【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第61回

2010/7/29
「行きつけのサッカー」

 J1第13節、新潟×C大坂。
 長いW杯中断が明けてJリーグが帰ってきた。まずその歓びを記しておきたい。「世界最高峰の戦い」に魅了され、多くを学び、感じ取ったその後に、自分たちの「行きつけのサッカー」が存在する嬉しさだ。
 ここに全てがある。ビッグスワン、3万4千強の観客はそれをかみしめた。いつもの席、いつもの角度から見るピッチの美しさ。貴章、高徳が帰ってきた。アルビが帰ってきた。サッカーが帰ってきた。はっきり自分がその一部であることを自覚する。

 新潟は中断をはさんで、初の「J1・5連勝」を目指す。中断明け直前のJ2草津戦はワンサイドの大勝だった。一方、C大坂はミッドウィークに未消化だった11節・広島戦を戦って中2日のアウェー転戦。こちらも5対0と大勝し、勢いに乗っている。
 こういうのはどちらが有利なのだろう。5週間ぶりの公式戦ながらコンディション万全の新潟か。中2日ながら試合勘の戻ったC大坂か。

 そうしたら、なるほどこうなるのかー、という試合内容だった。
 前半は試合勘のハンデが新潟に作用し、後半は中2日のハンデがC大坂にのしかかる。

 新潟は前半、意図が合わなかった。特に矢野貴章のところがかみ合わず、ノッキングを起こしている。長くチームを離れていたことがはっきり見てとれる。セットプレーのチャンスもモノにできず、0対0のまま、ハーフタイムに持ち込めれば上々というところ。
 C大坂はW杯のトレンドにもなった「網を張って奪い、すばやく前線へ送るサッカー」だった。ついこないだまで国際映像で見ていた戦術が「行きつけのサッカー」に早くも登場する面白さ。

 新潟は前半を無失点でしのげなかった。44分、CKからアドリアーノのヘッド。 終盤、攻めのリズムが出始めていた時間帯だっただけにもったいない失点。

 とはいえ、こりゃ勝てるだろうという印象だった。後半、セレッソが落ちてくるのは目に見えている。新潟の攻撃はほんの少しズレてしまってるけど、チャンス自体は作れている。黒崎監督のハーフタイムの指示も「後半はどんどん仕掛けていく」だった。

 後半開始、さっそくヨンチョルがミシェウとの壁パスで仕掛ける。セレッソは嫌な感じがしたと思うんだ。続くプレーでマルシオが中央に持ち込んだところ、アマラウがファウルで止める。
 マルシオに又、FKのチャンスをくれた。これは壁に当たってゴールにならなかったんだけど、マルシオの感覚的には大事な伏線となる。
 続いてヨンチョルがクロスに飛び込み、逆襲のカウンターを東口が辛くも抑え、更に再逆襲とめまぐるしく攻守が入れ替わったところで、マルシオが又してもファウルをもらう。この時間帯、セレッソはファウルが多すぎた。ほぼさっきと同じ位置、距離からのFK。
 そりゃあなた、スーパーな選手に何度も蹴らせれば決めますよ。後半11分、マルシオ・リシャルデスの同点弾!ビッグスワンの雰囲気はマックスに達する。

 ですけんその後、圧倒できなかったことの方が僕には意外でした。いや、主導権を握るくらいじゃダメでしょう。「後半、押してた」じゃ物足りない。仕掛けて仕掛けてボコんないと。もう、セカンドボールに対する出足が全然違うんだから、これは勝たないと。

 まぁ、だけど、矢野貴章のオーバーヘッドも見れたし、今日のところはドロー・勝ち点1でよしとしますか。西がいいすねー。東口のフィードも素晴らしいすねー。ここから勝っていきましょう。今年の夏は足踏み厳禁でいきましょう。


附記1、先週書き忘れたんですけど、この日、2010サポーターズCD『Hello World』が発売されたんす。これ久々に僕がライナーノーツ原稿書いとります。アルビ公式サイトのネットショップでもお買い求めになれます。よろしくお願いします。

2、東京マジ暑いです。よろしくお願いします。

3、俺はね、ラブレターコンテスト原稿にあんなことを書いた手前もあって、人生で初めて「青春18キップ」を買いましたよ。さっそく仙台行きで使う気満々だったんだけど、予定が入って断念。ま、チャンスはまだまだありますよ。やっぱ最初は比較的近い東京・新潟間(6時間強?)で身体を慣らすべきか。だけどいつも家で6時間くらい平気で呆けてるけどなぁ。しんどいのかなぁ。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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