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2017.06.15スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第333回
 「65分の好ゲーム」

 J1第14節、C大阪×新潟。
 試合前日、大谷幸輝、大野和成両選手の手術&戦線離脱が発表になり、京成バス(東京シャトル)の車中、「うわ」と声に出してしまった。大阪前泊の浮かれた気分がふっ飛んだ。きびしいなぁ。呂比須監督の下、チーム再建をはかる矢先に主力2人が欠けてしまった。大谷が全治8週間、カズが12週間の見通し。まぁ無理して長引かせるより、この際しっかり治してほしい。特にカズは去年、無理させちゃったからなぁと心配になる。

 主戦GKとキャプテン離脱である。もちろんジャンボや富澤、ジュフン、竜馬らに頑張ってもらうしかないのだが、本人にもチームにもアンラッキー以外の言いようがない。大谷はポジションを奪いかけたばかりだったし、カズは責任感が強いからチーム状況が気が気じゃないはずだ。試合に出なくてもチームに声をかけたりはできそうだが(そしてぜひやってもらいたいが)、キャプテンの役割は戦線離脱してチームの外側にいては果たせないだろうと思う。

 試合日の長居運動公園はそんなチームの暗雲なーんも関係なしの快晴だった。夏の陽気だ。サポーターに聞くと新潟は寒かったらしくて、10℃近い気温差だという。すっかり忘れていたが、キンチョウスタと日立台はデーゲームの記者席が逆光になる。メインスタンドの向きが特殊なのだ。野球帽を目深にかぶり日光をさえぎったが、サングラスもあればよかった。もっとも他の記者はマッチデープログラム等でひさしをつくり、目をしょぼしょぼさせていた。

 セレッソはここまで7勝2敗4分(勝ち点25)の暫定3位である。今季の「昇格組」のなかでずば抜けた好成績を残している。何とホームで負けなし。ユン・ジョンファン監督はタレント軍団のセレッソに「3部練」を強い、鍛え上げる方針を取ってきた。攻→守、守→攻のトランジションの速さは定評を得つつある。04年以来、ずっとJ1で闘ってるはずの新潟のほうが完全に挑戦者だ。徹底的に食らいつくしかない。食らいつけば勝機がつかめるかもしれない。

 後半22分、ソン・ジュフンがエリア内でマテイ・ヨニッチを倒し、PKを献上した。ジュフンは手を使う悪癖があるが、今回は抱きついて押さえてしまった。これが続くようなら真剣にセンターバックの補強を考える必要がある。本当に残念なことだった。試合開始から65分間は緊張の糸がピーンと張った好ゲームだったのだ。先ほどの言い方をするなら食らいついていた。危ない場面は久々のスタメン出場、守田達弥がしのいでくれた。僕は呂比須さんよくチームを立て直したなぁと思っていたのだ。

 それがPKゴール(後半23分、得点者・柿谷曜一郎)から暗転する。後半28分、川口尚紀の半端なクリアとチアゴの軽い守備が加わり、山下達也に決められる。この辺からスイッチが切れてしまった。後半35分は相手のFKなのに誰も見ていない。あっさり山村和也に決められる。そして同41分、ソウザのFKゴールでとどめだ。後手にまわってファウルで止めるからFKも打たれる道理だ。

 僕は反省・総括には何段階かのレベルを切り分ける必要があると思った。まず、A「試合を壊した拙劣なプレー」である。これはなぜ生じたのだろう。個人の技量が拙いのか、チームとしての守備の仕方が拙いのか、あるいはチームの意識改革が甘いのか。

 B「なぜ1失点したくらいで試合が壊れるのか」は更に重要だ。壊れるには壊れるきっかけがあったのだろう。が、そのきっかけになったチョンボを皆で補うのがチームスポーツだ。仙台戦もそうだったが、失点の後、精神的に崩れるのがパターン化している。集中力が切れるのか戦意喪失するのか知らないが、それはプロの名に値するだろうか。

 C「セットプレーの失点が多い」は呂比須監督もコメントされていた。(誰が悪いの試合が壊れたの壊れないのをひとまず措いて)失点を具体的に吟味すると、やっぱりセットプレーでやられているのだ。これは「セットプレーの守備」という課題のほかに、「そもそもセットプレーを与えない守備」を考える必要がある。

 僕は3失点目を見て、自分の目を疑った。何か自分の気づかないトリックをセレッソに仕掛けられたのかと思ったのだ。そうではなかった。単に気を抜いてたのだ。キンチョウスタまではるばる出かけたサポーターの目の前でそれは起きたのだった。僕は恥ずべきことだと思う。これを問題にしなかったらサッカーとして終わりだ。

 幸い国際マッチデーウィークで2週間の中断が入る。次節・大宮戦(裏天王山?)はじっくり準備ができる。課題を整理し、「65分の好ゲーム」を90分続けられるようにしたい。いや、そうじゃない。勝利したい。

 前を向こう前を向こう、切り替えよう切り替えよう。そんなことばかりで申し訳ない。まだあきらめるわけにいかない。白旗を掲げるには早すぎるのだ。無言でキンチョウスタを引き上げるサポーターに「おつかれさん」と声をかけたかった。ここは直射日光もまぶしい。ピンク色の氾濫もまぶしい。来年はサングラス持参だな。


附記1、U-20W杯帰りの原輝綺選手がチームリーダーのように見えました。試合後のコメントもチームの問題点を的確に指摘していた。この日、いちばん感動しましたね。

2、セレッソのムードがいいですね。ユン監督、見事にチームを掌握してました。僕は優勝しても驚きません。

3、この日、会場入りする前に神戸の横尾忠則現代美術館をのぞきに行きました。「ヨコオ・ワールドツアー」展を開催中で、作品群も大変刺激的だったんですが、フィルム上映で面白いことを知りました。1964年の東京オリンピックのとき、各国選手団がチャーター機で続々来日するその帰りの便に目をつけた人がいたらしいんですね。カラで帰してもしょうがないので、有為の若者を格安の値段で外国に出してやろうとした。で、20代の横尾忠則と和田誠、篠山紀信が示し合わせて洋行するんです。フィルムは篠山青年の撮影ですね。横尾青年と和田青年が細身のジャケット、ネクタイ姿で思い切り気取ってた。これも大層まぶしかったです。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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