【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第207回

2014/4/17
 「笹だんゴール発売」

 J1第6節、新潟×横浜FM。
 試合前日、FMポート9時台の「アルビフリーク」を聴いてたら、コーナー終わりに立石勇生さんがすごいことを言った。アルビレックス新潟オリジナル笹だんご「笹だんゴール!」発売。マジかそれは。あわててクラブ公式HPで確認する。すごい。笹をむいて出現する(フツーは緑の)だんご部分がオレンジ色だ。これは「だんごであってもオレンジに染め上げてみせる」というクラブ意思か。はたまた「J1のだんごレースを先んじて制してみせる」(確かに他クラブはまだ公式だんごの制作に踏み切っていないので、このレースはリードしている)という決意表明か。

 都合がつかず、自宅でTV観戦を余儀なくされた横浜FM戦、まさか「笹だんゴール!」がセットされてるとは思いも寄らなかった。何とNPO法人笹団子研究会、そしてモモタローでお馴じみ株式会社セイヒョーが開発協力している。限定2000袋(1袋2個入り)ということだが、早々に売り切れるに違いない。これは「ゴールにも笹だんゴールにも飢えている」サポーターの心理というべきだろう。

 あぁ、発売日にゲットして、「むむ、笹だんゴールの匂いがしてきたよ~!」とかヒャアヒャア言ってはしゃぎたい。あ、ちなみにこの4月から「radiko.jpプレミアム」(民放ラジオのネット配信が月額350円でエリアフリー化!)が始まったから、僕も天下晴れて自宅でFMポートを楽しんでいるのだった。今後、スマホひとつあればFMポートやBSNの試合中継が日本全国どこからでも聴けることになった。理論的には沖縄県恩納村のかりゆしビーチで生中継を聴き、遠く笹だんゴールに思いをはせる(?)のだって可能だ。県外在住サポーターには大朗報といえるだろう。

 で、試合当日はもうひとつ行けばよかったなぁという情報が飛び込んでくる。元『週刊サッカーマガジン』編集長の平澤大輔さんが今季初めてビッグスワンに来ているとLINEメッセージが入った。平澤さんは現在、ベースボールマガジン社新潟支社(南魚沼市)に単身赴任中で、そんな人材が県内にいるのに遊ばせとく道理はないと思って、まず2月「にいがたサッカームービーウィーク」(シネ・ウインド)のイベントゲストに来てもらった。で、そこから新潟日報に隔週連載コラムを持ってもらうところまでトントン拍子に話が進んだのだった。

 もう何だよ、横浜FM戦行くなら先に言っといてくれよ~。まぁ、さすがに平澤さんはスタジアム慣れしてるから案内いらないだろうけど、多少なら役に立てたよ。とりあえず「うわ、残念。僕は東京なんです。今度、ご一緒しましょう」「レオ・シルバすごいですよ。お楽しみに!」と返信しておく。

 試合。今週もまず結果から申し上げよう。リーグ戦2試合続けてのスコアレスドローだ。じゃ、ネガティブな試合内容かというと(2試合続けて)ぜんぜんそんなことはない。消し合う内容ではなく、互いに持ち味が出ていた。また横浜FMの中村俊輔、新潟のレオ・シルバというスーパーな存在がキャラ立ちして、その魅力を存分に示した。

 だから、非常に楽しい試合だったと思う。ボクシングに例えれば「両者にKOチャンスがあり、たまたま紙一重でフィニッシュブローをかわした試合」という感じじゃないか。前半は新潟優勢、後半は横浜FMに分があった。それはセカンドボールを拾って、分厚い波状攻撃を仕掛けた時間帯が前半、後半のどちらだったかという意味だ。実際には劣勢からショートカウンター炸裂という展開もある(横浜FM側からするとセットプレー1発で形勢逆転がある)から、フィニッシュブローがいつ決まるかは一概には言えない。

 興趣が尽きないのはこの試合が両軍、ゲームプラン通りだったのではないかというところだ。横浜FMはおそらく「前半は相手に(ボールを)持たせてガマン、後半勝負」というイメージだったと思う。じゃ、新潟は余裕で対応されていたのか。ここだねぇ。僕は横浜FM側の主観としては「余裕で対応中」だった気がするんだよ。でも、現実にはやられそうになってた。

 一方、新潟だよ。自在型のサッカー「前に出て奪う→自分たちで組み立てる→攻め切る」がイメージだよね。新潟は守備意識が他チームとはっきり違う。ブロックつくって待ったりしないんだ。がんがん前に出る。あとマンツーで責任を持つ。このスタイルはかなり形になってたと思う。セレッソ相手にもマリノス相手にもやれるんだって手応えはつかめた。

 問題は「マリノス相手にもやれる」のクォリティでしょう。まぁ、読者も今シーズンの新潟は面白いと感じておられるだろう。そしてたぶん「セレッソ相手にもやれる」「マリノス相手にもやれる」のところまでは同意していただけると思う。で、同時に何か壁のようなものが立ちふさがってる感覚も共有しているんじゃないかなぁ。

 勝ちたいもんね。端的にいえばまだ新潟の自在型は勝つところまで至っていない。この日はすごく良くなった部分とがっかりの部分が両方、目についた。ケンゴ&武蔵の2トップはこれまででいちばん良かったと思う。距離感、関係性、役割の全てに高評価を与えたい。もうちょいで爆発だね。

 次節が楽しみになった。「アントラーズ相手にやれる」で終わるか、壁を突破するのか。目下、首位を行く鹿島は本来の勝負強さをとり戻した。自分らの力が試せる好機だ。僕はそろそろ壁をつき崩すタイミングじゃないかと踏んでるんだけど。個人的にはわっしょいの「わっ」くらいがもう口から出かかっているのだ。


附記1、この日は亜土夢が元気なかったですね。足の状態みたいなことかな。本文中、中村俊輔とレオのことを強調したけれど、この2人はチームが苦しいときほど存在感あったでしょ。何とかしようとしていた。僕は「10番」はそうあるべきだと思うな。苦しいときに消えちゃいけない。ま、次にいいとこ見せてくれよ。

2、「笹だんゴール!」、ホントにすぐ売り切れたみたいですね。

3、ニュースは今週、小保方さん一色でしたけど、待て待てぇ、ケンゴが秋津の練習試合で「代表初ゴール」(?)決めてるじゃないですか。そっちで特番組んでください。フジは『ごきげんよう』を深夜にまわしてください。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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