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2017.10.05スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第349回
 「河田2ゴール!」

 J1第27節、札幌×新潟。
 この試合を語るには前半26分の富山貴光、ク・ソンユンの交錯シーンを避けては通れない。新潟はタンキが出場停止だった。夏の移籍でチームに加わった富山がそのまま1トップの位置で初先発していた。札幌戦のキャスティング上、最大の注目選手だ。

 もちろんタンキと富山とでは持ち味が違う。フィジカルに優れ、敵を背負って仕事をするタンキに対し、富山はウラ抜けのスピードや勝負勘を生かすんじゃないかと見られていた。僕はこれまで「タンキ→富山」の交代出場を見ていて、ちょっと不満だったのだ。タンキと同じ役割を富山にさせてどうする、と思っていた。まぁ、僕も富山のプレーを見てまだ日が浅いのだが、いちばん自信持ってるところで勝負させたい。何でかっていうと結果が必要だから。試合後半に投入される富山はすんごい重要だ。

 だからスタメン起用の札幌戦は戦術自体が「富山仕様」というか、富山の持ち味にフォーカスしたものになるんじゃないかと想像した。まぁ、今書いてて「新潟の富山仕様」という海の幸感に自分で笑ってしまったが、それは本題とは関係ない。「札幌で新潟の富山仕様」まで行くと何かもうてんこ盛りの海鮮丼である。

 で、件(くだん)の交錯シーンだが、DFのウラにパスが出て、富山としては勝負のしどころだった。一方、札幌GKのク・ソンヨンはピンチの場面だ。先に触らなければヤバい。FWとGKが一つのボールに飛び込んでいく。そこで交錯が起きた。両選手ともこの試合の先制点の持つ意味がわかっていた。

 まともにぶつかって2人がピッチに倒れる。僕はまずク・ソンヨンの脳震とうを心配した。パツッと見て、双方に負傷交代があり得るなと思ったが、(アイスホッケーチームの業務経験から)まず深刻なほうから心配するクセがついている。脳震とうは本当に怖いのだ。一度ダメージを負って、短期間にもう一度ダメージが重なると重篤な事態になりかねない。

 これは本人の弁が信用おけないのだ。僕は氷上で相手選手と激突して、そこで意識が飛んで、次に気が付いたら自宅にいたというホッケー選手を何人も知っている。怖いことに彼は倒れた後、(意識が飛んだ状態で)「大丈夫です」とドクターに答え、そのまま試合に出続け、試合後はシャワーを浴び、チームメイトといつも通り話をして、かつクルマを運転して自宅へ帰ったのだ。

 前半27分ク・ソンヨン→金山隼樹、同30分富山貴光→河田篤秀。両軍、このアクシデントで最初の交代カードを切ることになった。どうやら脳震とうではなく、2人とも打撲のようだ。ピッチから主戦GKが消えた札幌と、期待のFWが消えた新潟。これはどちらにとっても痛手であり、またリザーブの質の問われるところだ。

 だから、交代投入された河田が劣勢を挽回する2ゴールを奪うのは幸運の関与するところが大きい。いわば「代役の代役」がチームを救ったのだ。1点目のヘディングのループシュート(?)は面白かったし、2点目のゴール前に詰めた嗅覚はFWらしい天性を思わせる。なかなかあそこに入っていける選手がいなかったのだ。

 河田はアルビレックス・シンガポールからの加入で、例えば五輪代表で活躍した鈴木武蔵と比べたら雑草育ちと言っていい身の上だ。Jリーグのユニホームを着てからも骨棘(こっきょく)等でコンディションが整わず、心中穏やかではなかった。自分が活躍できないだけでなく、チームも苦境にあった。この試合は大勝負だ。チームも結果が必要で、河田も結果が必要だった。

 河田は次の出場機会を得るだろう。仕事はこうやってつくっていく。僕はプロサッカーの原点を見た思いだ。こういう風に仕事が欲しくてギラギラした男が見たい。札幌戦は下位対決の大事な試合なのにチーム全体からは大して熱が伝わって来なかった。仕事って何だかんだいって熱じゃないか。熱が飛んで来ないものはつまらない。

 札幌戦がドローに終わって、アルビはいよいよ降格がちらついてきた。可能性のある限りあきらめる必要はないが、徳俵には足がかかっている。次節・神戸戦は最後の賭けになるんじゃないか。ホームでとにかく勝つこと。それで千分の一、万分の一の運が開けるかもしれない。河田の2ゴールは勇気だ。絶望的な状況を打開するのも勇気だ。


附記1、「フランスW杯対決」と実況アナが紹介していて、ああ、ホントにそうだと思いました。呂比須監督はもちろん日本代表の主力FW、四方田修平監督は分析担当として「岡田さんの右腕」と呼ばれたスタッフです。武者震いしながらグループHの初戦・アルゼンチン戦(1998年6月14日、トゥールーズ)を迎えた「戦友」がこうして相まみえるんですね。

2、大谷幸輝のファインセーブに何度も助けられましたね。

3、「ビッグスワン ホームとアウェー 観客席入れ替え検討/1日まで意見募集」(新潟日報スポーツ面、9月27日付)の記事が興味深かったです。だいぶ感じが変わっちゃうでしょうね。大型モニターのサイズの問題もありますね。

4、田中亜土夢の所属するHJKヘルシンキがフィンランドカップ獲得に続いて、リーグ優勝を飾りました。おめでとうございます!

 
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

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