【第29回】勝点1は必死で手にしたもの

2018/9/11
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誰がチームを救えるか、見守るフチさん

苦しかった8月の戦いからの反転を狙って、チームは9月1日に愛媛FC戦に臨みました。フチさんはここまで、試合のたびに何人かのメンバーを入れ替えて臨んでいますが、そこには相手への対策はもちろん、選手の組み合わせや、個々のストロングを出させるための配置を考えていると思います。フチさんと話しても、そういう意図が伝わってもきます。

選手を信じながら、「誰がチームを救えるのか」を、ともに戦いながら、見守っている感じでしょうか。選手をフラットに見てくれていますし、選手個々も、チームも、よくなるために声がけをして打開しようともしています。それは選手にとってプラスに作用しているんじゃないかと僕は感じています。

大武くんのキックは「敵の守備を壊せる」

この愛媛FC戦では、以前のコラムでも挙げた大武くんがCBに、泰基が左SBに戻り、カウエとカジさんのダブルボランチが実戦で投入されました。大武くんはすごくいいパフォーマンスを見せてくれましたし、カウエが徐々に自分の特長を出せるようになっていることが、とても目を引きました。

大武くんは皆さんもご存知の通り、守備での高さ、強さがありますが、今回はボールを保持している時のキックの質の高さ。右のセンターバックのポジションから、左ワイドに構えている選手に、しっかりといいボールを付けられるんですよね。相手から見ると、「左サイドでハメよう」と寄せている時に、一気に逆に振られるのは非常に難しくなります。『敵の守備を壊せる』というイメージでしょうか。

練習試合でも一緒に組みましたが、意識してサイドチェンジのボールにトライしているんですよね。この大事なゲームで成功させていて、「チームの力になりたい」と、「自分の力を出して貢献する」、ふたつの意志を感じられて、改めて頼もしく感じました。

カジさん、カウエのダブルボランチ

カジさんとカウエのダブルボランチも印象的でしたね。どちらかと言えば、カジさんがボールをピックアップしてパスをつなぐ。一方のカウエは守備だったり、セカンドボールの回収において良さを出していました。攻守のバランスという点でも、良かったのではないかと思います。

残念ながらカジさんは試合中に痛み、引っ張りながらも最後は交代を余儀なくされました。そうすると、カウエはボールを取られない技術や、前にはこべる良さを披露してくれました。マサルくんとのコンビも違った良さを発揮していて、今後も実戦を重ねて熟成していければと期待がふくらみます。

愛媛の連動性・関係性に戸惑った前半

ただ、ここのところ復調している愛媛の選手が自信を持ってボールを回し、特に前半は新潟が持たれる展開が長くなりました。愛媛はワイドに開いた選手から、ナナメに前線にボールが送られ、ひとりのFWがスルーして裏を、もうひとりが受けて裏を狙う選手に、という連動性・関係性を非常に意識して臨んでいるのが、見て取れました。新潟はそこに慣れるまで少し戸惑ってしまい、ピンチになる場面が多かったと思います。

圧力をかけてきていたので、新潟がボールを奪ってもすぐにプレスに遭い、大きなクリアやあいまいに蹴り出さざるを得ない状況を作られました。相手に保持され、自分たちが守備に回る時間を多くしてしまったように感じます。

前半をゼロで折り返したことで

ただ、それでも新潟の選手たちはよくしのぎ、前半を無失点で折り返しました。最近は早い時間での失点が多く、それだけでゲームが崩れたり、ゲームプランがネガティブなものになってしまう部分が否めませんでした。ゼロで押さえられたのは、後半に臨むうえで大きなパワーになりましたし、選手たちには大きな自信になったと思います。

今後は、そういった状況を活かし、前半のうちに、あるいは後半にいい攻撃に繋げられるかが課題になります。ひとつひとつ、継続していきたいところですよね。

ショートカウンターはどういう意図で走るか、狙うか

一方の攻撃では、前線からの守備からショートカウンターのような形でゴール前までボールを運びながら、そこからフィニッシュに持ち込めない場面もあったように思います。言うまでもなく、ボールを持っている選手がシュートを狙うのは大事なことです。そのチャレンジする姿勢は大いに拍手を贈りたいと思います。

一方で、ショートカウンターで走っている選手たちはどういう意図をもって走るか、狙うか。ボールを持っている選手はそれを感じてあげられるか。それによって、より味方を活かし、スペースを突く動きは増えてくるはず。色々な状況判断ができれば、フィニッシュの数もまた増え、チャンスはもっと大きくなるはずです。

前に付けるボールが増え、攻撃の選手はチャンス到来

愛媛戦のように貴章さんやターレスといったターゲットが不在な状況でも、どうゴールに向かっていくか。選手間がもっと見合って、何を狙っているかを明確にアクションを起こせれば、パワーを増すことができるはず。それは前線だけではなく、セカンドを狙うために押し上げたり、行きづまった時に方向を変えるためのポジションを取ったり。考えを持ち、連動できれば厚みのある攻撃になりますし、いい守備にもつながる循環になると考えています。

たとえば達さんが準備をしていても、タテパスが入らずにイメージを持ちづらい状況がありましたが、大武くん、カジさん、カウエらから、前に付けるボールが増えてきました。そこでどうするか。攻撃の選手たちにとっては、アイデアを出す、いいチャンスが到来しています。味方と自分を信じて、強みを表現してほしいですね。

無失点で、課題を明確に次に向かえる

まずは失点ゼロでゲームを終えられたということ。最近はあいまいな部分から失点を重ねることが多かったですが、無失点はチームとして大きなことだと僕は思います。

自分自身の経験からですが、守備の選手はもちろん嬉しいですよね(笑)。それに、何か課題があったとして、そこにしっかりとフォーカスができる。点を取られると、どうしてもそちらに目が向けられてしまいます。細かい修正点を明確に、課題として持つことができるのは、今後にも大きなプラス。その積み重ねが、勝利を引き寄せることにもなります。

渇望や姿勢は当たり前のベースとして

DAZNで観戦していましたが、選手たちはゼロに抑えつつ、最後まで集中して勝ちを目指していました。後半、相手のオフサイドにはなりましたが、守備では最後まで体を投げ出して、想いが伝わってきたんですよね。ひとりひとりが勝利への渇望を前面にしていて、それは見ている方々にも伝わったのではないでしょうか。

その渇望や姿勢は当たり前のベースとして。かつサッカーは、相手よりも得点を取らなければ勝てないスポーツです。繰り返しですが、そこからどうやって攻撃で点を取るかにフォーカスを当てられたら、みんなが前向きに向かっていけるんじゃないかと思います。

勝点1は必死で手にしたもの

次節はホームでFC岐阜との対戦。岐阜も18位で、いま両チームとの難しい状況にありますね。当然相手も強い決意で乗り込んでくると思いますが、愛媛戦のように、ひとりひとりが強い想いを前提にプレーを続けられれば。必ず岐阜は焦ってくると思いますし、ちょっとしたチャンスが増えてくると思います。岐阜戦は、残り試合で浮上するためのきっかけになり得る。そのためにも、選手自身の取り組みが必要ですし、期待したいですね。

勝点1。サポーターの皆さんからすれば、僕らもそうですが、「物足りない」思いはあります。でも、選手たちは本当に楽ではない状況で、必死で手にしたものです。苦しい中で、半歩でも進むことができた。色々な人を前向きな気持ちにしてくれたと思うので、勢いを最大限に活かして、岐阜戦に向かっていきましょう。



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