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2017.11.30スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第357回
 「このさびしさに」

 J1第32節、新潟×甲府。
 後半は防戦一方だった。幸運に助けられてどうにか1-0で締めくくることができたけれど、サッカー的には決していい点はつけられない。突っ立っててプレスに行かず、フリーでクロスを入れられた。セットプレーでは全員ボールを見てしまって、相手選手を見ていない。勝てたのは本当に偶然だと思う。どこでやられてもおかしくなかった。だから「最後まで粘り強く戦って、新潟の意地を見せた」という見方はしない。

 戦術的には完敗だったのじゃないか。この先、甲府がJ1残留に成功するかどうかは知らない。が、呂比須アルビは吉田達磨ヴァンフォーレに見劣りがした。前半、驚いたことにボールを持たされたんだよ。おいおい達磨さんカウンター狙いかよ、今年は現実路線なの? と目を丸くした。うちがポゼッションしてるんだ。ブロックの後ろで持たされている。5バックでホニの上がりを消してきた。

 で、まぁ、前半18分、オウンゴールでうちが先制する(山崎亮平ナイス!)と、後半はやり方を変えてきたんだ。うちは今、ようやく戦えるサッカーが1パターンできたところなのに、甲府は切り替えがきくらしい。継続していけば面白いサッカーになるだろう。甲府は先週、吉田達磨監督の続投を発表している。つまり、仮に降格したとしても達磨路線で行くということだ。吉田達磨監督には2年目があり、うちは監督のクビをすげ変えている。どっちが迷走したのかは明らかだ。

 あぁ、読者よ、それでも試合には勝ったのだ。それどころか2015年以来、2年半ぶりの連勝であるらしい。だけど、ビッグスワンにはバンザイもヒーローインタビューもなかった。アルビレックス新潟のJ2降格が決まった。同時刻キックオフの神戸ユニバで広島が勝利したのだ。試合は神戸ユニバが先に終わり、スマホ等で情報を知ったサポーターはその後、新潟勝利の瞬間を迎えた。スタンドからは一応、拍手が起きたが、爆発的なテンションにはならない。やがてピッチの選手らにも降格が告げられる。

 思い描いてたのとは何もかも違った。甲府相手かどうかはともかく、矢尽き刀折れ、例えば逆転負けを食らうなどして討ち死にすると思っていたのだ。それが危なっかしくではあったが勝ってしまった。それから自分も含めて皆、号泣するんだろうと想像していた。が、もうずっと土俵際で、心の準備期間が設けられていたから、実際にはあれっ、こんなもんかという感じだった。あと意外だったのは試合後、選手らが場内一周したシーンだ。イメージ的には広島降格のときの佐藤寿人を思い描いていた。ゴール裏のサポーターに向かって、拡声器をひったくるようにして「必ず1年でJ1に戻ります! 応援お願いします!」と涙ながらに訴えるもんだと思っていた。実際には特にそういうのはないのだった。

 サポーターもどうしたらいいか戸惑うような感じだった。たぶんブーイングをするべきか、拍手やチャントを送るべきかわからなくなっていた。個々の思いがバラバラで整理されない。選手らがゴール裏を去ってメイン側へ移動した後、自然発生的に「アイシテルニイガタ」が歌われた。鳴り物がなくて、どう終わったらいいかずっと歌い続けていた。

 それは不思議な経験だ。試合に勝ったのに降格。「スマホに情報が出てるから降格なんだろう」という降格。半信半疑というか、実感がないのだった。ふと降格は目には見えないんだなぁと思った。現実として存在するのに目に見えず、匂いもしない。強いて言えば雨の鉄っぽい匂いだ。

 「勝てない時期がずっとあり、1年を通じて苦しかった。自分たちの力のなさが招いた結果」(山崎亮平)
 「サポーターの涙や悔しい気持ちは届いている。それを忘れてはいけない」(矢野貴章)

 事実だけを記すことにしよう。アルビは2004年のJ1昇格から14年目で初めてJ2落ちを味わうことになった。呂比須ワグナー監督は会見で「結果に責任を取らねばならない」と辞任の意向を表明、また神田勝夫強化部長の退任も決まった。

 夜、自宅に戻ってひとりになってから急にこみ上げるものがあった。どうにもならない気持ちを抱えたまま夜が更けるに任せる。戦前の歌人、若山牧水のラブソング(?)を思い出した。僕は中学生くらいの頃、文庫本の歌集を読んでいつかこんな歌を女性に投げかけるのが夢だった。駆け落ちとか逃避行とかね、燃えるような恋を想像した。それをアルビサポに捧げたいと思う。

 「いざ行かむ 行きてまだ見ぬ山を見む このさびしさに 君は耐ふるや」


附記1、10月以降の頑張り(4戦3勝1分)で、史上最も遅い「そのシーズン最初のJ1降格チーム」ということになったそうですね。小川佳純が「たらればですが、もう少し勝ちだす時期が早ければ…、新潟に来てすぐにポジションを勝ち取る実力があったり、監督に使おうと思わせることができてれば…」とコメントしたのもわかります。

2、後任の強化部長には今年のU-20W杯日本代表コーチを務めた木村康彦氏が就任するということです。どん底だから逆に仕事がしやすいかもしれませんね。

3、今年も北書店でトークイベントをやることになったんですけど、聞いたらサポカンと完全にかぶってるそうですね。いかんなぁ。今年はサポカン重要ですよ。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

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