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2017.04.20スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第325回
 「設計上とピッチ上」

 J1第6節、鳥栖×新潟。
 この日はヘルシンキ滞在最終日だった。日本とフィンランドは6時間の時差があるから、日本時間15時のキックオフは午前9時に当たる。同行した皆で話していたのは「果たしてDAZNは海外でも見られるのか?」という問題だった。見られていい気もする。だって大元になってるパフォーム・グループってイギリス拠点の会社だろう。見られるならチェックアウト前のホテルでアルビ応援大会だ。モイ!キートス!ツェンッピアニイガタ!

 そうしたらさっぱり見られなかった。権利の関係やらがあるのだろう。そうなると速報だけが頼りだ。飛行距離にして約7,552キロ、遠く離れた北欧の地で(当てずっぽうに)「豊田に気をつけろよ~」とか言ってるのだ。僕はフィンランドにいたら字句通り「距離をとった見方」をするのかと思っていた。それが朝(フィンランド時間)からそわそわだ。7時には「スタメン出た。端山GO! お~、原くん左SBか!?」なんて言ってる。「現地、雨らしいよ」とか。

 またまた先制点を奪われた。詳細はぜんぜんわからないんだけどホテルでずっと気を揉んでいた。後半は更に2失点。どうも完敗を喫したらしい。皆、黙ってしまった。LINEで現地サポがら悲嘆の声が届く。僕らがはるばる見に行ったフィンランドリーグの開幕戦は、田中亜土夢の大活躍でHJKヘルシンキの快勝だった。それですっかり浮かれて過ごしていたけど、急に現実に引き戻される。その感じだ、僕が最初に書きたかったのは。これから飛行機に9時間乗って、現実へ帰るという何とも言えない感じ。フィンランド航空機は再びロシア上空を飛び越えて、「6節消化・未勝利(勝ち点2)」の現実にランディングした。

 DAZN見逃し配信。自宅に戻ってさっそくアクセスする。新潟と鳥栖はチームの設計思想において似ていると思った。鳥栖・フィッカデンティ監督も守備からチームを構想している。それはFC東京監督時代から一貫していて、さすが「カテナチオの国」の監督さんだと納得してしまうものがあった。言葉にすれば「堅守速攻」。システムにカウンター攻撃を織り込んでいる。

 設計上の違いは前線のタレントのタイプに由来する。スピードスター、ホニを擁する新潟は敵DFのウラ抜けに徹し、多くの場合、単騎勝負を挑む(ていうか敵も味方も追いつけない)。豊田陽平に加え、新加入ビクトル・イバルボ(この日がベススタ御披露目!)とターゲットマンが2枚になる鳥栖は、とにかく前線にあずければいい。2枚とも体格に優れ、DFを背負って無理がきく。僕はビクトル・イバルボが非常に面白いと思った。これはフィットしてきたら大変な難物じゃないか。

 先制失点はそのビクトル・イバルボの意外性に惑わされた結果だったろうか。大柄だけど強さだけじゃなく、アイデアやスキルに富んでいる。ワンツーからシュートを打たれそうになり、エリア内でたまらず富澤清太郎が倒してしまった。これがPK判定。前半27分、キッカー豊田があっさりゴールを割る。遠くヘルシンキでは僕らが「また先制されたか!」と声を上げていた。

 僕は(もちろん結果を知って見始めたわけだが)新潟の攻めを悪くないと思った。何だ、0対3で一方的にやられたわけじゃないじゃん。ちゃんと三浦文丈監督のサッカーがブラッシュアップされている。この日は雨でピッチがスリッピーだったこともあり、鳥栖DF陣は神経をすり減らしていた。ホニ、チアゴ・ガリャルドのコンビは十二分に脅威を与えていた。

 が、ウラ抜けという設計上、何度もオフサイドを取られたり、つぶされたり合わなかったりを繰り返して、見事ハマッたときに1点というイメージじゃないだろうか。あんまり沢山は点が取れる感じがしない。その点、ターゲットにあずける鳥栖方式は、多少精度が悪かったりタイミングがずれたりしても、それをどうにか吸収してくれる強みがある。ましてターゲート2枚だ。これはより複数得点につながりやすいと思う。

 で、新潟、鳥栖の最大の違いは後半のスコアに表れている。ベースになってる「堅守」の完成度が違うのだ。実際問題、新潟は「堅守」の看板倒れだ。今シーズンはちょっと驚くほどもろい。鳥栖は前半ピンチがあったせいで、後半は修正を施したらしい。修正がきくところも完成度の違いだろう。いずれにせよ、守れなければ「堅守速攻」は絵に描いた餅になってしまう。

 完全に余談だが「絵に描いた餅」はどんな餅なのだろう。僕はそこそこ長く生きているが、まだ餅の絵は見たことがない。餅の写真は見たことがある。昔はよく描いたのだろうか。「へっ、そんなもん所詮、絵に描いた餅だ!」とか言ってたみたいだからなぁ。たぶん頻繁に描いたに違いない。あと上の句が「砂に書いた」だと「ラブレター」である。砂に「餅」は書かないし描かないきまりだ(と思う)。

 2失点目はGK大谷幸輝とSB原輝綺がかぶって、クリアが不十分になったところを鳥栖・小野裕二に狙われたもの(後半26分)、3失点目は田川亨介に大野和成が振り切られたもの(同42分)。僕はルーキー原が経験のないSBで大奮闘したのもわかってるし、キャプテン大野がチームをまとめるため苦心してるのもわかるつもりだ。こうしてミスなんかあげつらっても大して意味を持たないかもしれない。今はどちらかというと激励したい気持ちだ。

 ピッチで萎縮しないでほしいのだ。「堅守」は別の言葉でいえば自信だ。「6節消化・未勝利(勝ち点2)」の現実は苦しい。だったら苦しいなかでもがいて何かをつかみ取ろう。うまくいかない時間は大事なことをつかみ取るプロセスでもある。頑張ろう。もがいてやり切った向こうに必ず勝利が待っている。


附記1、水曜日のルヴァン杯・広島戦は0対1の負けでしたね。何か淡泊な試合でした。こう、負け慣れて来ちゃってないか心配ですね。誰か風向き変えられる選手はいないかなと思って見てたんですけど、堀米悠斗が面白いです。そろそろリーグ戦でも見られるかな。

2、次節・甲府戦は吉田達磨・前監督とぶつかる「川中島ダービー」という凄まじいドラマです。達磨さんはもちろんプライドをかけて勝ちに来るでしょう。しかし過去の「川中島ダービー」で、上杉方から武田方へ寝返った武将がいましたか? ホンモノの戦国時代みたいですよね。

3、という意味では三浦文丈監督の「長野→新潟」もめっちゃ戦国時代っぽいです。パルセイロ長野の居城「長野Uスタジアム(南長野運動公園)」って川中島古戦場の隣ですから。信濃島津氏を捨て、上杉方へ走った武将(?)と考えられなくもない。今年の「川中島ダービー」は越後、甲斐、北信濃が複雑にからみあっています。

4、ヘルシンキ取材旅行の時期はサンクトペテルブルグ、ストックホルム、オスロと近場でテロが相次いだのが不気味でした。今週は香川真司の所属するドルトムントのチームバスが爆弾で狙われましたね。まぁ、背景はまだわからないところが多いんですけど、何であれ絶対に許されないと思います。

 
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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