[サンプル] アルビの鼓動

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■GKコーチの条件
――多くの失点が、GKのポジショニングのまずさから生まれているということは、見方を変えれば、ほとんどのシュートはポジショニングをしっかり取れば防げるということでしょうか。

「大事なのは、これは確率の話だ、ということです。今、私は自分の経験から得た正しいポジションの取り方というものを、新潟のGKたちに伝えています。
彼らのポジションが良ければ良いほど、シュートを止める確率は高まります。逆に悪いポジションを取ってしまえば、相手FWがシュートミスすることでしか止めるのは難しくなる。もしも相手のFWが賢ければ、コースを開ければ簡単に決められてしまいますよ。

ですがポジションの取り方、その上での足や手の出し方次第で、シュートコースを消すことはできるんです。本当に一歩、いや半歩の世界です。それでシュートを止められるかどうかが決まってしまう。世界のトップクラスのGKは、良いポジションを取り、さらにそこから素早くリアクションできる。だから、すごいのです」

――ポジショニングに加えて、リアクションも必要なんですね。

「そう。ポジションだけでも足りないし、リアクションだけでもダメ。どちらも大切です。だから簡単じゃないんです。ポジショニングの取り方、足の動かしか方、手の出し方。トータルで、やっと良いセーブができる。いくら正しいポジションの取り方、構え方をしても、両足でジャンプしてしまえば、片足でジャンプするよりもリアクションが遅れてしまいます。

今、新潟のGKたちは、キャンプの中で毎日、そういったことを身に付くまで何度も何度も繰り返しやっているところです。毎日、毎日、私はシュートを蹴り続けます。GKたちの反応が良くなったと感じたら、さらに難しいボールを蹴ります。良いボールを蹴ることができないと、GKコーチは仕事にならない。それが私の考えです」
――キャンプここまでのGK練習では、クロスへの対応やフィードを、まだほとんどやっていまんね。

「高知ではフィールドを2面使えましたから、フィールドプレーヤーと別のときに少しずつ始めてはいます。ただ、キャンプはフィジカル面も含め、GKとしてシーズンを戦うための土台をつくることが第一です。

もちろん、クロス対応も大切です。ですが、普通にシュートをキャッチできなかったり、しっかりジャンプできないGKが、クロスをうまくキャッチしようとしても難しいですよね。やるべきことは、まだまだたくさんある。

しかも、それらを一度に解決することはできません。1年かでどうにかするという話ではなく、2年、3年……長い時間をかけて改善していくものです。高知キャンプだけでも、御前崎キャンプだけでもない。私がGKコーチとして新潟にいる間は、“これで十分”ということはないんです」

(つづく)


【プロフィール】
ジェルソン・シルバ・オルネラス。1971年12月9日生まれ、ブラジル・サンパウロ州出身。97年、25歳でサントス下部組織のGKコーチに就任し、99年に来日。日本文理大学のGKコーチとなる。翌年、新潟のGKコーチとなり、野澤洋輔(現新潟S)、北野貴之(現鳥取)、東口順昭(現G大阪)らを育てる。その後、G大阪(2010~12年)、名古屋(14~16年)を経て、今シーズン、10年ぶりに新潟に復帰。その比類なき強烈な右足のキック力をフルに生かした情熱的な指導で、新潟のGK陣を再び鍛え上げることが期待されている。