーム中は常に声を出していましたし、質の高いサイドチェンジを繰り出していて、一緒にやっていてとても心強かったです。苦しいチーム状況を打開してくれる選手の一人なんじゃないかと期待しています。

いまできないのは、向上できる余地がある

僕ですか? まだまだです(笑)。でも、ユースとやっていると見えない部分を感じることもできたので、自分の意識を高める、いいきっかけになったと思います。個人的な収穫は、ジャンプヘッド(笑)。今までタイミングが合わなかったり、飛べなかったりしたんですが、改善されてきているのは、とてもポジティブな部分です。

試合後に映像を見返すと、裏への抜け出しに対して取るべきポジションがルーズで、「まだまだだな」と。でも、失敗を繰り返しながら、僕自身もプラスに持っていきたい。スプリントなどが出せていないのは、まだ筋肉量も関係しているかもしれません。でも、『やれることが増えている』という実感はあるんです。いまできないのは、向上できる余地があること。だから、悲観は全然していないです。

そういえば、復帰後はサイドバックばかりで、センターバックでの練習試合は初めてですね。中学時代から、自分の適正ポジションはどこだ、というのはずっと言われていることで(笑)。しっくり来るのは、センターバックかな。そんなに足が速くないので、アップダウンするサイドバックではないだろうと。でも、根拠はまったくないですが、前目のポジションで出されたら、「得点が取れるんじゃないか」と思ったりもしています(笑)。チームに必要な場所で、出られたらいいですね。


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