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2017.08.31スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第344回
 「正直に書く」

 J1第23節、新潟×仙台。
 見たままを正直に書く。チームは非常に困難な状況だ。約3ヶ月(11戦)白星なし、勝ち点ひとケタ(9点)、不動の最下位という成績も惨憺(さんたん)たるものだが、ここに来て、チーム内に不協和音が生じている。一般論で考えても(つまり、アルビという意味でなくても)降格が見えてきたチームはバラバラになりがちだ。特に残留ラインで争ってるわけじゃなく、1つだけ抜けて最下位というケースは難しい。現行ルールでは7月末から翌シーズンの契約交渉に入るから、個別にオファーが届いたり、代理人交渉を始めていておかしくない。あるいはそういうことでなく、行き先を探していたり。

 単独最下位はまとまるのに熱量がいるという話だ。まとまる力はフツーはクラブへの忠誠心(新潟愛?)みたいなものだったり、生え抜き選手のタテ関係だったりする。新潟はここ何シーズンか選手が入れ替わり、ストーリーが描けなくなった。で、今季は揺り戻しのように勲や貴章を呼び戻し、若手をレンタルバックしてタテ関係の再構築をはかったのだと思う。が、それはあっさり行き詰まる。戦力不足。ロースターの編成ミスだ。シーズン途中、監督が変わり、クラブは異例の大型補強に乗り出す。

 チームは新潟愛やストーリーどころじゃなくなる。そういうのは後から付いて来ればいい。ミッションを負った腕利きの傭兵部隊だ。まとまる力はプロとしての誇りだ。こう、黒澤明の『七人の侍』的なチームが出来つつある。

 というところまでが前提だ。これ以降が「見たままを正直に書く」になっていくわけだが、呂比須監督がちょっとおかしい。思うように成績が上がらず悩まれてるのだろうが、2節続けて勝負どころの「謎交代」でゲームを失ってしまった。前節・大宮戦の「ポジション変更の指示不徹底」も1分後に失点しているが、今節の後半36分、「堀米悠斗OUT→ソン・ジュフンIN」も1分後、てきめんに失点している。

 状況は1対0、新潟がリードしていた。前半、仙台の不調にも助けられ、新潟が猛攻を繰り返し、23分、タンキの来日初ゴールで先制したのだ。猛攻は3点くらい取れていてもおかしくなかった(小泉慶が倒されたのが取ってもらえてたら‥)。が実際には虎の子の1点のみ。後半に入り、新潟の疲れを見て取るや、仙台は切り札を投入した。後半34分、富田晋伍OUT→クリスランIN。クリスランには第13節、ユアスタで痛い目にあっていた。で、呂比須監督には秘策があったのだ。それが同36分の「堀米悠斗OUT→ソン・ジュフンIN」だった。

 最初、ジュフンが準備してるのを見たときは3バックにして逃げ切りを意図してるんだと思った。で、それはちょっと早いんじゃないかとも思った。そうしたらゴメスとの交代だった。たぶんあの瞬間、呂比須監督以外の全員「?」のマークを頭の上に浮かべていたと思う。磯村亮太がそれは違うとベンチに言いに行く。『七人の侍』はプロの誇りをかけて「謎交代」を止めようとした。ゴメスはものすごく効いていたのだ。それを下げて、練習でもやったことのないジュフンの左SB起用だ。チームは混乱し、スキを突かれ失点してしまう。

 シーンを仔細に見ていくとクリスランのクロスは大谷幸輝がいったん弾いている。それがドンピシャ石原直樹のところへ行ってしまう。このツキのなさ。で、こぼれ球が押し込まれるのを棒立ち状態で見ていたのが入ったばかりのジュフンだった。ものすごく印象悪い。それは呂比須監督にとっても、ジュフンにとっても。だから「練習でもやってない謎交代」はひと際目立ってしまった。ごまかしようがないのだ。

 ちなみに仙台も野津田岳人(この日、仙台デビュー)を試合途中、ボランチに下げているが、その形は練習でやってなかったそうだ。野津田のボランチは十分な実績があり、ジュフンのSBとはちょっと事情が異なるけれど、ぶっつけ本番でどうにか合わせたという点では同じことだ。負けたチームと勝ったチーム、混乱が失点に結びついた側と応用問題でおさまった側、その明暗が分かれたという見方もできる。

 つまり、僕が言いたいのは複合的に「非常に困難な状況」ということだ。終盤の逆転負けは「謎交代」による混乱のため(呂比須監督の作戦ミス)ということができる。現に「3バックに代えるかと思ったが、練習でもやってない形」(大武峻)と選手がコメントしてる以上、否定しようがない。が、そこにもう一枚『逆転負けは「謎交代」による混乱のためとアピールしてしまう問題』が存在する。ジュフンINの時点でも、ああ、これは選手が混乱してるんだなとはっきりわかった。「ん、揉めてる?」という感じだ。それは僕にわかったんだから、サポーターもわかったし、ベガルタ仙台にもわかったはずだ。よくありませんね。

 チームがバラバラなのか溝ができてるのか、監督の求心力が低下してるのか知らないが、戦場でそれを見せていいことありません。お互いプロとしてやってることだからダッシュで解決すべきだ。ていうか、もう何日もたってるんだから手は打ってるだろうと思う。新潟がこれまで土俵際で何度も粘って来れたのは同じ方向を向いてたからだ。困ったときほど一枚岩になれる、その結束力がストロングポイントだった。

 僕は『七人の侍』状態になってもアルビレックス新潟はすんごい戦ってると思うのだ。大宮戦も仙台戦も、戦術的に瓦解しそうなところを選手の頑張りで終盤までもたせている。あんなに頑張ったらそりゃフラフラにもなるよ。まぁ、もちろんそこは個人差あって、ガリャルドみたいにフィットしないなぁって悩ましい部分もあるけれど。

 僕はサポーターは見てると思うんだ。「非常に困難な状況」でどんなふるまいをするか。客のほうを向いてくれるのか。わだかまるのかこじれるのか。戦ってくれるのか逃げる算段に入るのか。

 アルビレックス新潟、立ち上がってくれ。僕はこれ以上、お前を信じ、愛し、夢を見た人たちが傷つくのを見たくない。もはや僕の言ってるのは勝ち負けではない。サッカーは、アルビは素晴らしいんだともう一度教えてくれないか。信じてきたものは本物だったと肚の底からわからせてくれないか。それは11試合あったら十分じゃないかな?


附記1、遅くなりましたが小泉慶選手、100試合出場おめでとうございます。記念グッズの「春の湯」コラボ手ぬぐいはぜひ予約したいと思います。ゲットされた方は柏戦の土日は春の湯チャンスですね!

2、仙台戦の翌日、三条パール金属スタジアムに「阪神×日ハム」のファーム交流戦を見に行きました。そこでアルビボランティアの方に声かけられたんですよ。あれはびっくりしたなぁ。あっちでもボランティアされてたんですよ。

3、今日入ったニュース。長岡の中学生の水難事故は本当に悼ましいことです。走りに出かけていたんですね。何てことなんだろう。慎んでご冥福をお祈りいたします。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

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