【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第84回(後編)

2011/3/31
「鳥を勉強する」

−前編はこちらから−

 ひっくり返ったのは第6章「鳥脳に『美』を教える」であった。驚くなかれ、渡辺教授はハトにモネの絵10枚とピカソの絵10枚を区別させる、という絵画実験を行なっている。やり方はこうだ。ハトをテレビモニターつきの実験箱に入れる。モニターに絵画が映し出されるのだが、このとき、ハトがモネの絵をつつくと餌が与えられ、ピカソでは与えられない。そうするとハトはモネをつつき、ピカソはつつかないようになる。絵を混ぜて見せても個別の絵を見分けるという。
 ステップは進む。次はそのハトに、訓練に使わなかったモネの絵、ピカソの絵、更にルノアールの絵、ブラックの絵を見せるテストを行なった。先の実験だけでは、もしかするとハトは20枚の絵を単に丸暗記しただけかもしれない。そうしたら、ハトは初見であってもモネとピカソの区別をしたのだ。のみならず、モネに反応するよう訓練されたハトはルノアールにも、ピカソの訓練を受けたハトはブラックにも反応した。信じられないことに印象派とキュビズムを見分けたのだ(!)。

 まぁ、興味を持たれた方は『鳥脳力』をご覧いただきたい。ちなみに章立ては「鳥脳に『音楽』を教える」「鳥脳に『論理』を教える」「鳥脳に『言語』を教える」「鳥脳に『自己』を教える」と続いていく。

 同書のなかで具体的に白鳥が登場するのは一箇所だけだった。第1章の中程、「始祖鳥は飛んだか」のくだりである。僕は白鳥の重大なポイントを見逃していた。

 「ヘリコプターを除けば、飛行機は離陸するのに助走を必要とする。一定の速さで助走しなければ飛び上がることはできない。もちろん現代鳥でも白鳥のように飛び上がるために羽ばたきながらの助走を必要とする種もある。始祖鳥の場合、ハトや小鳥のようにいきなり飛び立つことはできない。そして、走る速度は二メートル/秒だと推定された。始祖鳥の大きさから推定される、飛び上がるのに必要な速度は六メートル/秒だと考えられた。したがって始祖鳥は飛び上がれない、というのが結論だった。しかし、一九九九年になって、これらの計算は羽ばたきの推力を考慮していないことがわかった。もし、助走に羽ばたきの推力が加わると始祖鳥の速さは八メートル/秒近くになり、十分飛び上がれたと考えられるのである」(同書・第1章より)

 そうだ、白鳥はテイクオフに助走を必要とする。そう考えると黒崎アルビが去年、初勝利まで時間を要したことも理解できる。そういえばJ1昇格の04年シーズン、本拠地初勝利もどえらい助走をを要しましたね。あのシーズンはほとんど「始祖鳥は飛ぶか否か」の論争くらい本拠地において助走が続いたと記憶します。


附記1、一体、何のコラムだという感じですが、ちょっと読者にリラックスしてもらいたくて今週はこんな話にしてみました。切羽つまった状態が続くとやっぱり苦しくなります。そんなとき、全然違うことを考えるのは頭の休憩になります。鳥すげー。鳥モネわかるんかー。そういうのもないといかんでしょう。

2、アルビは積極的に義援金募金活動に打って出ています。黒崎さんの参加表明を伝える広報・栗原さんのツイート、「▲」には笑った。それから東口順昭選手の代表選出は実に意義深いことだと思います。凄いなぁ、去年の今頃は控えキーパーだもんなぁ。

3、僕も今週は日光アイスバックスの選手らと義援金呼びかけ、来週は東京・阿佐ヶ谷ロフトで支援野球イベントを主催する予定です。あ、それから『季刊レポ』(←僕のホームグラウンド誌)が北尾トロ編集長の英断で、バックナンバー購入代金の全額寄付活動「レポチャリ」を開始しました。よかったらサイトをご覧下さい。 

えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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