【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第16回

2009/7/2
「万博初勝利」

 J1第14節、G大阪×新潟(万博)。1ヶ月ぶりのリーグ戦再開だ。読者はどんな感じですか。「待ちに待った」なのか、「もう来ちゃった」なのか。今シーズンの新潟はトゥーマッチというのか、要素が多い。出足が良く、優勝圏内の3位につけている代わりに、チーム初の公式戦5連敗でこの日を迎えてしまった。

 しかも、鬼門・万博競技場である。ガンバ戦自体は昨シーズン最終節を思い起こすまでもなく、勝利している。が、こと万博にかぎって考えると「2分3敗」と全然勝ててない。

 もうひとつ梅雨の晴れ間というのが厄介だ。15時半キックオフで、気温27.9℃。ピッチレベルでは30℃近いむし暑さだ。関西はホントに暑い。これが「比較的涼しい新潟から来たチーム」プラス「南半球(冬)から帰国したエース」の体力を奪う。

 ガンバはグァム帰り(ミニ・キャンプ明け)。遠藤、明神、山口、レアンドロが使えず、加地、二川が戻って来た。翌水曜日にACLの川崎戦が控えている。大一番の前に当たるという意味では、昨シーズン最終節に似ているかも知れない。

 試合が始まって、ガンバの単調さにこりゃいいぞと思う。主力の欠場、特に遠藤不在が響いている。主導権の奪い合いは互角に推移するが、新潟の攻めの方が見ていて凄味がある。ペドロ・ジュニオールが完全に復調している。先取点だ。先取点を奪え。それで色んなことが楽になる。この時間帯に先制して欲しい。

 そうしたら31分、帰って来た男・矢野貴章のボレーが決まる。内田が右サイドから入れて、松下が頭で折り返し、大島が更に頭でパスを渡し、矢野貴章ダイレクトボレーという豪快な得点。ガンバDF陣を左右に振った。又、矢野のシュートがジャストミートせず、手前でショートバウンドして高く弾んだのもGK・藤ヶ谷のタイミングを狂わせる。

 そのジャストミートしなかったところにこだわりたい。展開のイメージは出来ていた。内田はファーの松下を見ていたし、松下は大島に渡そうとした。大島は右後方で矢野がフリーになってるのを感じていた。2人の頭のパスは高度だ。僕のイメージではドイツっぽい技術。

 で、トスバッティングの要領で矢野にボールが出た。矢野は右足をバットにした感じで振り抜く。ボールの上っツラを叩いた。手前でショートバウンドする「人工芝ヒット」だ。「人工芝ヒット」のタイムリーは効く。どうしようもないからだ。得点した側には「点をもぎとった」手応えと、「今日はツイてる」という感覚を残す。守備側にはその逆を。

 後半になってガンバは二川が入り、攻めにリズムが生まれた。二川は今季初出場とのこと。動きの質が良く、得点の気配がしてくる。新潟は無理をしない。暑さもあるし、引き気味に構えてカウンターを狙う意図だ。まぁ、よく集中して守った。「全員守備」の選手たちも、GK・北野も、ゴールポスト&クロスバーも。

 新潟に追加点が生まれたのは、そのじりじり耐え忍んでた時間帯だ。松尾、永田が負傷交代し、鈴木淳監督も動くに動けない。チームを救ったのはマルシオ・リシャルデスのスーパーゴールだった。37分、ペドロから受けて、ミドルの位置から電光石火のシュートを放つ。

 鬼門突破だ。こんにちはこんにちは、万博初勝利。こんにちはこんにちは、握手をしよう。今日はチームが本当に集中していた。鈴木淳監督は相当ネジを巻いたんじゃないかと思う。

附記1、今週は「矢野貴章が欧州挑戦! 独、仏で移籍先探し」(スポニチアネックス/6月24日7時6分配信)等々で持ちきりですね。まぁ、今の段階では大騒ぎしてもしょうがないですよ。確定した話でもないし。矢野選手には次節・名古屋戦、ファン、サポーターのコールに胸を張って応えて欲しい。

2、しかし、移籍事情が変わって、地方クラブ(やJ2クラブ)は厳しい時代を迎えたですね。昨オフの「秋春制」問題といい、何故か新潟に直接ふりかかってくる。これも又、トゥーマッチですねー。

3、和みネタを最後にひとつ。近所のコンビニで「亀田の柿の種・塩だれ」(期間限定)を買って、ガンバ戦の間、ぽりぽり食べてました。これはヒットですね。ホームのときは通常の「亀田の柿の種」、アウェー(白ユニホーム)のときは「同・塩だれ」と使い分けがきく。あ、うちの近所のコンビニ、「勝ちの種」はさすがに売ってないです。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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