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【明治安田J1 2nd第14節ジュビロ磐田戦】~前へ!!~


■絶対にやってやる

片渕新監督は、磐田との初陣に4-4-2という新潟が慣れ親しんだシステムで臨んだ。守備も攻撃もアグレッシブに。ボールを、そしてゴールを奪うために、前へ、前へ。選手たちのエンジンは、キックオフと同時に全開となった。


磐田は予想通り、ジェイにボールを集めて圧力を掛けてくる。11分にはジェイのポストプレーから川辺が持ち込んでシュート。しかしこれは守田が落ち着いて処理した。新潟も負けてはいない。直後の12分、ラファと2トップを組む指宿のポストプレーからマサルがシュート。そこからラファが押し込むが、これは惜しくもオフサイドとなった。


17分にはレオが持ち上がって磐田を押し込み、タメを作っておいて裕紀に横パス。思い切ったミドルシュートは枠こそとらえなかったが、新潟らしいアグレッシブをピッチの全員がプレーで体現しようと奮闘する。


その気迫と勢いが実を結んだのが22分。指宿のスルーパスから抜け出したマサルを相手CB森下がたまらず倒し、PKに。これをレオが冷静に左に決め、先制に成功する。ゴール裏のサポーターを盛り上げ、ベンチから出てきた選手、スタッフとタッチするレオ。一丸となって勝ち点をつかみ取る気持ちが表れた。


だが、ここからジェイにボールを集め、アダイウトン、川辺が背後を狙うプレーに苦しむ時間になる。ジェイに厳しく行くところでファウルを取られる場面も増え、38分の失点もジェイを倒したセットプレーから。本人にヘディングシュートを決められ、振り出しに戻される。


「失点は自分のミス。でも前半残り時間も少なかったので、引きずらないことを心掛けた」というのは守田の言葉。それは他の選手も同じだった。ラファが、その時のピッチの中の雰囲気を「失点しても、みんなが『ここから絶対にやってやる』という目をしていた」と語ってくれたが、前へ、勝利へ、チームの足取りは少しも力強さを失わなかった。

■最後に待っていた歓喜

前への気持ちだけではない。冷静なピッチの中での修正が、後半、流れをたぐり寄せる確固としたベースとなっていく。


それまで苦しんでいたジェイへのロングボールに対して、途中からCBではなく、ボランチの小林が競るように変える。それによってディフェンスラインが落ち着いてカバーする態勢を整えられ、攻め返す力を後半もしっかり保つことができた。


負ければ新潟との年間勝ち点差が2となる磐田も攻勢を強め、その結果、オープンなカウンターの応酬となった。オープンな展開になれば、カウンターを受けるリスクは高まるが、新潟は一歩も引くことなく前へ、前へと走り抜いた。交代出場の武蔵、山崎、そして野津田も、チームをしっかりと再活性化させる。


79分には、舞行龍の冷静な縦パスから山崎が速攻を仕掛け、その直後にはアダイウトンの突進を松原、守田、西村が体を張って食い止める。83分、84分、86分と武蔵が決定機を迎える。だが、ネットを揺さぶることができない。


激しい攻防が繰り広げられながら、刻々と時間が過ぎていく。このまま、ドローで終わるのか――。だが歓喜は最後に待っていた。小林からのパスを左サイドで受けた武蔵が、無心で左足のクロスを上げる。相手DFから離れるように膨らんだ山崎が飛び、そして頭でねじ込んだ。


劇的な勝利を収め、会見に臨んだ片渕新監督は、意外なほどに冷静だった。というのも1stステージ第15節、ビッグスワンで大宮に1-0で勝利したときのことだ。10試合ぶりの勝利を、当時はコーチでベンチに入ることのなかった片渕監督はスタンドの記者席から見届けた。それは、ユース時代の教え子である早川史哉が急性白血病であると発表されてから、初めて迎えるゲームでもあった。メディアが慌ただしく取材エリアへと向かい、誰もいなくなった記者席にずっと座っていた片渕コーチに握手を求めに行くと、フチさんは机に両肘を付き、両手のこぶしで溢れてくる熱いものをぬぐっていたのだ。


熱い、熱いものを内に秘めた新監督は、今日の会見ではすでに「ここから」に切り替えていた。コーチングスタッフの一人として、ここまで築いてきたことは間違ってはいないという信念があり、だからこそ悔しさもある。新潟らしく、アグレッシブに。チームは力強く、再スタートを切った。