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2017.09.21スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第347回
 「ボトム3」

 J1第25節、新潟×広島。
 試合当日の朝、『グッドモーニングポートシティ・サタデー』(FMポート)のサッカーコーナーで、大野和成の戦列復帰とチアゴ・ガリャルドの懲罰的な離脱を知る。大野カズは手術明けのリハビリ暮らしのなかでもチームのために動いてくれていたと聞いている。ガリャは練習で感情的になり、故意に相手選手を蹴ったらしい。番組パーソナリティーの立石勇生さんによると、これまでも何度か同じことをしているという。ガリャは難しい選手だ。スキルはあるし、点も取っている。普段は気のいい男だが、たまにセルフィッシュな言動を取る。呂比須監督はスタメンはおろかベンチからも排除する措置に出た。チームが団結すべきときに10番がそれじゃ困る。新潟日報の予想スタメンではトップ下に小川佳純が入った。ついにオレンジの小川がスワンのピッチに立つ。

 サポーターによる「(チームバス)入り待ち作戦」には参加できなかった。青春18きっぷでのんびり新潟入りしたせいだ。車中、『心とろかすような』(宮部みゆき著、創元推理文庫)。僕は「元警察犬マサ」の倒叙ものシリーズが大好きだ。越後中里くらいからはヘッドホンでHBCラジオの日ハム戦実況中継を聴いた。radikoプレミアムは本当に便利である。

 スタジアムに到着したのはNegiccoミニライブの始まる直前だ。またこの日は「日清焼そばU.F.O.サンクスデー」でU.F.O.ヤキソボーイのヒーローショーも行われた。順位が8位くらいだったら単ににぎやかな土曜日だ。皆、カラッとした秋風を楽しんでいただろう。だけど、激突する両チームはボトム3に沈むどうし(17位広島、18位新潟)だ。つぶし合いになるんだろうなと思った。少なくとも広島は引導を渡しに来たはずだ。勝負の世界の厳しさである。試合の終わった後、スタジアムはどんな雰囲気になっているだろう。

 試合。ところが「つぶし合い」の激烈さからは遠い内容だった。なーんも起きないのだ。広島は7月に森保一監督が退任、OBでもあるスウェーデン人、ヤン・ヨンソン監督にバトンが託された。が、(チームが若返った他は)あまり印象に違いがない。基本的にミス待ちのサッカーだ。かつて柳下正明さんが「相手が取りに来ないならずっと回していればいい」と評した、ベタ凪(なぎ)の時間帯が生じる。

 あるいはスパーリングのようだった。ハーフタイムに声をかけてきたサポーターの一人が「名古屋勢、巧いですね」と期せずしてポイントを突いた。僕らが見ていたのは命をかけたどつき合いではなく、リスクを考えヘッドギアを付けての応酬だ。ちょっぴり名古屋×広島にも見えていた。常連サポでも「あれ、40番って誰だっけ?」状態である。試合終盤、大野和成が投入されたのとはどうしても温度差がある。

 広島の用意したワナを見事にかいくぐって「名古屋勢」が形をつくる。小川佳純はさすがにクオリティが高い。が、決定的なところには至らない。面白いのはホニが強引に突破にかかったときくらいだ。逆に新潟も相手の攻めをハイプレスをかけて防いでいる。なーんも起きない試合。いわゆる塩試合。

 強いて何か起きたシーンを挙げると、広島はパトリックのヘッド2発が強力だった(うち前半17分のものはGK大谷幸輝が好セーブ)。新潟も何度かチャンスをつくったが、最大の見せ場は後半42分、タンキの放ったシュートが敵GKの腕からこぼれ、ゴールラインぎりぎりでかき出されたシーンだろう。審判はノーゴール判定。僕の座席からは距離があって判断がつかない。

 あれは入っていたんじゃないかという声がある。アルビサポのなかにも「入っていた」派と「ラインにかかっていた」派が両方存在するビミョーさだ。ビッグスワンのモニターはスローを見せてくれなかった。後で『Jリーグタイム』や『やべっちFC』の映像を見て、うわ、これチャレンジ制度があったらなぁと地団駄を踏んだ。

 試合終盤は新潟の猛攻だった。同45分、山崎亮平のシュートはサイドネットを揺らす。スワンは久々に一体感のある雰囲気を取り戻していた。あの盛り上がりに結果で応えられたら最高だったが、残念ながらスコアレスドローだ。勝ち点1の痛み分けは新潟はもちろん、広島にとっても痛恨事じゃないだろうか。

 僕は試合後のスタンドの風景を見つめた。「逆襲の夏」は空振りに終わり、「熱いサポ」はいつしか「温かいサポ」に変貌している。ちょっとグッと来た。皆、フットボールの義兄弟だなぁ。喜びも痛みも分かち合う仲間たち。場内一周してきた選手らに声をかけている。先頭に立って、それを一身に引き受けてるのは大野カズだ。

 ナンセンスを承知で言えば、開幕からこのチームが見たかった。今から34節あったら勝ち点わずか11ってことはなかったと思う。が、残りは9節しかない。ここから「超・奇跡の残留」を実現するにはアタッカーの狂い咲きのようなゴールラッシュと、連戦連勝が必要だ。タンキがフィットしてないのが苦しいところだなぁ。タンキ自身のためにもあのノーゴールは残念だった。


附記1、小泉慶の作文朗読(反差別・暴力宣言)、聞いてて緊張しましたね。それから小泉ファミリーがマジそっくりで感動しましたね。

2、富澤清太郎のケガは大丈夫でしょうか。結果的にあの交代が感動的なキャプテン大野カズ復帰シーンにつながるんですけど。

3、翌日、市陸にサテライト広島戦を見に行ったんですけど、サンフレッチェのスタメンがミキッチ、森崎和幸、工藤壮人、ネイサン・バーンズ、フェリペ・シウバ‥、と豪華でした。個人的には本間勲のプレーを見たのが大収穫でした。あと大野和成、前野貴徳がフルタイム出てくれたのも嬉しかった。スコアは1対1のドロー。河田篤秀のファインゴールを見ましたよ。チアゴ・ガリャルドはサテライトもメンバー外でした。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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