【コラム】早川史哉の前を向いて歩こう 第32回・次は誰がヒーローになるか

2018/10/2
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戦い方を共有して勝利するのが浮上へのポイントだった
ホームの岐阜、金沢と2試合を非常にアグレッシブでいい内容で勝利した後の水戸戦でした。この2試合は、戦い方の共有がしっかりされていたこと、サポーターの皆さんの熱い応援が後押ししてくれたこと。2つを感じ取れたのが、大きな勝因だったのではないでしょうか。この水戸戦でも、戦い方を共有して勝利することが、浮上を狙う上で大切なポイントだったと思います。

一方、水戸も5試合負けなしとチーム状態もいい状況で、この一戦を迎えました。その通り、立ち上がりから新潟がホームで見せていたような、背後のスペースを積極的に狙うプレーを何度もチャレンジしていましたね。

セカンド回収のポジションや距離感が優れていた

背後を狙ったり、サイドチェンジを使って新潟を押し込み、主導権を握って試合を有利に持っていこうとしていた水戸。これに対して新潟は、押し込まれながらも全体をコンパクトに保ち、セカンドボールを回収することで主導権を奪回しようとしました。新潟が一方的に押し込まれなかったのは、このセカンドボール回収のためのポジションや、選手の距離感が良かったことがまず挙げられます。

僕が感じたのは、押し込まれた場面だけではなく、自分たちが水戸陣内に侵入している際も、セカンド回収のためのポジション取りや距離感が意識されていること。攻撃から守備に切り替わった瞬間、何人かが連動してすぐにボール保持者に襲いかかり、ボールを奪ったり、攻撃を遅らせることができていました。

切り替えの速さ、プレスにかかる一歩目の速さは、普段の練習からしっかり意識してやれている、という表れ。また、新潟らしさが再び体現されていることを、サポーターの皆さんも感じているのではないでしょうか。

個ではなく、チームとして奪いに行くかを徹底できている

以前の新潟なら、達さんやサチといった切り替えに特長を持つ選手が、単体でボールを奪うシーンが多かったですよね。逆に言えば、そういった選手がひとりだけリズムを変えて奪いにかかり、遅れて他の選手が行くことで簡単に包囲網を突破されてピンチになったり、個々の意識の違いで守備に追われる時間が長くなっていたように感じます。

選手たちの切り替えの意識が高くなっていることもありますが、チームとしてどこにポジションを取り、どの方向から奪いに行くかが共通認識のもとプレーできているのが、向上している大きなポイントだったと思います。いまのチームはこれが意識・徹底されているから、安定感が増しています。6分、25分などは、連動や密集でボールを奪えている良いシーンでした。

ここにフチさんのアプローチを感じます。試合中もフチさんは、テクニカルエリアで身振り手振りをまじえ、どこに戻るか、ポジションを取るかをコーチングしているように見えます。ポジションの要求はフチさんになって、より強まっている。さらに新潟の選手に遂行能力があるのが、ゲーム内容が向上している要因だと感じるのです。

セットした状態での奪い方もさらに突き詰めよう

ただ、守備では改善点もありました。後半には46伊藤からのスルーパスで決定的なピンチを迎えた瞬間はヒヤッとしました。攻守の切り替えからはいい守備ができていますが、ラインを整え、相手を前に置いた中では、ファーストディフェンダーがボールとゴールを結んだ位置にしっかりポジションを取る。そうすることで、スルーパスなどもゴールに直結しない角度に導けますが、改めて意識したいですね。

DFラインも制限がかからず、いい状態でボールを持たれているのに、ナナメに走った相手へオフサイドトラップを仕掛けたり、ラインを整えようとすると、どうしてもああなってしまいます。セットした状態での奪い方もさらに突き詰め、状況判断を互いに要求できればと思います。

それにしてもムラーリャのセーブは素晴らしかったです。失点してもおかしくないシーンが何度もありましたが、そこは新潟の壁がゴールに鍵をかけてくれました。どんなに警戒していても、試合では何度か危ない場面が訪れるもの。それを防げるか、また自分たちは決め切れるか。この水戸戦は、まさにそういう苦しい時間をしのぎ、勝利を手にしました。勝つためにはゴールを決めることが必要ですが、そのために立ちはだかり続けてくれたムラーリャにも、同じように称賛を送ってもらえればと思います。

試合を重ねるごとに頼もしさが増す健太くん

水戸戦では健太くんの攻守の奮闘も目立ちました。まず攻撃では、代名詞と言えるサイドチェンジのロングボールの質の高さですよね。以前も触れましたが、健太くんはまずDFラインの背後を狙っていることが前提にあります。相手がタテへのフィードを警戒して深さを取ってきたら、「今度は幅を使おう」とサイドチェンジ。試合を重ねるごとに、状況を把握して、空いているスペースを見ながらやっているなと感じます。

守備では、CBとしては小柄ですが、前への強さを前面に、水戸の9ジェフェルソンにプレスをかけてボールを奪っていました。後半の最終盤、危険なファウルを受けましたが、ゴール前に入れられたボールにいち早く反応して触っているんですよね。前述のようにCBとしては小柄な健太くんは、より守備の嗅覚を研ぎ澄まし、触る準備をしています。非常に頼もしい存在だな、と思います。

カードで困るのはチームと自分。感情の高ぶりをコントロールして

率直に言うと、この試合、危ないプレーが何度か見られたのは少し残念ではありました。もちろんケガをさせたくてプレーしている選手なんていないはず。でも、心は熱く、頭は冷静になってもらいたいと思います。ちょっとした行為でカードをもらって困るのは、チームであり選手個人です。熱い思い、激しさは試合で必要なものですが、感情の高ぶりを、自分自身でコントロールしてほしいです。

また、レフェリーについても、何度もそのようなプレーをカードなしで続けてしまうと、基準があいまいになり、ケガにつながる危険なプレーが起きてしまう可能性があります。実際にテルがケガしたように、そういったプレーへのレフェリングや、未然に防ぐ術は、レフェリーに求めたいところです。

次は誰がヒーローになるか

今節は貴章さんのゴールで勝利を手にした新潟。勝つというのは大変なことですし、3連勝はチームが成長して、積み重ねがいい方向に向かっていると感じます。また、勝利を手にしたこの3試合、さまざまな選手が得点してヒーローが入れ替わっていますね。次は誰がヒーローになるか。そう考えるだけでワクワクします!

次節もアウェイ、相手はファジアーノ岡山。前回は大分と同様の、組織としての強さややるべきことの徹底を感じさせられました。ただ、いまは僕たちも規律ややるべきことがハッキリできていますね。面白い試合になると思いますし、そこをおろそかにしないように、強調したいところです。

早川的近況報告1。いわきFC戦に出場

水戸戦翌日に福島で行われた練習試合・いわきFC戦にはサイドバックで30分出場しました。実は復帰してから、県外に遠征しての練習試合は初めてだったんですよね。まず、前夜から、『何を持っていけばいいんだろう』と準備を忘れていて。2年ぶりくらいだったので、頭がパニックになりました(笑)。遠征途中の軽食時も、「どのくらい食べたらいいのかな」と自分のペースが分からなくなっていて。少しずつ、そういう経験も重ねていければと思います。

プレー面では、ボールを持った時は落ち着いてボールを回せたと思いますが、守備での寄せや背後へのスプリント、また相手にぶつかる時の強さはまだまだ足りない。今回はそういったフィジカルを売りにしているいわきFCだったからこそ、それが明確になりました。技術も大事ですが、運動選手としての能力は、もっと上げていかなければと痛感しました。

いわきには、大学リーグでしのぎを削って選抜で一緒だった選手や、中学時代のナショナルトレセンで一緒にやっていて現在コーチをしている仲間たちと会うこともできました。単に勝利を目指すだけじゃなく、色々な出会いができるのがサッカーの魅力。元気にできているよ、顔を合わせられるのは嬉しい。J2、J1では、代表で一緒にやっていた選手もいます。そういう喜びを共有できるように、まだまだがんばっていきたいと思います。

早川的近況報告2。リレー・フォー・ライフに参加

週末には、新潟県スポーツ公園で行われた「リレー・フォー・ライフ・ジャパン にいがた2018」にも参加しました。実は2年連続で参加したのですが、昨年は自分のことが発表されていなかったので、ひっそりと参加したんですよね。今年は「アルビレックス新潟の早川史哉、がんサバイバーの早川史哉」として参加できたので、たくさんの人と話ができて、それぞれの状況を伝え合えたんです。

それはいい思いばかりじゃなく、辛い思い出を共有してくれた方もいて。でも、そうしたものも含めて、みんなで一緒に、少しずつ前に向かっていけたら。大きなパワーをもらって、自分にとって本当にいい時間になりました。ご参加の皆さんに御礼を伝えたいと思います。



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