【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第51回

2010/5/20
「大仕事」

 J1第11節、清水×新潟。
 読者よ、俺の頭はホーイホーイのドンジャラホイである。おそらく読者も似たりよったりだと信じる。
 やったやった! すんげぇ3連勝だ!
 しかも、黒崎久志監督のバースデー勝利だ!

 新潟は敵地・日本平で清水を破り、リーグ戦初勝利から3連勝のV字回復を見せた。首位・清水は今季無敗(ホーム日本平では引き分けすらなしの全勝)を誇っていた。それに初めて土をつけた。こんな気分のいいことがあるだろうか。
 快挙だ。大仕事だ。
 読者よ、アルビレックス新潟のファン、サポーターやっててよかったなぁ。

 去年、優勝した鹿島に全J1チーム中、唯一、ホーム&アウェーで2勝したのを想起させる。他がどこもやれないことをまんまとやってのけた。これは黒崎アルビ序盤戦の大殊勲でもあるけれど、クラブの伝統というのか芸風に育て上げたいところだ。
 これまでJリーグで新潟の芸風として定評があったのは「観客動員」「ホームに強い内弁慶」というところだろう。「観客動員」はひと頃に比べて減少傾向にあるけれど、依然として他クラブの羨望の的だ。「ホームに強い内弁慶」は何しろ前節・横浜FM戦が久々のホーム勝利だからちょっと実態にそぐわなかった。とはいえ、これは2つとも他サポが新潟と聞いて、まず真っ先に思い浮かべ警戒するところだ。そして2つとも前節、復活を遂げた。

 で、ここに「一番槍」というのか「金星を挙げる」というのか、そういう芸風も加えたいところだ。現にそういう持ち味がある。読者のなかに「それではリーグ5連覇くらいの王者になった場合、どうするのか?」と気宇壮大な苦言を呈す方がおられるかも知れないが、それは横綱になってから考えればいいことだ。今は目立つこと。クラブの存在感を示すこと。

 試合。小野伸二、ボスナー、太田宏介とチームの要を累積で欠く今節・清水戦は千載一遇のチャンスだった。特にDFライン2枚が大きい。僕はセットプレーでチャンスがあるかも知れないなぁと胸算用していた。小野の位置には伊東輝悦が入る。伊東はしぶとい嫌な選手だが、小野中心に今季、抜群の冴えを見せる清水の歯車が狂うかも知れない。

 サッカーの質を言えば前半はパーフェクトだった。リスクを未然に防ぎ、全く攻めさせない。何しろシュートさえ打たせない(前半、清水のシュート数1!)のだ。小野不在の影響はあったに違いないが、新潟の守りも徹底していた。
 得点は10分、CKから西大伍ヘッドの移籍初ゴール!そして40分、ミシェウが中央に持ち込んで個人で決めたもの!

 が、それで終わる試合だなんて誰も考えない。後半は清水のスイッチが入った。これが厄介だったんだ。スキをついて、攻撃陣が変幻自在に顔を出す。後半は気持ちの戦いだ。気持ちで負けない。新潟は後半、その気持ち、執念のようなものがパーフェクトだったと思う。それはサッカーを構成する最も大事な要素でしょう。
 ビッグプレーは46分、藤本淳吾がドリブル突破から打ったシュートを至近距離で防いだ東口。あれが決まってたら清水はカサにかかって来た。この完封試合は東口をはじめ、チームにとって大いに自信になる。


附記1、ロスタイム3分の筈が、何かビミョーに長くてドキドキでしたね。黒崎監督(は、ゲンかつぎのスーツをやめてジャージ&キャップのスタイルに決めたようです)が時計を指さして何度もアピールしてた。某掲示板にそれを「見てー見てー、俺の時計ロレックス!」って書き込んだ人がいて笑ったなぁ。今、思い出しても笑える。

2、2点目が決まった後、ミシェウさんがスカパーのカメラへ向かって来て、アップで映ったのすごくよかった。

3、そして皆さん、矢野貴章選手のW杯メンバー入りおめでとうございます!クラブ初のW杯日本代表選手ですね。素晴らしいことです。こうなったらアフリカ大陸で一世一代の大暴れを期待したいですね!!

4、最後にフィジコのマルセロさんの御病気について触れざるを得ません。報道を見て、衝撃を受けました。とりあえず今週、ビッグスワンへうかがうので何か出来ないかなと思います。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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