柳下正明監督 2015シーズン総括会見

2015/11/25
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いつもアルビレックス新潟に温かいご声援をいただきまして、誠にありがとうございます。アルビレックス新潟は本日11月25日(水)、デンカビッグスワンスタジアムで柳下正明監督の2015シーズン総括会見を実施しました。

柳下監督は冒頭、2015シーズンについて総括。以後は報道各社の質問に対して、ひとつひとつ丁寧に答えていました。柳下監督の挨拶、また報道各社との質疑応答について全文を以下にご紹介させていただきます。

【柳下正明監督 挨拶・シーズン総括】
2012年6月から今シーズンまで3年半、色々と協力をいただき、本当に楽しくサッカーができました。ありがとうございました。もちろん苦しい時期もあったし、辛い時もありましたが、それをひっくるめても楽しくやれました。

これからはしばらくゆっくり休んで、まだまだパワーがある自分ですので、次の準備をしながら待ちたいと思っています。

あとは色々と質問等があると聞いていますので、お答えしていきたいと思います。本当にありがとうございました。


【以下は質疑応答】
――シーズンが終わって少し時間が経ったが、いまどんな心境か。

最終節の翌日も聖籠で全体ミーティングがあって、昨日は一部のスタッフだけですが食事会がありました。まだ『終わったな』という感じはいっさいなくて、昨日も別れる時は「またね」と言って別れました。

おそらく1月中旬くらいまでは普通なんじゃないかなと思います。普通のオフシーズンを送っているんじゃないかなと。それ以降、仕事がなかったらちょっと焦っているかもしれないけれど(笑)。今は本当にこれで新潟の監督が終わって、フリーになるんだなという感じはまだないですね。


――この3年半で一番いい意味で印象に残っている試合やシーン、逆に試練だったなと思うシーン、それぞれを挙げていただけると。

たくさんありますけれど、印象に残っているのは2012年の33節ですね。アウェイで仙台とやって1-0で勝ったゲームは忘れられないものだと思います。すべて内容を覚えているわけではないですが、場面や終わった瞬間など。あのゲームを勝たなければ、J1に残ることは無理でした。それは印象に残っています。

試練というのは結構たくさんあります。今シーズンもたくさんある。なぜかと言うと、今シーズンを振り返ってみて、また話があとで出てくると思いますが、内容的にも非常にチャンスを数多く作っている、ミスも少ない。でも、勝点0というゲームが非常に多かったので。そういうのは感じています。


――改めて今シーズンを振り返って、J1リーグやナビスコカップなどについて。

これはずっと言っていることですが、自分たちからアクションを起こして、攻撃だったらみんなでボールを運んでシュート、フィニッシュまで持って行ける回数というのは増えています。それはどの相手とやってもです。

守備でも、アクションを起こして相手のボールを奪う回数は増えている。あるいは相手のミスを誘う。以前は相手のミスを待ってということが結構あったのですが、こっちが主導権を握れるようになっている。ただ、チャンスは作っていても得点できずに、少ないピンチで失点をしている。我々からすると「えっ」というプレーでゲームを落としている。その現実が非常に多くて、結果的にこういう15位という順位でシーズンを終えることになってしまったと感じています。

ナビスコに関しては非常に集中してやってくれて、残り何試合かは相性ではないですが、そういうものもあって予選リーグ戦を突破することができた。浦和との5-0というゲームは、もしアウェイだったらあそこまで行かなかっただろうと。浦和の選手は2点3点を失点して、完全に切れてしまったので、得点差を付けることができました。

ガンバに対しては、少し経験不足というのがあった。アクションを起こしていこうというのが、逆に仇になってしまったように思います。アクションというのはボールを奪うということですね。ゴールを守るということに関して、まだまだ精度を上げないといけないとは感じました。「0-0でもいいんだよ」と、ボールを奪うんじゃなく、ゴールを守ることにもっと重点を置いてもいいと思ったのですが、そういうことはしなかったので、これから来シーズン以降、勝ち切るためにそういうものも必要になるかなと感じています。


――先ほど「えっ」というプレーで失点をしてしまったという話があったが、そういったこと以外に失点数が増えた要因をどう捉えているか。

いつも言っていることですが、失点をするのには1回のミスで失点することはあまりない。ミスが2つ3つ続いて、失点をしています。ひとりがミスをした後にカバーをすることができればいいのですが、そういうことがなかなかチームとしてできていなかった。

個人の守備に関しては、教えられることと、なかなか教えられないことがあります。教えられるというのは、原則的なことで、「正しいポジションをはこうだよ」であったり。なかなか教えられないのは、危険察知能力。どこが一番危ないか。『ここではやられてもいい、でもここではやられてはいけない、失点する』ということです。そういうところは、ある程度伝えることはできますが、実際にゲームになったら相手も変わり、攻撃も変わってきます。それに対応するのが必要になってきて、危ないところをなかなか察知することができない。

たとえば闘莉王はそういうものは非常に高いものを持っている。あるいはユファンは、そういうゴールを守るということに関しては持っている。そのあたり、ゴール前での危険察知能力は、持っていなければいけないが、難しいところではあります。


――今シーズンで監督は退かれるが、こういうことがチームとして高められればというものが今後にあればお聞きしたい。

攻撃、守備に関してもゴール前、ペナルティエリアですよね、簡単に言ってしまえば。そこまではボールを運ぶことができるし、守備だったらそこが非常に大事になってくる。私が守備で選手に伝えるのは、「シュートというのは人が撃つものだ。スペースはシュートを撃たない」ということです。だから人をマークしなさいというくらいしか言わないわけです。

そこを察知してポジションを取れれば、そんなに失点することはない。ゴール前、攻撃も守備もゴール前の精度を高めること。一番簡単なのは、そういう能力を持っている選手がいればその課題はクリアします。


――これから特に期待する選手を挙げるとすれば。

3年半一緒にいた選手もいれば、1年あるいは半年という選手もいます。それぞれが、まったく何も変わっていないという選手はいません。非常に変わった選手もいます。だから、みんなに「どんなプレーができるようになったのかな」という期待があります。変化する大きさという点で言えば、若い選手の方が、変化するものは大きい。そういう若い選手に関しては、こっちから見ていても楽しみですね。(敢えて名前を挙げるとすると?)1人2人の名前は挙げない方がいいでしょう。


――磐田、札幌でも監督を務めたが、新潟での3年半は監督にどういうものだったか。

サッカー的に非常に変化のあった3年半だったと思います。それぞれ札幌、あるいは磐田でも3年やりましたが、ここまで大きくサッカー的なものが変わったというのは新潟が初めてだと。すごく変わったなと感じています。先ほどから言っている、自分たちから主導権を握ってゲームを進めることができるようになった。そういうものが非常に長くなっている。それはチャンピオンチームに対しても十分対応することができる。私自身にとってもすごく自信になりましたし、いい経験になったなと思います。


――指導をするスタイル、接し方というのも変わられたか?

そんなに変わっていないと思います。基本的には足りないことを指摘する。選手はプロなので、たとえば100を持っていても、0があってはプロとしてなかなか上に行くことはできない。その0を20、30、あるいは50と改善していけば、ゲームに出るチャンスは本当に増えていく。選手にとっては嫌かもしれないけれど、そういうところを(言う)。それは変わらないです。


――3年半、新潟での生活については楽しまれたことはあったか。食べ物など。

正直、2012年のシーズンが終わるまでは、ずっとサッカーのことばかりでした。あまり外に出なかったんじゃないかな。

ただ、それ以降はお米だけじゃなくて野菜、果物もすごく美味しく感じていたし、新潟に来てからよく日本酒をいただくようになって(笑)。日本酒を飲めるようになりました。美味しい店も紹介してもらって、そういうところに行くようにもなったし、家族が来ればいくつか温泉に行って一泊して戻ってくるということもしていたので。すごくグラウンド以外のところではリラックスできたなと思います。


――これで新潟を離れるにあたって、もう一度食べておこうというものがあれば。

うちのカミさんも帰る前にもう一度新潟に来ることになっているのですが(笑)、食事はしていきます。お寿司が非常に気に入っていまして、来た時は必ずお寿司に行っています。


――新潟での3年半でもっとも成長した選手、もっとも印象に残った選手がいれば。

やっぱりブラジル人なんですが、レオシルバは非常に変わったなと思います。ブラジル人だから元々上手いだろうと皆さん思っているかもしれませんが、一番初めに来た時には『下手だな』と。その下手というのは、自分の前にスペースがない時も強引に行ってしまう。そしてボールを失う。あるいは30mくらいのミドルパスの精度がすごく低かった。今年あたりはFKでも点数を取っていますが、キックに関しては下手だなと思っていました。

ただ、その一番初めに言った無理に侵入していくことに関しては、すぐに理解してくれて変わりました。キックについても、トレーニングを重ねることでどんどん精度が上がっていった。実はドゥンガもそうだったんですよね。FKはあまり上手くなかったけれど、日本で『もっと上手くなりたい』『強くなりたい』という姿勢を見せていた。

もちろん、悪い時には、そういう悪いところが出てしまうのですが、すごく変わっていると思います。あとは日本人に自分から話しかけて、自分から日本人の輪に入っていく。チームをひとつにしようというものは年々見られるようになっています。だから大井と2人をキャプテンにしたのですが、そういうリーダーシップも、どんどん身に付けていったのではないかと思います。


――監督は「変われるか、変わろうとするか」とよく選手たちに話しているが、ご自身が変わったなと思う部分があればお聞きしたい。

どうだろう、これでも少し丸くなったのかな(笑)。改めて継続する、いいものは続けていけば必ず身になるということが、この3年半新潟でやって分かりました。選手によく言っていますが、成長するためには変わらなければいけない。難しいですが、そうでないと進歩がない。

もちろん、いいものは続けていく。でも、変えなければいけないことをそのままにしておくと、逆に悪くなっていく。同じであれば、周りはどんどん成長していくわけですから、下がってしまう。よく言う、満足したら終わりだということは自分も感じています。毎年、選手に少しずつ違うことを要求して、変化させてきたつもりではあります。


――今シーズンは得点数が伸びているが、その要因は。

攻撃に関しては選手の成長が一番だと思います。まだまだ悪い時は簡単にボールを失ってゴール前にボールを運べませんが、ミスは減ってゴール前までボールを運べるようになっている。そこが一番です。

先ほどペナルティエリア内での精度をもっと高めないといけないと言いましたが、昨年よりもその精度は上がっているのかなと。だからビッグチャンスを作ることができる。ペナルティエリアではそんなにスペースはありませんが、そのスペースがない中でも落ち着いて侵入することができるようになっている。それが昨年に比べて点数が増えた。だから、もっとクロスの精度が上がれば、もっと点数が取れたと思います。


――改めて、サポーターの皆さんにメッセージをお願いしたい。

毎試合毎試合、本当にホームでもアウェイでも相手の声援よりも大きな声援を感じてやれました。それは、選手もそうですし、我々にとってもすごくありがたいことだし、パワーになっていたと思います。

本当に新潟の人たちは温かみがあるということを感じて3年半やれました。これは一生忘れないと思います。もし、また違う相手で新潟にやることがあったら、ちょっと避けたいなと(笑)。ここの雰囲気はやっぱり避けたいと感じます。練習も毎日見て声援を送ってくれた人たちもいましたし、負け続けている時でも、スタジアムの前で声援をくれたり、非常に力をくれ、勇気を与えてくれました。本当にありがとうございました。


――新潟県出身の4選手について。今シーズン試合に絡んだり、成長したように感じるが、彼らの今後について。

彼らはフィジカル的なものはプロで十分通用するものを持っています。これも選手に言っているのですが、「そういういい体を動かすのは心だ」と。心が優しい、弱い、物足りないものがある。心をもっと強くしてできれば、もっといいプレーができる。

闘いですから。優しさだけじゃ乗り越えられないという気がします。もっと強い気持ちを持ってやれるようになってほしいと思います。


――ビッグスワンで思い出になったこと、印象に残ったシーンがあれば。

ゴールが入った瞬間は、自分では分からないけれど、相当喜んでいるんじゃないかな(笑)。一番初めのエスパルスとのゲームも残っていますし。ゴールした瞬間、勝った瞬間は実はすごく喜んでいます。そういうことを感じたいからサッカーをやっていると思います。


――今シーズンは取材するとおとなしさと、内に秘めた熱さも持った個性的なチームではなかったかと感じた。監督は今シーズンのチームをどんな集団と考えていたか。

個性的かどうかは分からないけれど、おとなしいというのはずっと感じています。その内に秘めていて、ゲームになったら出す選手と、なかなか出せない選手がいました。もっともっと表に出す選手がいてもいいんじゃないかと感じています。レオシルバや小泉慶だったり。

ああいう選手は相手に嫌がられるので、そういうことも必要だと。普段はおとなしくてもいいけれど、ピッチに立った時には内に秘めているのではなく、表に出せるようになれば、本当に相手にとって嫌なチームになると思います。


――「楽しかった」という言葉が今日も多く出てきたが、チーム、選手色々な要因があると思うが、「楽しかった」という言葉が出てくる要因は。

アルビのスタイルを変えずに、自分のサッカー観、サッカースタイルをピッチで選手に表現してもらえればということを考えてきました。それを選手たちも表現できるようになったし、そういうサッカーをサポーターの人たちも受け入れて、応援してくれるようになっているのを感じていた。いいゲームの時は、そういうものが見えていたので、『これでいいな』ということを感じていました。楽しくやれていました。

よく知っている人からは、「顔が変わってきた、変わっている。楽しそうだね」と言われたことがあって。それが自然に出ていたのかな。もちろん今シーズンは苦しい戦いだったので、毎日はそうではなかったですが、自分の考えているサッカーができていました。


――3年半、チームを育ててきたが、今後のチームやクラブに対しては。

まずはしっかり自分自身を見つめ直して、何ができていて何ができていないのかを分かって欲しい。選手だけじゃなくて、クラブも。そうしたら、おのずと何を変えていかなければいけないのかが見える。ずっと今のままでいいと続けていけば、下がっていくはずだから。そのあたりは成長しようと変えていくこと。それを見極めてやることが大事だと思います。

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