【コラム】早川史哉の前を向いて歩こう 第35回・大事に闘い、つなげていきたい

2018/10/23
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新潟らしさを武器に立ち向かうチームが誇らしい

前回対戦の1対5という悔しい敗戦のリベンジを誓った甲府戦。チームとしてもこの一戦に対して並々ならぬ闘志を持って臨んだ試合でした。選手たちは最後まで勝利を目指し、新潟の生命線であるハードワークを徹底し戦いました。そのような姿勢を貫き、戦い抜いた素晴らしい試合だっただけに、得点を奪い取り勝利したかったですね。

しかし、だんだんと新潟らしさを武器に、相手に立ち向かうチームを誇らしく思います。チームにも自分たちのサッカーに対する、自信のようなものを感じます。この積み上げを大切にしながら、残りの試合も、そしてこの先も戦っていきたいです! それでは試合を振り返りたいと思います。

泰基のロングスローから相手の脅威に

泰基が出場する試合での大きな特徴は、左サイドからクロスやコーナーキックのように、スローインでも攻撃のチャンスを作れることです。この試合でも前後半立ち上がりから、ロングスローを駆使して甲府ゴールに迫りました。

甲府にとっては、スローイン(それも立ち上がりから)でゴール付近にボールを入れられることは嫌ですよね。さらにセットプレーと同じように、前線に大武くんやカウエのような大型の選手がパワーを持って入ってくるとすれば。余計に神経を使いますし、いい状態で弾き返すことが困難になります。

実際、立ち上がり3分にロングスローからこぼれ球をサチがシュートした場面や、35分のカウエがヘディングでのスラしから河くんがシュートした場面など、何度かチャンスを作ることができています。この試合のように、こう着した状態が続いた中で泰基のロングスローがあると、それだけで相手を自陣内に押し込むことができます。ピッチをタテに三分割した際の、最奥エリア左サイドからのスローインは、常に脅威になります。相手の右サイド裏を狙うことが、自分たちを優位にするポイントの一つにもなり得ると思います。

一度遅らせた後の守備の向上を

ここ数試合、守備時における新潟の選手間の距離の良さは、失点が激減している秘訣でもあります。フチさんが細かな修正をチームに求めていることは、以前のコラムでも記述した通りです。

その結果、相手の攻撃を遅らせたり、外に押し出したりと制限を上手くかけることができてもいます。では、相手の攻撃を遅らせた次は? もう一度自分たちがボールを奪うために、あるいはピンチを招かないために、チームとしてファーストディフェンダーを明確に、また入ってくるボールに対してもチャレンジできるようにしていければと思います。その際には、周りの選手のポジショニングの修正も大切になってきます。

自分の内側のコースを閉じる

敵ながらあっぱれですが、14分にあった19コヅのパスについて見てみましょう。新潟はいったん右サイドで、甲府の攻撃を遅らせますが、コヅが前線からフラフラーっとボールに近づくように降りてきました。すると同時に、24曽根田が後ろから前へポジションを移します。コヅから見事なワンタッチパスを背後に通され、24曽根田に渡りピンチを招いてしまいました。

繰り返しですが、いったん攻撃を遅らせた後には、マークを明確に、入ってくるボールに厳しく行くこと。ボールにアタックした選手が空けたスペースを、周囲がカバーしつつ、自分の内側に通るパスコースを閉じ消すこと。この2点ができると、自分の内側を保証しつつ、外側のボールをカットするチャンスが増えます。もし外側にパスが通ったとしても、もう一度ボールに対応できる。しかし、内側を通されてしまうと、ディフェンスは対応が難しく、ノーチャンスに近い状況になってしまいます。

まずは自分の戻るべき場所に

課題を見つめるために、43分の場面も。達さんがクロスを上げ、拾った甲府が反撃をしかける切り替えからです。相手の左サイドからの攻撃に、カウエが上手く対応して時間をかけさせることに成功しましたが、中にパスを入れられ、中央の29バホスに合わなかったものの、右サイドを走り込んできた18道渕に決定的なシュートを放たれました。

Jリーグのゴールハイライトでもよく見られますが、カウンターから逆サイドのスペースは、大きなチャンスになりやすい。逆に守備側は、しっかりと埋めることができるかが大切です。新太が、前半から高い強度を保ちながら、サイドハーフとして攻守に貢献していたのは皆さんご存知だと思います。ただ、あの場面、もう数メートル戻っていれば、ピンチになることは無かったでしょうし、失点していたらもったいなかった。決まりはしませんでしたが、ほんの少しの勝敗を左右するポイントでした。

ハードワークに目を向けて

もちろん、選手も分かってはいるんです。あそこに来たら危ないなっていうポイントが。そして、試合では実際にボールが来てしまう(笑)ことも、僕たちは知っています。だからこそ、最後まで集中力を切らさず、水を漏らさないようにプレーしなければ。危険なエリアをまず埋めてから休みたいですね。

一生懸命ボールの近くでファイトして走ることもハードワークですが、こうしたプレーもれっきとしたハードワーク。皆さんに、そういう部分にも目を向けてもらえたら、見方にも少し広がりが生まれてくるかもしれません。選手のちょっとした動きの努力を、ぜひ見てもらいたいと思います!

細かな修正の先にあるもの

フチさんは常に口酸っぱく、「自分たちからスキを作らないこと」と言っています。これで7戦負けなしの新潟の守備が良くなっているのは、皆さんも感じているはず。であるがゆえに、ピンチのシーンはより目立ち、フォーカスされてしまいます。

でも、これは非常にポジティブなことだと僕は思います。できることが増え、徹底されると、次はさらに細かな修正が待っています。細かな修正というのは、最初は神経を使い、意識しなければ完遂できない難易度の高い作業ですよね。今後、新潟が目標を達成するのは、こういった課題をひとつずつクリアした先にあるんじゃないかと思っています。

良い守備から良い攻撃へ

新太の戻りについて、名指しで指摘してしまったので、彼の素晴らしい場面についても触れさせてください!(笑) 31分、新潟はライン間や隣の選手間の距離が良く、守備の網の中に入ってきたボールを尚紀がカットし、達さんが回収して攻撃に移りました。

この切り替えの瞬間、尚紀は持ち前の走力を活かして達さんからのパスを受け、相手陣内に侵入して中へパス。受けた新太がシュートしました。甲府22小出の好守で、得点こそなりませんでしたが、いい守備から攻撃につながった場面でした。逆サイドからの切り替えの速さや走力、シュートと新太の良さが前面に出たものでした。

押し込まれた後半

試合は後半、甲府にセカンドボールを回収されたり、ウイングバックに新潟陣内深くまで侵入されたりと、押し込まれることが多くなりました。また、前半センターバックを中心に、ほとんど仕事をさせなかった29バホスにボールを持たれ、攻撃の起点を作られてしまいました。GK幸輝くんと両センターバックを中心に、最後までよく踏ん張っていたと思います。

劣勢をはね返すため、途中出場のヨシくんの効果的な動きやボールの関わり、ターレスと貴章さんの強さを活かし、数少ないチャンスを得点につなげようとしていました。無失点で抑えながら、決め切る。77分のターレスのパスからのサチのシュートや、86分の混戦からの貴章さんのシュート。決め切りたかったですね。

可能性が途絶えて思うこと

甲府戦の結果をもって、『1シーズンでのJ1復帰』という可能性が途絶えてしまいました。今年のクラブとしての目標を達成できなかったのは、素直に受け止めなければいけません。選手も、サポーターも、クラブに関わるすべての人たちがそこに向かって役割を果たしたわけですから、それぞれが悔しさを持っていると思います。

そうした中で、この何試合かでチームが見せてくれているパフォーマンスだったり、新潟らしいプレーには本当に感じるものがあるし、「まだまだこのチームに向上できる余地がある」と、一緒になって闘っていきたいと思わせてくれていると思います。残りの5試合を決して無駄にするんじゃなく、もう一回目指さなければいけない目標に対してのいい準備と、シーズンを戦い抜くことで、来季に向かっていければと思います。サポーターの皆さんにも、ぜひ支えてもらいたい、見届けてもらいたいと切に思います。

大事に闘い、つなげていきたい

「2018シーズンが、2019シーズンにつながるのか」。もしかすると、そう思われる方もいるかもしれません。でも、振り返ってみると、今シーズン最初は、「来季につながるんだろうか?」と不安になるような、もったいない試合がいくつかあって、「このまま行ったら、来季はゼロからのスタートになるんじゃないか」とザワつくような思いもあったんですよね。

選手たちは本当に苦しみながら、一生懸命チームでのやるべきこと、フチさんが示したものを、遂行しようと取り組んで、少しずつ結果が出てきました。チームとしても、個人としても、自信のようなものが生まれつつある。仮に選手が入れ替わったとしても、残る選手がゼロではありません。残った選手が、つかんだ自信を抱えて、次は伝えていかなければならないし、こうやって苦しい状況を見守ってきたサポーターも、「自分たちはどう闘っていくのか」の基準をまたひとつ持ったと思います。来季にぜひ継続して、スタジアムの雰囲気や応援を持っていってほしいと思っています。

毎シーズン、選手もスタッフも入れ替わっていきます。決して同じチームが続くということは、どこでもありません。僕はこのチームを大事にしたい。勲さんの引退試合に出ましたが、1試合1試合を大切に、本気で生きてきたからこそ、バラバラになっても、いつか再会する時に心からの笑顔とチームワークがよみがえると思うんですね。あと5試合、大事に戦って、つなげていきたい。そう思います。


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