早川史哉の前を向いて歩こう 第37回・感じ、耐え、タスクを実行し続けられる

2018/11/6
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本当にいい「チーム新潟」になってきている

新潟はここまで8戦負けなし。前節・京都戦はロングボールを駆使する相手への対策、注意点を明確にして臨みましたが、これまでの試合では課題や修正点をあいまいにせず、改善し続けています。その結果、試合を重ねるごとにたくましさを増しているというのが実感です。

僕だけではなく、チームも「まだ良くなる」という実感があるからこそ、ひとつひとつのプレーを大切にしながらも、アグレッシブに自信を持って戦えていると思います。町田戦では勝敗を決するポイントとも言えたハードワークや球際、セカンドボールの回収で主導権を握り、局面でのバトルで相手を上回り続けた結果、非常に見応えのある試合になりました。

3位だった相手に「俺たちはこれだけやれるんだ!」という強い意志を見せてくれました。そして、この町田との一戦が意味するものを感じて、熱く闘っていたのは選手だけじゃない。サポーターの皆さんの気持ちも、応援という形で見ることができて、「本当にいい『チーム新潟』になってきているな!」と感じます。この勢いをもっと出していければと思います。

徹底してサイドバックの背後を狙い続けてきた前半の町田

町田は試合開始から、一貫して尚紀と泰基の背後を狙おうとする意図を持っていました。サイドバックの背後を狙うことで、新潟を押し込み、クリアするにしても自由にはさせないことでセカンドボールを回収。より新潟ゴールに近い位置でプレーする機会を増やそうとしていたのではないでしょうか。

特に尚紀のサイドには徹底してボールを放っているのが印象的でしたね。いまの新潟は右サイドからの迫力ある攻撃がチームのストロングになっています。町田は、新潟の攻撃の良さを消しつつ、彼らの良さを出して試合を優位に進めたかったはずです。

この試合だけ対策をしても上手くはいかなかった

もちろん新潟は町田がどういう狙いを持って試合に挑んでくるか、ある程度把握していたと思います。ただ、相手の攻撃の徹底ぶりに序盤は少し押され気味でした。それでも、ロングボールに対するファーストDFの対応と、その周りの気の利いたカバーリング、セカンドボール回収のためのポジション取りによって、大きなピンチになることなくしのぎ切っていました。尚紀のサイドの攻防は、とても見応えがありました。

僕は、この試合だけ「ロングボールやセカンドの回収に気を付けよう」と対策をしても、上手くいかなかったと思うのです。前述のように、対戦した相手ごとに反省し、現状に目を背けず課題に立ち向かったからこそ、できることが増えている。結果、町田戦もひとつになって戦えていました。前半の町田の狙いは、新潟の好守によって阻止された形となりました。

コンパクトな守備の町田に対して

町田はセカンドボール回収や、相手を押し込むために、選手同士のタテ横の距離感をとてもコンパクトにして戦っていました。必然ボールサイドには人数が多く、そこにボールが入ると彼らの餌食になってしまいます。逆に、密集している逆のサイドにはスペースがあり、新潟はそこを攻撃の糸口にして、利用することができたのではないかと思います。

1点目も左サイドから、スペースを使うために素早くパスを回し、尚紀の良さであるゴール前までボールをはこぶことができました。さらにクロスボールに対して、再び密集しようとする町田DFを、カワくんが冷静な判断でスルーし、新太がゴール。相手の守備の特徴を上手く利用し、自分たちの良さを出して得点した象徴的な場面でした。

健太くんの痺れるロングパスが見られた

サイドを変える方法としてはロングボールも有効です。この方法で、一発で密集地帯を脱することも可能になりますから。そのロングボールを特長にしているのが、皆さんご存知の通りですが健太くん。

最近の試合では、新潟はどちらかと言えば相手の背後を狙い、そこからセカンドを回収して相手に脅威を与えていました。結果、健太くんの痺れるようなロングパスを見る機会が減っていましたが(笑)、この試合では非常にコンパクトな相手に対して、効果的なサイドチェンジを披露。サイドの高い位置を起点に、攻撃を仕掛けることができていたと思います。

新太2ゴール!

さて、この試合は何と言ってもいっても新太の2ゴールでしょう! チームトップスコアラーとして、ゴール前で落ち着きを持ちつつ、勢いよく足を振る。本当に頼もしいですし、チームに必要不可欠な存在です。

この試合でシーズン2ケタ得点を達成。残りの試合でも得点を決め、チームを勝利に導いてほしいですね。また、1点目を見事なスルーでお膳立てしたカワくんも、新太のゴールがかなりいい刺激になっているのではないでしょうか。2人は仲が良いですが、いいライバルとして、これからもチームを引っ張っていってほしいです。どちらがチーム最多得点者になるか非常に楽しみです!

感じ、耐え、タスクを実行し続けられる

僕が興味深かったのは、後半の町田が前半とは違う戦い方を見せたことです。前半のようにロングボールを放ってくるのではなく、サイドを起点として攻めに出てきました。しかし、サイドでの攻防に自信がある新潟には、町田の良さが逆に出にくくなってしまったように感じたんです。

事実、背後を狙い続けた前半は尚紀を押し込めていましたが、後半はイキイキとサイドを駆け回っていました。いまの新潟は相手の狙いを感じ、焦れることなく耐え、自分たちのリズムになるまでタスクを実行し続けられる忍耐力のようなものがあると思います。だから、自分たちからは崩れないし、逆に相手が我慢しきれず動くことでミスをし、展開が変わっているのではと思います。

ブレないメンタリティが、サポーターからの信頼を集める

「忍耐力」というか、相手が崩れるのを待つしたたかさを持つチームって、最後には勝利を持って行きます。たとえば2017シーズンの新潟対鹿島。新潟が2点リードしながら、結局逆転されましたが、ブレないメンタリティがいかに重要なのか、を僕は痛感しました。

戦っているステージこそ違いますが、今の新潟にも、そういったたくましさを感じます。それが分かるからこそ、サポーターの皆さんも、チームを信頼して一緒に闘うことができているのではないかと思います。いかがでしょうか?

次節はロアッソ熊本戦

次節、ビッグスワンで対戦するのは、アウェイでは4月に戦ったロアッソ熊本です。本当に悔しい負けを喫しましたよね。あの時は3バックで戦い、特長を持った熊本のウイングバックの良さを出させないように、というイメージを持って戦っていたと思います。ただ、チームとしてのチグハグさ、共通認識がブレたままに相手を抑えようとして、相手の思うようにやられてしまいました。

いまのチームは違うはず。サイドを強みとするチームに、現在の新潟がどうやれるのかもあるし、苦手意識を払しょくするのを最後のまとめとしてシーズンの成長を見せたいと思います。相手は死にもの狂いで来るはず。16年に一緒にやったキタジさんの、「あきらめない。ひとつひとつを大切にする」という姿勢がチームには落とし込まれていると思います。下のチームと思うのではなく、自分たちの良さを今まで通りやれれば、結果はついてくると思います。



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