【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第54回
2010/6/10
「黒さんvs淳さん」
ナビスコ杯(Aグループ)第5節・新潟×大宮。
ミッドウィークの京都戦(第4節)に敗れ、グループリーグ突破へもう後がない。が、この日は特別な趣向があった。去年までチームを指揮した鈴木淳監督が敵将としてビッグスワンへ帰って来る。
大宮・張外龍監督の退任に続く、鈴木淳監督の電撃就任は、新潟サポーターに衝撃をもって受け止められた。敵にまわしてこれほど厄介な監督さんはいない。今のチームの全てを知っているという意味では、反町さん以上だ。それが(この先、どうなるかはわからないものの)就任時点の順位の上では、「残留争いのライバル候補」を指揮することになった。
又、その時点で新潟はリーグ戦未勝利だった。日程を見れば最終2節はアウェー大宮戦、ホーム湘南戦だ。最悪のシナリオは「これまでの指揮官、在籍選手に送られてJ2降格」だろう。そんな悪夢があるだろうか。走馬灯だ。鈴木淳監督、アン・ヨンハ、北野・・。反町康治監督、野澤、寺川、松尾・・。新潟は、新潟のレジェンド(伝説)によって葬送される。
もちろん、逆もあり得る。それはそれで強烈な体験だろう。最終2節で大宮や湘南がJ2へ沈む。それに新潟が直接、手を下す。この場合、新潟は自らのレジェンドを弔う形になる。分かち難い思い出、感情に一線を引かねばならない。
まぁ、先のことは言っても始まらない。今から勝手な想像をして涙ぐんでてもしょうがない。できればこれから3チームが破竹の快進撃をして、最終2節は優勝争いなんてことになればいい。
つまりこのカップ戦の一戦は、当面の主題・グループリーグ突破も大変重要だけど、それ以上の意味があるのだ。もしかすると、とてつもなく濃密な何かの予告編であるかも知れない。
鈴木淳監督は目下、チームを整備中だ。エース、ラファエルが戻って来た。
「共に同じようなサッカー」(試合後、黒崎監督の会見コメントより)をするのは、ある意味、必然でもあるだろう。
試合は序盤からめまぐるしかった。前半8分、青木&石原にいきなり決定機を作られるが、ツキもあってしのぐ。あれ決まってたら、3点くらい入れられて負けてた可能性もある。
僕はこの対決でポゼッションはどういう感じに落ち着くのかなぁと思って見ていた。奪ったり奪われたりの連続で、なかなか局面が落ち着かない。が、次第にどうも持たせてもらえるらしいとわかる。新潟のキープ&展開、大宮のカット&カウンターという図式。
選手の出来を言うと新潟の方がずっと良かった。っていうか大宮に手ひどいミスをしてくれる選手、消えてる選手がいた。だけど、次にぶつかるときはもっと整備が進んでるだろう。ショートカウンターが鋭いだろう。それはよーくわかってます。いや、これ名勝負の予感だなぁ。
試合を決したのは後半37分、マルシオのゴールだ。大宮にとっては「同点で終盤、マルシオ」という去年の埼スタの再現。ヒーローインタビューには再三、好セーブを見せた東口が登場する。東口は鈴木淳監督、北野の前で成長した姿を見せる機会を持った。
ふたりの監督が会見でどういう表情を見せるのか、興味津津で見つめたけれど、思いのほか淡々とした印象だった。又、それほどつっ込んだ質問をする記者もいなかった。だけど、彼らが特別な思いでこの一戦を戦ったことは充分見てとれた。このカードはこれから本当に楽しみだ。
附記1、この日は愛車VWポロで日帰り観戦でした。面白かったのは帰路、偶然、赤城高原SAで大宮のチームバスと一緒になり、ラファエルと連れションするという貴重な経験(?)をしたことです。大宮の選手は「帰着した後、どうタクシーに分乗するか」を主に話してました。
2、僕は以前から気になっていたんですけど、ビッグスワンの監督会見は質問が少ないですね。まぁ、大住良之さん、後藤健生さん級の評論家がいなくて、新聞記者主体ということが大きいんだと思います。記者さんは会見では「選手交代の意図」を聞くぐらいです。本音っぽいコメントは会見後、囲み取材で取ろうとする。首都圏開催のゲームはもっとディベートっぽい感じになることがあります。やっぱり一番面白かったのは、千葉の監督をしてた頃のオシムさんの会見ですね。
3、今週末はナビスコ杯お休みでちょっとつまんないですね。次回のコラムはこないだセイローへ行って考えたことを書こうかなぁと思います。あとW杯期間中どうするか、目下、関係各位と検討中です。何か書く方向みたいですけど。
4、そうそう、この連載が本になりそうです。詳細はまだお知らせできないんですけど、その方向で動きだしてます。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
※アルビレックス新潟からのお知らせ
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。
更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
ナビスコ杯(Aグループ)第5節・新潟×大宮。
ミッドウィークの京都戦(第4節)に敗れ、グループリーグ突破へもう後がない。が、この日は特別な趣向があった。去年までチームを指揮した鈴木淳監督が敵将としてビッグスワンへ帰って来る。
大宮・張外龍監督の退任に続く、鈴木淳監督の電撃就任は、新潟サポーターに衝撃をもって受け止められた。敵にまわしてこれほど厄介な監督さんはいない。今のチームの全てを知っているという意味では、反町さん以上だ。それが(この先、どうなるかはわからないものの)就任時点の順位の上では、「残留争いのライバル候補」を指揮することになった。
又、その時点で新潟はリーグ戦未勝利だった。日程を見れば最終2節はアウェー大宮戦、ホーム湘南戦だ。最悪のシナリオは「これまでの指揮官、在籍選手に送られてJ2降格」だろう。そんな悪夢があるだろうか。走馬灯だ。鈴木淳監督、アン・ヨンハ、北野・・。反町康治監督、野澤、寺川、松尾・・。新潟は、新潟のレジェンド(伝説)によって葬送される。
もちろん、逆もあり得る。それはそれで強烈な体験だろう。最終2節で大宮や湘南がJ2へ沈む。それに新潟が直接、手を下す。この場合、新潟は自らのレジェンドを弔う形になる。分かち難い思い出、感情に一線を引かねばならない。
まぁ、先のことは言っても始まらない。今から勝手な想像をして涙ぐんでてもしょうがない。できればこれから3チームが破竹の快進撃をして、最終2節は優勝争いなんてことになればいい。
つまりこのカップ戦の一戦は、当面の主題・グループリーグ突破も大変重要だけど、それ以上の意味があるのだ。もしかすると、とてつもなく濃密な何かの予告編であるかも知れない。
鈴木淳監督は目下、チームを整備中だ。エース、ラファエルが戻って来た。
「共に同じようなサッカー」(試合後、黒崎監督の会見コメントより)をするのは、ある意味、必然でもあるだろう。
試合は序盤からめまぐるしかった。前半8分、青木&石原にいきなり決定機を作られるが、ツキもあってしのぐ。あれ決まってたら、3点くらい入れられて負けてた可能性もある。
僕はこの対決でポゼッションはどういう感じに落ち着くのかなぁと思って見ていた。奪ったり奪われたりの連続で、なかなか局面が落ち着かない。が、次第にどうも持たせてもらえるらしいとわかる。新潟のキープ&展開、大宮のカット&カウンターという図式。
選手の出来を言うと新潟の方がずっと良かった。っていうか大宮に手ひどいミスをしてくれる選手、消えてる選手がいた。だけど、次にぶつかるときはもっと整備が進んでるだろう。ショートカウンターが鋭いだろう。それはよーくわかってます。いや、これ名勝負の予感だなぁ。
試合を決したのは後半37分、マルシオのゴールだ。大宮にとっては「同点で終盤、マルシオ」という去年の埼スタの再現。ヒーローインタビューには再三、好セーブを見せた東口が登場する。東口は鈴木淳監督、北野の前で成長した姿を見せる機会を持った。
ふたりの監督が会見でどういう表情を見せるのか、興味津津で見つめたけれど、思いのほか淡々とした印象だった。又、それほどつっ込んだ質問をする記者もいなかった。だけど、彼らが特別な思いでこの一戦を戦ったことは充分見てとれた。このカードはこれから本当に楽しみだ。
附記1、この日は愛車VWポロで日帰り観戦でした。面白かったのは帰路、偶然、赤城高原SAで大宮のチームバスと一緒になり、ラファエルと連れションするという貴重な経験(?)をしたことです。大宮の選手は「帰着した後、どうタクシーに分乗するか」を主に話してました。
2、僕は以前から気になっていたんですけど、ビッグスワンの監督会見は質問が少ないですね。まぁ、大住良之さん、後藤健生さん級の評論家がいなくて、新聞記者主体ということが大きいんだと思います。記者さんは会見では「選手交代の意図」を聞くぐらいです。本音っぽいコメントは会見後、囲み取材で取ろうとする。首都圏開催のゲームはもっとディベートっぽい感じになることがあります。やっぱり一番面白かったのは、千葉の監督をしてた頃のオシムさんの会見ですね。
3、今週末はナビスコ杯お休みでちょっとつまんないですね。次回のコラムはこないだセイローへ行って考えたことを書こうかなぁと思います。あとW杯期間中どうするか、目下、関係各位と検討中です。何か書く方向みたいですけど。
4、そうそう、この連載が本になりそうです。詳細はまだお知らせできないんですけど、その方向で動きだしてます。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
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