【コラム】早川史哉の前を向いて歩こう 第31回・選手とサポーターがひとつになる大切さ

2018/9/25
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ちょっとした比重の変化で難しい試合になり得た

前回に続いて、嬉しい振り返りですね(笑)。前節の岐阜戦に5-0と勝利して、チームはもちろん自信を持って臨んだ金沢戦だったと思います。ただ、大量得点をして勝った次のゲームは、その自信と裏腹に、フワッと浮いた気持ちも付きものではないかと思います。

選手たちにその意識があったかは分かりませんが、立ち上がりは金沢に持っていかれたというか。危ない場面もありましたし、ちょっとした比重が変わってしまうだけで、難しい試合にもなり得たと思います。勝っていい反省をできるのは大きいですが、改めて今後の9試合に向けて、調整していきたいところではないでしょうか。

新潟のストロングを消そうとした金沢

実際、ヤンツーさんが率いる金沢は、序盤はしっかりとボールをつなぎながら、DFラインの背後や右サイドの尚紀のところを狙ってきていたと思います。尚紀のことはよく知っていることもありますし、最近の新潟のストロングを消そうとする意図が感じられました。

そうやって押し込まれた中で、クロスを放り込まれる危ない場面も作られたのですが、粘り強く対応して、決めさせなかったのは本当に大きいと思います。ピッチで戦った選手たちの頑張り、プラスちょっとラッキーな部分もあったのかもしれません。

復調の要因、大武くんと健太くんのCB

守備が復調している要因のひとつは大武くんと健太くんのCBセット。同世代だからこそ、色々な意見交換をしていると思いますし、お互いの良さを理解しながらプレーしているので、積み上げが試合を重ねるごとにされている。また、多少のミスが起きても、慌てることなく落ち着いて対応できているのは、ここ何試合かで感じています。

多少、守備の奪われ方が落ち着いて対応できているのは、愛媛戦から0で抑えられている自信の裏返しでもあると思います。前回も言いましたが、積み重ねがプレーの落ち着きにも影響していて、今後も継続してもらえたらと思います。

仕事を一手に担おうとし過ぎていたマサルくん

また、カウエとマサルくんという2人のボランチの豊富な運動量を活かしたカバーリングも貢献度は高いのは、皆さんご存知の通りかと思います。マサルくんは一回ケガで離れ、戻ってきましたが、ケガの前は自分でゲームメイクからチャンスメイク、その他まで、色々な仕事を一手に担おうとし過ぎていたようにも見ていました。

『それが足かせになっているのでは』と気になっていたのですが、戻ってきたマサルくんは、やることが非常に明確になっているというか。チームの狙いがハッキリしているので、プレーの迷いも無くなっているのでは。『チームの方向性が決まると、選手のやること、気持ちの余裕も生まれてくるものなんだ』と、改めて学んでいます。

狙いに忠実に、対応しなければ突き続ける

23分の得点は、手数こそ多くないですが、素晴らしい形。きっかけは健太くん。この試合、相手DFラインを狙うパスを何度も通していて、まずはチームの狙いに忠実に表現し、相手が対応しないのであれば突き続けることを徹底していました。相手FWに制限がない状況も、上手く利用していましたね。

そのパスにカワくんも反応して中によく折り返してくれました。最終的にはフィフティ・フィフティの状況に、新太が飛び込みました。「ゴールを決めるんだ!」という強い意志が、ゴールの中にボールを転がした格好です。前述のように、手数が少なく、2本だけで点が取れるのは、チームにとっては本当に楽です。もちろん相手には脅威ですし、その武器は今後も磨いていきたいところだと思います。

ゴールの場面、ケガを心配された方もいらっしゃったと思いますが、僕は逆で、ビビッて足を出してしまうと、逆にケガをしてしまいがちなんですよね。新太はそういうこともよく分かっていたんじゃないかと思います。何より、「こぼれてくる」とその場所に顔を出す。ゴール前の鋭さ、セカンドの意識、気の強さといった、新太の良さが詰まった素晴らしいものだったと思います。

「相手を押し込む」キーワードを刻んで

また、得点が認められませんでしたが、後半立ち上がりのマサルくんのヘディングシュートも素晴らしい形でした。トントンとつながっての綺麗な崩しでしたが、僕がうなずいたのは、あそこにマサルくんが顔を出していること。今まで少なかったのではないでしょうか。

相手をチームとして押し込んで、高い位置でボールを保持していることの表れが、ああいうプレーに象徴されてきています。繰り返し言っていますが(笑)、高い位置から相手を押し込めているのは、我々にチャンスをもたらし、相手の脅威になる。そのキーワードは全員が強く心に刻んで、戦い続けたいところです。

至恩を12歳から見ているフチさんの“確信”

さて、決勝点を挙げた至恩に触れる前に、メンバーに選出し、ピッチに送り出したフチさんの決断にも注目したいと思います。至恩の交代は3人目。大きな意味を持つカードに至恩を選択するのは、非常に責任が求められるものだったと思いますし、至恩自身にも難しいものだったと思うのです。

それでも、日頃の練習や、練習試合でのパフォーマンスを見て。また、インタビューでも話されていましたが、12歳から見ているフチさんが、「至恩ならやれる」といいう“確信”を、僕は感じました。その想いに応えて結果を出した至恩。U-18でも、鋭い突破やシュートは何回も見ていますが、その積み重ねがあのゴールを生みました。気持ち良かったし、嬉しかったですね。

次からが、至恩が成長していくための関門になる

改めて至恩ですが、ドリブルのレベルは非常に高くて、プロでも間違いなく通用する部分だと思います。ユース年代だと、ボールが持ててしまうぶん球離れが悪くなる、“上手くできるからこその負の部分”が時折り顔を出します。ただ、プロの世界ではどういうプレーが最善か、練習参加をしている中で感じているのでしょう。そういう部分も見られませんし、経験を活かしながら、着実にステップアップしていると感じます。

臆さずプレーしている様子は頼もしい。でも、ゴールを決めたことで、今後はポジションやマークの付き方も、もっと対策を取られると思います。結果を出したことで、次からが、至恩が成長をしていくための、大きな関門になるんじゃないかと思います。

6歳差のライバル。俺ももっと!

個人的な想いを述べさせてもらうと、ゴールと勝利の後、すごく喜んだ半面、すごく悔しかったんですよね。至恩とはユースで一緒にやっていて、僕はまだプロのところでは、当たり前にはできない。それには理由があるにせよです。同じユースでやっている至恩が結果を出していることに、嬉しさとともに悔しさもこみ上げてきました。

でも、若い力が出てくるのは、クラブにとって素晴らしいし、サポーターにも嬉しい瞬間です。6歳差ではありますが(笑)、闘志をむき出しに、「俺ももっとがんばらないと」というきっかけにしていきたいと思います。ライバルとして、やっていきたいですね。

選手とサポーターがひとつになる大切さ

それにしても、金沢戦の応援は最高でした! 一番感じたのは、アルビの最近の良さである球際の激しさや、チームのためのランニングが繰り返された時に、呼応してしっかりスタジアム全体が拍手や、「いいぞ!」という応援が出てくることなんです。それがいま、チームがノレている状況を作り出してくれていると僕は強く感じています。

なにかアクションを出した時にサポーターから反応が返ってくる。チームとして、「これでいいんだ」「強みとして出そう」が肌で感じられるので、モチベーションも高くなります。当然、ひとつひとつのプレーを大切にしていく。繰り返しですが、サポーターの声が、パフォーマンスの良さにつながっていると思います。これまでの試合を見て、改めて“選手とサポーターがひとつになることの大切さ”に、思いを巡らせています。

至恩が入った場面。サポーターの皆さんも「至恩を助けたい。応援で助けよう」と思ったのではないでしょうか。僕はそれを応援から感じました。ひとりひとりのプラスの想いが、至恩のシュートに乗っかりました。ゴールの場面、もちろん至恩は素晴らしかったですが、「サポーターが乗せてくれた」ことも、決して忘れてはいけないと思います。

強い自信を、もっと押し出して戦おう

次はアウェイで水戸戦。まずは相手の背後を狙って押し込んでいくことは、継続していきたい部分ですね。最近の内容は充実していますが、あえて改善点を挙げるとすると、後ろでの組み立ての際に、不用意なプレーから流れを持っていかれる場面。スキを作らず、自分たちの良さを出しながら試合を進めていけるかが課題になると思います。

選手もサポーターもいまは勝利に飢えていて、「これをやれば俺たちは勝てるんだ」という強い自信を感じます。それはもっと押し出して戦っていきたいですね。

早川的近況報告

J2金沢戦翌日、練習試合には45分出場しました。最後はバテてしまったのですが(笑)、最初は20分くらいから、苦しみながらですが45分プレーできるようになったのは、少しは進歩しているのかな、と思います。

ただ、パフォーマンスの部分に目を当てると、やっぱり納得はできない。少しだけ自分らしさを出せたりもしているのですが、失点にも関わっていますし、「まだまだだな」と。だから、いまはすごく苦しいんです。できることが増えてくると、できないことが余計に気になって。でも、この苦しさ、悔しさを原動力にどれだけできるか。噛み締めながら、進んでいかなくちゃ。いまに満足してはいけないし、復帰のための段階を踏んでいるんだ、と思っています。

今日は坂井輪小学校に訪問してきました。子どもたちに、夢に向かって努力することなどをテーマに話をさせてもらったのですが、最初はお互いに緊張していて(笑)。でも、だんだん子供たちが発言してくれたり、やりやすい環境を作ってもらったな、と思っています。

僕が伝えたかったのは、サッカー選手だけじゃなく、色々な人生を進むうえで、「まずは自分を知ろう」ということ。自分らしさを出すためには、自分を知ること。そして、自分の良さを出そうと。子どもたちひとりひとりが、「自分とは、自分らしさとは」を、考えてくれるきっかけになってくれたら、とても嬉しいです。


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