早川史哉の前を向いて歩こう 第39回・チームがジュフンを助け、ジュフンもチームを助けてくれた

2018/11/21
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苦しい時間が続いても引き分けで終えられたのは成長
長かったJ2リーグもいよいよ大詰め。アウェイ最終戦となった徳島戦ですが、ここで勝利できれば順位を逆転できるチャンスもあっただけに、チームとしては高いモチベーションで臨んだ一戦でした。一方、徳島も6連敗という苦しい状況で、彼らにとってはホーム最終戦。なみなみならぬ想いで戦っていたのではないでしょうか。新潟はメンバーを熊本戦から4人入れ替え、コンディションの良い選手を起用しました。

前回の対戦から分かるように、徳島はボールを保持してゲームを支配することを志向しています。そして、今節はその通りにボールを保持されて自陣に押し込まれる時間が多かったですね。改めて、どういう部分を意識すれば、自分たちの良さを出せるかがハッキリしたのではないかと思います。

ただ、どんなに苦しい時間が続いても、崩れずに引き分けで試合を終えられたのは、チームとしての成長を感じさせてくれました。僕は最終節・ホームでの山口戦で、シーズンの集大成が見られるのが楽しみになりました。それでは徳島戦を振り返りましょう。

前半19分の守備について

先ほども言ったように、試合全体ではボールを保持され、徳島の良さが多く出ましたが、何回か前線からいいハメ方をして相手にロングボールを使わせ、そのボールを先に触れていた場面はありました。たとえば前半19分。相手DFラインの3枚でボールを回している時に、新潟は徳島前線の選手をマークしたり、コースを消しながら対応。これによって後ろが保障されてから、左の15井筒へサチがタイミングよく正面からアプローチに行き、守備のスイッチを入れました。

相手は右へボールを回しましたが、新太が上手く左に戻されないよう限定していき、近くの選手が徳島の攻撃の起点となる8岩尾などのパスコースを消し、長いパスを選択せざるを得ない状況を作り出しました。

整った守備から、相手の自由を奪いに行く

細かくパスをつなぎながら攻撃を組み立てる相手に、ハイプレッシャーをかけてボールを奪いに行くのは迫力十分です。でも、そうすると自らスペースを作ってしまい、そこを上手く利用されてピンチを招く危険もあるんですよね。特に徳島はこの試合で示したように、ワンタッチやタテパスを使いながらプレッシャーをかいくぐれます。

19分のように守備が整っている時には、チーム全体でタイミングを合わせ、こちらから相手の自由を奪いに行くことも必要になります。そこから上手くボールを回収できれば、相手の陣形が崩れている状況で攻撃をスタートできます。

新潟の良さである鋭いアプローチからのボール奪取を、いつ発動するか。チームで共有できれば、新潟のストロングのひとつであるカウンターをいい状況で発揮できます。そのためにも、選手同士の距離感が、相手にパスをつながれ、ボールを動かされても、常に正しいポジションを徹底できるかが大切だと思います。

奪ったボールは大事なもの

さらに言えば、前述のように限定をしつつ奪ったボールを鋭いカウンターにつなげたいです。重要なのは、手(足?)にしたボールを、正確に落ち着いて味方に渡すこと。この試合、奪ったボールを味方に付ける際に、少しズレたり、長いボールを蹴ったりとアバウトなパスが多く、徳島に奪い返すチャンスを与えてしまいました。

良かったのは79分。50ウタカを2人で囲んでボールを奪い、パスをしっかり味方に付け、複数人が徳島ペナルティエリアに勢いよく侵入しました。カワくんがミドルシュートを選択しましたが、新潟のカウンターを発動できた数少ない場面でした。守備時のいい距離感が、そのまま攻撃のいい距離感にも転換した象徴的なプレーでしたね。このように奪ったボールをつなぎ、はこぶことで、相手に支配する時間ももう少し減らせたのではないかと思います。

劣勢からいかに脱出するか

どのリーグ、どのカテゴリーでも、90分片方が圧倒することはないはず。試合中に耐えなければいけない時間は訪れます。それは受け入れなければならない。でも、チームとしてそこからいかに脱出するか、その術を共有・理解することも、勝利のためには必要になります。

特に徳島戦の後半で印象的だったのは、新潟がクリアやロングボールをFWの近くに蹴ってしまっていたこと。直近の試合で良かったのは、相手を引っくり返したり、押し込むために相手の背後やコーナー付近にボールをはこべていました。今回も、前半に関しては深い位置まで到達していましたね。セカンドを回収して二次攻撃につなげたり、スローインやコーナーキックから攻撃の糸口を見出していました。

相手に楽な選択をしていなかったか

この日はターレスが先発しましたが、彼は高さや体の強さ、キープ力を活かして大きく貢献してくれたと思います。多少アバウトでもキープしてマイボールにしたり、相手DFがはね返すのを防ぐ献身性を見せてくれました。対照的に後半の中盤以降は身長がそれほど高くない新太が最前線に。その状況下で、新太を目がけてロングボールを放ってしまい、徳島は難なくボールを奪回していました。

同じロングボールでも、サイドの深いエリアを狙うことで、相手をいったん後ろ向きにならざるを得ない状況にできます。自分たちで徳島に楽な選択を続けてしまったことが、試合を難しくしてしまった要因だと感じています。

チームがジュフンを助け、ジュフンもチームを助けてくれた

さて、この試合、数々の危険な場面を防いだのはジュフンでした。チーム随一の対人能力を持っているのは周知ですが、リズミカルにワンタッチパスを駆使してズレを作る徳島に対し、ボールウォッチャーにならず、常にゴールを守ってくれていました。僕は今シーズン、なかなかジュフンの特長である身体能力を活かした対人の強さをチームに還元させてあげられなかったなと感じています。

彼の良さを出すためには、チームとしてパスコースを限定したり、躊躇なく持ち味を発揮できるような周囲のサポートが必要不可欠。だから、最近の新潟の守備組織なら、本来の実力を出しやすかったはずです。久しぶりのスタメン起用は難しかったでしょうが、チームがジュフンを助け、ジュフンもチームを助けてくれた。改めて個人とチーム、双方の良さを出せる状況を作り出す重要性を認識しました。71分の負傷交代は、試合状況を変えたかった新潟にとっては痛かったですね。

ただ、途中出場の柳もピッチに入った瞬間から集中して、無失点に貢献してくれました。DFの選手の途中出場って、攻撃の選手よりも難しいものがあると思うんです。ましてケガから復帰して、早々の出場ならばなおさらのこと。そうした中で堂々としたプレーを見せてくれました。柳の持ち前の図太いメンタルを見たような気がします(笑)。

細部にまでこだわり続けたい

決定的な場面をほぼ作り出せなかったのは、素直に受け入れなければなりませんし、とても悔しい。ただ、来季に持ち越した我々の最大目標である「J1昇格」を達成するには、今回のような苦しい試合を引き分けにしたり、耐えて耐えてワンチャンスをモノにして勝利したりと、勝点を積み重ねる忍耐力が求められます。

日々の練習からさまざまなチャレンジをして、精度を上げていきたいですね。「勝負の神様は細部に宿る」じゃありませんが、細部にまでこだわり続ける精神的な強さも高めていきたいですね。

ラスト1試合。いつもと変わらぬ熱く激しい応援を!

2018シーズンはラスト1試合。終盤、チームは試合ごとに成長した姿を見せてくれています。今シーズン最後のホームゲームを、内容、結果ともに追求して、いい終わり方ができればいい。11月になり、新潟も冬に近づいてきていますが、ぜひビッグスワンでいつもと変わらぬ熱く激しい応援をチームに送っていただければと思います!

早川的一週間。病院訪問を実施

先週は念願だった新潟大学病院小児病棟と、新潟県立がんセンター病院での病院内ビューイングに訪問しました。新大病院は僕自身お世話になった病院だし、たまたま小児病棟の先生と知り合う機会をいただいて、実現することができました。行って良かった。僕が何かを与えるというより、色々なことを感じさせられて、「まだまだがんばらないと」と思わせてもらったと思います。

僕はとにかく笑顔で、似たような病気を患ったけれど、「また笑顔で生活ができているよ」ということを見てもらおうと。僕の活動を見て、子どもたちが「がんばろう」と思ってくれればいいし、「若いお兄さんが来たな!」と楽しく感じてもらえるだけでもいい。それだけで価値があると思っていました。

病院内ビューイングはボランティアの人たちや、病院のスタッフ・関係者の方々が一生懸命で、アルビレックスの試合を患者さんと見て声を上げたりされていました。『スタジアムとはまた違う優しさがあるな』と、いい雰囲気だったと思います。アグレッシブな新潟の試合も、また見てもらいたいですね。

契約凍結解除を発表して感じたこと

そして、昨日12日は、クラブから選手契約凍結解除の発表をしてもらいました。「リハビリをスタートしました」といったお知らせはしているので、『それぐらいの反応かな』と思っていたら、はるかに大きな反響やコメントをいただいて。全国、たくさんの方々に支えていただいたし、応援していただいていたんだな、と改めて感じました。

「もう一度、ここからがスタートだな」と身が引き締まる思いです。11月17日山口戦はEゲート前広場に行ったり、色々な交流ができます。みんなで楽しんで、盛り上がって、勝利を手にしたいと思います。


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