【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第276回

2015/11/5
 「遅い弾丸」

 J1第15節(第2ステージ)、名古屋×新潟。
 往復高速バスの日帰り観戦。名古屋滞在4時間ほどの実質「弾丸ツアー」。「弾丸ツアー」の「弾丸」部分にはピンポイントめがけてビューンと飛んでいくニュアンスがあるが、今回の場合はビューンが遅い。片道6時間くらいかけてビューン。すんごい遅い弾丸だね。途中、静岡のあたりで、あぁ、今年は高速バスが茶畑に転落したなぁと思う。ここ数年、大きな事故があり法整備が進み、といってたまに茶畑に落っこちたりする(茶畑がクッションになり、奇跡的に乗客は無事だった)けれど、高速バスの活況は続いている。SAに停車するとバスの多さに仰天する。

 滞在4時間で試合時間が2時間強、名古屋駅と瑞穂競技場西(地下鉄桜通線)の移動が片道21分、そこからパロマ瑞穂スタジアムへ徒歩10分。待ち時間やなんかを考えると、これはほとんどトイレの時間くらいしか取れないということだ。試合本位。面白い試合に当たるかハズれるか、そこが運命の別れ道だな。新潟は今節の結果次第で残留確定があり得る。それが見られたら最高の当たりでしょう。

 ハズれました。いやぁ、久々にまずい試合を見た。松本山雅戦の引き締まった出来から程遠いです。こう、守備がバタバタしてて入り込まれてたのも問題だけど、最後プツンッと集中切れちゃったでしょ。懐かしいドリフのギャグだね。いかりや長介さんが「だーめだこりゃ」と決め台詞を言う。新潟はいい試合が続かないね。これは選手の意識が低いのかマネジメントが失敗してるのか。

 試合展開を追うと前半22分、ラファエル・シルバが負傷交代したんだ。相手選手に足を踏まれた。ありゃりゃ~と思って見てたら、「無理」のサインが出て、頭くらくら来ましたね。ラファはケガが多いなぁ。今年の新潟は(ラファに限らず)ケガに祟られたけど、とりわけラファのケガは得点力ダウンに直結してしまう。一体、ベストコンディションで出られた試合がどれだけあったか。

 と思ったら交代で入った山崎亮平が大仕事をしてくれた。前半終了間際の45分、受けてドリブルで持ち込み、敵DFを切り裂く先制ゴール! 前半はそのまま1対0で終了して、非常にツイテルと思った。内容的には名古屋優勢でしょ。完全にやられてポストに救われたシーンもあった。それなのに不思議と勝っている。ギュンギュンが個人で打開し、1点もぎ取ってくれた。ハーフタイムに修正の指示をして、後半はもっと落ち着くだろうし、これは勝てるんじゃないか。

 勝てませんでした。後半は守備崩壊。その最初の崩落が前節・松本戦のヒーロー、端山豪のところで起きてしまった。端山、前野のサイドは前半から苦しかった。相手にしてるのがJ屈指の右サイド、小川&矢野だもんね。端山君は早めに代える手もあったと思うが、多少のことには目をつぶって育てる方針だったんだろう。これがさすがにいっぱいいっぱいで、PKを献上してしまう。

 で、そこから「ミスをする→あわてる→ミスをする」感じの悪循環に陥っていくんよ。前半のバタバタ感がひどくなる。で、逆転される。すぐに追いつく(得点者・指宿洋史)。試合展開自体も何となくバタバタする。こっちはもう、どさくさまぎれでもいいから勝たないかなぁと思うが、そう思ってるうち、途中出場の川又堅碁(髪型独特!)にやられたんだ。ケンゴの決勝点は凹むね。しかもロスタイムにはGK守田達弥の上がった逆を突かれ、エンプティゴールのオマケつき。2対4。

 名古屋は久しぶりの勝利だった。西野朗監督の今季限りの退任が発表されて、このところ盛り上がる要素に欠けていた。それをしっかり盛り上げちゃったみたいだな。名古屋サポが「4点も取れた!」とニコニコしている。永井謙佑は4得点すべてにからむ大活躍。

 新潟は残留確定を次節以降に持ち越した。この日、山形の降格が決まって、J1残留・降格が確定していないクラブはついに新潟、松本山雅の2つだけになった。残り2戦、「新潟連敗、松本連勝」という前提ではあるが、まだ降格の可能性は消えてない。

 復路のバスは17時15分名古屋駅前発だった。日本シリーズ第1戦を見るつもりでTVモニター付の座席を確保していた。こういうのってうまくハマると「残留も確定して、移動時間も無駄にしないオレ」って悦に入るところだけど、残留は決まらないし、日本シリーズはやたらと絵が静止するし(トンネル多い)、結構なトホホだった。次節・湘南戦、是非ともホームで残留バンザイしたいなぁ。但し、ケガ人と累積でまたやりくりが大変だよ。


附記1、イブ、カズ、マイケルと新婚ラッシュで「アルビレックス新婚」って字ヅラのギャグを考えたんですけど、披露するテンションじゃなくなりました。新婚が守り、新婚が攻めるいいチームなんだけどなぁ。「アイシテル新婚」って、そりゃそうだろうというチーム。

2、試合前、名古屋・楢崎正剛選手の600試合出場、矢野貴章選手の300試合出場の表彰がありました。おめでとうございます。

3、11月8日の北書店イベントはまだ入れるみたいです。たぶん今回の散歩道本に書き下ろした「ドキュメント大雪代替開催」をめぐっての話は出るだろうと思います。時系列で検証していくとなかなか面白いんですよ。申し込みの詳細は「北書店 えのきど」でググって下さい。 


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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