【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第2回
2009/3/19
「東北電力・自宅ビッグスワン」
そうしたら驚いたことに14日(土)、ひかりTVのチューナーが自宅へ届いたんである。第2節「新潟×鹿島」の前日だ。ひとつの想像としては、ひかりTVを運営する株式会社NTTぷらら内部に新潟サポが存在する可能性が打ち消せない。何しろ申し込みの時点で「3月下旬のお届けになります」と明言されていたのだ。あるいはこういうものはクレーム対策として、多少、余裕を持たせた日にちを言うのか。
とにかく僕はあわてて新宿のサッカー・バー「フィオーリ」の予約をキャンセルした。「フィオーリ」は友人から教えてもらった。店内モニターでJリーグ・欧州リーグ等の試合をオンタイムで見せてくれるらしい。たぶんキャンセルせずに出かけていれば鹿島サポと呉越同舟の観戦になったと思う。
「フィオーリ」以外に検討したのは、1.「スカパーの知り合いに談判して、青海放送センターの副調整室か何かで映像を見る」、2.「スカパーと契約しているマンション13階のAさん宅(熱心な柏サポ)に菓子折持参でお邪魔する」であった。まぁ、どちらにしても気をつかう。特に北側棟のAさん宅へお邪魔するとして、移動は30秒かからないが、日曜の午後、一番くつろいでおられるときだもんなぁ。
さっそくチューナーをセットして、「新潟×鹿島」の動画配信時刻をチェックする。PCやケータイ速報の類は一切見ないように気をつけた。結局、試合を見たのは日曜深夜というか月曜未明だったんだけど、何かこう、UEFAチャンピオンズリーグを見る感覚に近かった。
映像が感動的に美しい。普段、ケーブルテレビのアナログ放送を見慣れた目にピッチの芝がまぶしく映る。ビッグスワンがここにある。隅田川右岸の自宅マンション・リビングルームにビッグスワンがひろがっている。
J1第2節「新潟×鹿島」だ。会場は東北電力・自宅ビッグスワン(ウソ)。このカードはしばらく勝ってないんじゃないのと思ったら「04年10月以来」らしい。確か05年5月、ファビーニョ&喜多で2点先制し、終盤、鈴木隆行&小笠原にやられて引き分けた試合を見に行った記憶がある。分が悪い相手だが、先週ミッドウィーク、ACLの水原三星戦を戦って、疲れが出ている可能性がある。去年もこの時期、鹿島は長いトンネルに入った。
対する新潟は腕試しだ。09年モデルのチームが、「現在、完成度No.1」と評される鹿島にどれだけ通用するか。両軍、攻守の切り替えを発想の土台に置いたサッカーだ。見るべきは、どちらがより走るのか。ホームの利があり、日程も楽な新潟が走り負けてはならない。
ゲームイメージは前日、NHKで見た「山形×名古屋」に似ていた。あの試合は後半の雪が話題になり、「シーズン秋春制ぜんぜん無理」の印象を全国のお茶の間に届けたが、前半20分まで山形が攻勢だった。名古屋は試合の入りが重かった。名古屋同様、ACLを韓国で戦って、国内移動してきた鹿島も入りがよくない。
新潟は電光石火の攻撃を見せる。9分、セットプレーから矢野がスラして先制、12分、マルシオ・リシャルデスがカットして持ち込み、大島&矢野がゴール前へなだれ込んだその大外・左サイドを長駆駈け込んだペドロ・ジュニオールの追加点。
で、その後は守り勝ってしまった。欲を言えば、その後、相手が出てきたところでカウンターの3点めが欲しかった。だけど特に後半、小笠原がゲームコントロールをして、刃物みたいなマルキーニョスが飛び出してくるのをよく防ぎきった。すんごい走ってたよ、特に矢野貴章。彼はゴールも決めたし、後半30分過ぎ、千代反田が止血措置してる間、DFを務めたりして3人分くらい働いた。
終了間際の失点は次節、敵地の大分戦を思うと反省材料だ。次節は1点が重い試合になる。腕試しは続く。線路も続く。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
そうしたら驚いたことに14日(土)、ひかりTVのチューナーが自宅へ届いたんである。第2節「新潟×鹿島」の前日だ。ひとつの想像としては、ひかりTVを運営する株式会社NTTぷらら内部に新潟サポが存在する可能性が打ち消せない。何しろ申し込みの時点で「3月下旬のお届けになります」と明言されていたのだ。あるいはこういうものはクレーム対策として、多少、余裕を持たせた日にちを言うのか。
とにかく僕はあわてて新宿のサッカー・バー「フィオーリ」の予約をキャンセルした。「フィオーリ」は友人から教えてもらった。店内モニターでJリーグ・欧州リーグ等の試合をオンタイムで見せてくれるらしい。たぶんキャンセルせずに出かけていれば鹿島サポと呉越同舟の観戦になったと思う。
「フィオーリ」以外に検討したのは、1.「スカパーの知り合いに談判して、青海放送センターの副調整室か何かで映像を見る」、2.「スカパーと契約しているマンション13階のAさん宅(熱心な柏サポ)に菓子折持参でお邪魔する」であった。まぁ、どちらにしても気をつかう。特に北側棟のAさん宅へお邪魔するとして、移動は30秒かからないが、日曜の午後、一番くつろいでおられるときだもんなぁ。
さっそくチューナーをセットして、「新潟×鹿島」の動画配信時刻をチェックする。PCやケータイ速報の類は一切見ないように気をつけた。結局、試合を見たのは日曜深夜というか月曜未明だったんだけど、何かこう、UEFAチャンピオンズリーグを見る感覚に近かった。
映像が感動的に美しい。普段、ケーブルテレビのアナログ放送を見慣れた目にピッチの芝がまぶしく映る。ビッグスワンがここにある。隅田川右岸の自宅マンション・リビングルームにビッグスワンがひろがっている。
J1第2節「新潟×鹿島」だ。会場は東北電力・自宅ビッグスワン(ウソ)。このカードはしばらく勝ってないんじゃないのと思ったら「04年10月以来」らしい。確か05年5月、ファビーニョ&喜多で2点先制し、終盤、鈴木隆行&小笠原にやられて引き分けた試合を見に行った記憶がある。分が悪い相手だが、先週ミッドウィーク、ACLの水原三星戦を戦って、疲れが出ている可能性がある。去年もこの時期、鹿島は長いトンネルに入った。
対する新潟は腕試しだ。09年モデルのチームが、「現在、完成度No.1」と評される鹿島にどれだけ通用するか。両軍、攻守の切り替えを発想の土台に置いたサッカーだ。見るべきは、どちらがより走るのか。ホームの利があり、日程も楽な新潟が走り負けてはならない。
ゲームイメージは前日、NHKで見た「山形×名古屋」に似ていた。あの試合は後半の雪が話題になり、「シーズン秋春制ぜんぜん無理」の印象を全国のお茶の間に届けたが、前半20分まで山形が攻勢だった。名古屋は試合の入りが重かった。名古屋同様、ACLを韓国で戦って、国内移動してきた鹿島も入りがよくない。
新潟は電光石火の攻撃を見せる。9分、セットプレーから矢野がスラして先制、12分、マルシオ・リシャルデスがカットして持ち込み、大島&矢野がゴール前へなだれ込んだその大外・左サイドを長駆駈け込んだペドロ・ジュニオールの追加点。
で、その後は守り勝ってしまった。欲を言えば、その後、相手が出てきたところでカウンターの3点めが欲しかった。だけど特に後半、小笠原がゲームコントロールをして、刃物みたいなマルキーニョスが飛び出してくるのをよく防ぎきった。すんごい走ってたよ、特に矢野貴章。彼はゴールも決めたし、後半30分過ぎ、千代反田が止血措置してる間、DFを務めたりして3人分くらい働いた。
終了間際の失点は次節、敵地の大分戦を思うと反省材料だ。次節は1点が重い試合になる。腕試しは続く。線路も続く。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。