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2018.09.13スペシャル
【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第387回
 「勝ち点1と人事刷新」

 J2第31節、愛媛×新潟。
 スコアレスドロー。連敗が6で止まった。アルビは久々の勝ち点1を手にした。たったの1と思われるかもしれないが(片渕浩一郎・新監督は「最低限のミッションをクリアした」と表現)、それでも降格圏まで勝ち点3差しかなかったものが4まで開いた。プロ野球的に言えば1ゲーム差が1,5差に開いたことになる。1試合の勝敗ではひっくり返らない。こうやってコツコツ勝ち点を積み重ねるしかないのだ。もっとも冒頭の「連敗が6で止まった」は、次の岐阜戦次第では「引き分けをはさんで○連敗」とカウントされてしまう。
この結果を生かすも殺すも岐阜戦次第なのだ。

 僕はむしろ「連敗が6で止まった」よりも、11試合ぶりのクリーンシート(零封試合)の方に価値を見出したい。決して安心して見ていられる守備じゃなかった。前半は特に心臓に悪かった。無失点でおさまったのは、愛媛の拙攻のおかげとも言える。だけど、この結果を欲していたのだ。自信を取り戻したかった。たとえ幸運に助けられたクリーンシートでも、それが守備戦術の再構築へ向かう第一歩かもしれない。何事もいきなりは変わらない。

 たぶん大方の読者が、前半より後半のほうがチームが安定したと見ただろう。僕もそう思った。片渕監督はどういう手を打ったのだろう。イメージとしては田中達也なのだ。田中達也の献身的な動きに助けられた。あれこそアルビの誇りだ、と何度もグッと来た。それから(手指の骨折を押して出場の)加藤大も良かった。どういうことが起きていたのだろう。こういうとき頼りになるのは平澤メモだ。サッカーマガジン元編集長、平澤大輔さんから送られてくる試合の解説メール。

 「後半に守備を整理したことで良くなったという監督・選手コメントが散見されました。これは田中と新太のポジションによるところが大きいのでしょう。前半は田中が1.5列目あたりで新太が左サイドハーフ。後半はそれを入れ替えました。その結果の守備の安定。『意味のある走り』の質は、新太より田中のほうが高いことを示していそうです。
 田中がサイドハーフに入ることで右サイドハーフの戸嶋とともに、『味方を助ける頑張り』が左右バランスよく配備されました。新太はやはり中央にいたほうが解放されるのか、プレスも効かせやすくなった印象です」(平澤メモ)

 なるほど。左右の献身的な動きのバランスか。ひとりの能力がどうということでなく、その長所の生きる場所に置いてやり、それを別のひとりと関連づけ、チームのバランスをつくる。あるいはそういう場所やバランスをひとつひとつ探していく。たぶん加藤大の良さが出たのも、後ろにカウエがいる安心感からだろう。そうやって考えるとパズルのようだ。あらかじめ「完全な選手」がいるわけじゃなく、「完全な動き」があるわけでもない。持ち味を組み合わせてチームにしていく。

 それからこの試合は「梶山用兵」であった。やっぱり梶山が入るとチームが変わる。考え方がはっきりする。いつも言ってきた表現をすると「梶山用兵」は武器だ。キープでき、タテの勝負パスが出せるスペシャルな存在だ。残り試合のどのくらい稼働できるのだろう。そして「梶山用兵」に合わせた前線の連携はつくられるのか。この日のスコアレスドローが如実に示す通り、サッカーは得点を奪わないと勝てない。今季、アルビが直面したのはJ2の難しさだ。守りを固められるとなかなかこじ開けられない(例えばオープンゲームになった横浜FC戦は快勝している)。「梶山用兵」はその打開策たり得るのか。

 以上が31節愛媛戦のレビューだが、今週はクラブ人事で大きな動きがあった。アルビレックス新潟は9月3日(月)、臨時取締役会を開き、役員改選を議決した。それを受け4日、人事面の刷新を発表したのだ。成績不振の責任を取り、中野幸夫社長が12月31日をもって退任、また9月2日付で木村康彦強化部長を解任し、神田勝夫・前部長を復職させた。もう一つ注目はアルビレックス新潟シンガポールの是永大輔社長の、取締役から専務取締役への昇格である。

 5日付の新潟日報は「J2新潟 社長、強化部長刷新/残留へ『最後のカード』」(運動面)「J2新潟 中野社長退任/12月31日付 成績不振で引責」(社会面)と大きく報じた。それだけインパクトのある出来事だった。僕はサッカーライターの知人から問い合わせを受けた。成績不振を理由に社長、強化部長、監督が揃ってシーズン半ば、退任を決めたケースはたぶんJリーグ初じゃないだろうか。

 同じ5日付日報運動面には神田勝夫・新強化部長の取材記事が掲載され、そのなかで神田さんは「僕の使命はJ3に行かせないこと」と明言している。大見出しの「残留へ『最後のカード』」もそうだが、もう「1年でJ1復帰」の建前はかなぐり捨てたのだ。神田さんは実際問題、去年J2降格の責任を取って辞めた強化部長さんなわけで、ここで同じ人が復職というのはいかにも見栄えがしない。が、そんなこと気にしていられないということなのだろう。

 見栄えがしないという点では、去年までJ1にいたチームが、社長と強化部長と監督を代えてまで「J2残留」を目指すというのは本当に見栄えがしないことだ。が、なりふり構わずそこにフォーカスすることになった。神田部長は「(現有戦力の)パフォーマンスをどう向上させるかに尽きる」とし、どういう方向性のサッカーが勝てるか、結果が出るかについて「新潟が昔から持っていた戦い方」と見方を示している。来季以降、クラブがどう舵取りをしていくのかは不鮮明だが、とりあえず今季の残り試合については多少見えてきた。

 というわけで当コラムも「J2残留」をよりはっきり打ち出そうと思う。例年のJ2成績をベースにすると残留ラインは勝ち点40だ。つまり、少なくともあと3勝は必要になる。なるべく早く1勝がほしい。勝てないままずるずる行くと、例えば選手も来季の身の振り方を考えるようになって志気が下がってしまう。ここからは本当にリアリズムだ。アルビがよく揶揄(やゆ)されてきた「残留力」を示すときだ。

 もちろん僕はできると信じている。同じ方向を向いたときのアルビはこの上なく強い。そしてこれはJリーグ史上の非常事態なのだ。この2年間は何だったのだろう。次の岐阜戦は運命の一戦になるんじゃないか。


附記1、ニンスタでは河原和寿、前野貴徳の両選手が挨拶に来てくれましたね。心温まる光景でした。

2、加藤大選手が出場できたのは、僕らにとってはもちろん、愛媛サポにとっても素晴らしいことでした。

3、中野社長は年内いっぱい仕事を続けてくださるわけですけど、1年にも満たない期間で職を解かれた木村康彦さんの心中を思います。おつかれ様でした。ありがとうございます。ハートの熱い、良さそうな方だったけどなぁ。

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