【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第34回

2009/11/5
「堅守vs堅守」

 J1第30節、神戸×新潟。
 前半終わって0対0、頭ぐらんぐらんした。まずいところにハマっている。三浦俊也監督のサッカーだ。シーズン途中、「残留請負人」の形で神戸の監督に就任し、ここまで9戦して3勝3敗3分。ここ5戦は勝ち星こそないが、得意の守備重視型のチームを作り上げている。僕はこの人のサッカーを大宮・第一次政権の頃からずっと見ている。ドイツ仕込みのリアリストだ。フィジカルと守備バランスの信奉者と言っていい。

 新潟は前にボールが入らない。これまで対戦成績でお得意さん(6勝0敗3分)にしてきたが、今日は勝手が違う。そもそも「堅守vs堅守」の図式は、特にシーズン終盤戦、厄介なんである。新潟が優勝戦線にからめるかどうかは、早い話、点がとれるかどうかだ。新潟のウイークポイントは皆、わかっている、得点力だ。これまでオープンゲームを仕掛けてくる相手(大概は強豪)には好ゲームを演じてきた。守りを固めてくる相手(下位チームの場合が多い)は苦手だ。ペドロがいて3トップが組めた時期ですらそうだった。打開力というのか、こじ開ける力が足りない。

 たぶんそれは何故、これまで「内弁慶」と言われていたチームが、今季に限ってホームで苦戦してるのかの理由でもあるだろう。個々の試合はそれぞれ色んな要素がからみ合って決着するわけだが、全体を考えると、今年はアウェーで乗り込んでくる相手の守備意識が高いのだ。それは何故かというと、新潟がずーっと上位にいるから。僕は「今年はホームで勝てなくて、どうしちゃったんでしょう」とこぼしてるファンに言いたい。それはあなた、強くなったからですよ。強いチームにアウェーでオープンゲーム仕掛けてくるとしたら、相手はよっぽど自信持ってるとこですよ。前節、浦和ですら「つぶして消すサッカー」やってきた。強くなった。強くなって警戒されるようになった。強くなったんだけど得点力がない。それが現状じゃないでしょうか。

 とはいえ、強くなったぞ、ぬははははと笑ってる場合ではない神戸戦である。この試合は完全に型にハメられている。というかハマリ込んでいる。「堅守vs堅守」は困った試合だ。お互いにカウンターを狙ってるようなもので、こういうの何ていうんですか、『あしたのジョー』で言ったらクロスカウンターでしょうか。スカパー中継の伝える敵将・三浦監督のハーフタイム・コメントに「ガマン比べ」というフレーズがあり、又、頭ぐらんぐらんした。新潟は下手したら、ガマンしてるうちにシーズンが終了しかねないのがつらいところ。

 新潟は得点機自体が少なかったわけだが、後半25分、最大のチャンスが訪れる。松下のCKから矢野のヘッド、そのこぼれ球がファーポスト付近の永田へ転がる。完全なフリーだ。インサイドで流し込むだけでよかった。その左足が空振り。これが痛恨だった。

 神戸は大久保、我那覇投入で仕掛けに入る。両軍さすがにスペースが間伸びしてきた。茂木のポストプレーを受け、ボッティが右から入れてくる。DFが弾いたところを拾った茂木が今度は松岡へ横パス。後半31分、松岡亮輔反転してのJ初ゴール。やられた。神戸の注文通りの試合展開だ。

 試合はその後、新潟・三門、神戸・大久保&我那覇が見せ場を作るが、GKの好守で動かず、1対0で決した。神戸はJ1残留に一歩前進、新潟は優勝戦線から後退したと言うしかない。物を言う気にならないくらい悔しいことだ。
 が、選手はよくやったと思う。残り4節、くじけないで行こう。永田は次、頑張ろう。誰より一番悔しいのは永田本人に違いない。


附記1、といってまだ何ひとつあきらめる必要はないと思うのですよ。目標は4戦全勝。それが何に届くかはわからないけど、せいいっぱい手を伸ばしてみましょう。チームにとっては、ここからの一戦一戦の経験が財産になります。

2、この試合のスカパー中継、タイムアップ後に解説・本並健治さんのマイクがオフって何言ってんだかわかんなくなりましたね。
本並さん「もにょもにょ・・・・」
実況アナ「あー、なるほど」
本並さん「もにょもにょ・・・・」
実況アナ「ほう、そうですか」

3、それもしょんぼりしてるから中笑いだったけど。

4、話全然変わりますけど、最近、我が家では亀田製菓のCMソング「♪何故かしら食べちゃうの何故かしら〜、止まらないの〜は何故かしら、そのヒミツは黄金バランスッ!」がヘビーローテーション状態です。気がつくと歌っちゃってる。あれはチャントにしてもいいくらいの名曲ですね。歌詞の自問自答っぷりもいい。

えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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