【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第286回

2016/4/14
  「オレンジと青の」

 J1第5節(第1ステージ)、福岡×新潟。
 この日は午前中、TBSラジオ(『ナイツのちゃきちゃき大放送』)に出演して、午後は同業者、神足裕司のお花見会(@新宿御苑)に顔を出した。キックオフ時刻は満開の桜の下、御苑の国際色豊かな花見客に囲まれて、確か漫画家の若林健次さんに競艇の話かなんか伺っていたはずだ。レベスタの現地組から「桜満開!」「半袖で過ごせますね。半袖でも暑いかも」「福岡暑い、でもブーツ(笑)」等のLINEメッセージが続々届いていた。まぁ、いつもオンタイムで試合にありつけるわけじゃない。こんな日もあるさ。

 昔はこんな状況下では情報遮断をして、帰宅後、オンタイムのつもりで録画視聴するみたいな小細工も試みたのだった。今はもう、やめた。知人サポからLINEでじゃんじゃん情報が入るのもあるけれど、そもそも自分が気になり過ぎて試合速報をチラ見してしまう。それはそれでしょうがないと思うことにした。で、大根おでんをいただきながら速報の「1‐0」を何度も確認した。この日は「試合終了」の文字が出ても誰からも何も言って来ないので、こんにゃくおでんをいただきながら「よっしゃ、完封!」と送信してみる。そうしたら皆、へとへとなのだった。「ぐったり…(笑)」「やっと勝った実感が湧いてきました」「足が燃えるように熱いです」、そういうのが来た。

 夜、帰宅してスカパー・オン・デマンドで「今季リーグ戦初完封試合」を見る。言い換えれば「公式戦2試合連続完封勝利」を見る。結果がわかって見るのは、こういう先入観から逃れられない。最初からそのつもりで見るのだ。オンタイム観戦とは気持ちの振幅がぜんぜん違っている。だから見終わった後のへとへと具合いだって相当目減りしてたはずだ。それでも疲れたもんなぁ。「夏日」に近いコンディションでこの接戦を見つめた現地組は心身ともに堪えたと思う。

 福岡はウェリントン1トップの「3-4-2-1」を敷くカウンターのチームだ。押し込まれたときは「2」が最後列まで下がって5バックの状態になる。つまり、数字で表現すると「5-4-1」だ。どうです、ごちゃごちゃしてるでしょう。トップにウェリントンだけが張って、あとは自陣にごちゃごちゃしている。これを達磨アルビの「4-1-4-1」はこじ開けなきゃならないんだよ。前半はこの攻防戦が主題だった。新潟側から言えば「引いた相手をどう崩す?」というテーマ。

 あぁ、それから「完封試合」を成し遂げるにはウェリントン(とシャドーの為田大貴あたり)を封じる必要があった。1週前、ナビスコ鳥栖戦で豊田陽平を封じた新CBコンビ(大野和成&増田繁人)にガンガン戦ってもらうしかない。

 一箇所やられそうなシーンがあった。GKからのロングボールをウェリントンがスラして、そこに為田がダッシュをかけた。うわ、ダメだと思った。GK守田達弥が飛び出して一か八かの勝負をする。このシーンはPK取られなかったのがラッキーとしか言いようがない。家本政明主審の判定はゴールキック。もし、PKで先に失点していたら、全く別の試合になっていた。

 で、素晴らしいことに先制するんだ。前半41分、コルテースのロングスローを指宿洋史が頭で落とし、それを田中達也と小塚和季が拾いにいく。角度のないところから決めてみせたのは今季好調の田中達也。吉田達磨監督の「ここ数週間、かなりのスピードで成長している」というコメントに納得してしまう。33歳に成長されたら後輩は全力で追いかけるしかないね。

 あ、そうだ、僕は以前、川又堅碁や鈴木武蔵に対して「達也の動きを盗め」と書いたことがある。それは主にDFとの駆け引きや、エリア内のふるまいみたいなことだった。が、もっと大事なことがあると思った。田中達也はあきらめない。田中達也は徹底している。平松宗はこれを盗め。プロで食っていく道だよ。

 先手が取れたことで後半の戦いはガラッと変わる。福岡は引いて守ってるわけにはいかず、「4-4-2」にシステムを変更する。新潟も田中達也を下げ、「4-4-2」で受けて立つ。まぁ、その後、一進一退の繰り返しでバタバタするんだけど、何とか完封勝利をモノにできた。福岡は交代出場の金森健志が危険だったね。

 昇格組の福岡と特段、力量差があったわけじゃない。ラッキーに助けられた面があり、手放しで喜んでもいられない。ただアウェーで勝ち点3だ。暑くて、芝の走らない条件で勝ち点3だ。文句ないでしょう。今はこれを積み重ねるだけ。

 西日本スポーツ(4月3日付)によると、福岡は「本拠地レベルファイブスタジアムでのJ公式戦では昨年7月18日のJ2大宮戦以来258日ぶりの黒星となった」そうだ。オフ期間が挟まるとはいえ、258日はとてつもない。新潟は期せずして小さな勲章を手に入れたのだ。

 リーグ戦の次節は(またしても)昇格組の磐田だ。今度はおそらくラインを高く保ったコレクティブなサッカーだ。当方が目指すのは連勝、リーグ戦でのスワン初勝利だね。大井健太郎、山本康裕を返り討ちにしよう。春爛漫の清五郎でそろそろ「サクラサク」と行こうぜ。


附記1、U-23日本代表候補の静岡合宿メンバーに野津田岳人、小塚和季両選手が選出されましたね。おめでとうございます。一方、ポルトガル遠征から帰ったばかりの小泉慶選手には声がかからなかった。残念すぎる話ですよ。帰国早々、福岡戦でも頑張ってたのになぁ。

2、ナビスコ川崎戦(6日)は0対5のボロ負けでした。開幕直前、1対8でボコられた非公開の練習試合からどのくらい進歩したかというところでしたが、いやぁ、まいったまいった。凹むけど、これは受け止めて次へ進むしかないです。野津田選手のアルビデビュー戦はいいとこ見られませんでしたね~。

3、セットプレーの守りは整理しないといけません。

4、4月9日(土)、いよいよアルビレックス新潟ユースの新しい歴史が始まります。プレミアリーグEAST開幕戦は11時、市立船橋戦です。会場は飛田給の「味の素スタジアム西競技場」です。アルビユースはプレミア初参戦、「昇格組」ですよ。応援で勇気を与えたい。僕は一般で行ってユニ着て応援しようと思います。無料だよ、みんな集まれ。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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