【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第87回(前編)

2011/4/21
「再開幕へ向けて」

 トレーニングマッチ、大宮×新潟(4月9日12時半開始、熊谷)。
 出版社勤務の友人がクルマを出してくれた。友人は熱心な大宮サポで、スポーツ誌の編集部にいた頃から記者席ではなく、年間シートで試合を見続けている。アルビサポに例えると「関東サポ」に近い立場だろう。大宮は市制変更でさいたま市に組み込まれてしまった彼の故郷だ。結婚して千葉県近郊に住むが、試合の度に実家へ顔を出す。現在は電子メディア事業部へ異動になって、今度の震災では国民的マンガ誌のウェブ配信の最前線で奮闘した。

 「えのきどさんが声かけてくれたおかげで、熊谷へ行ける感じになりました」

 僕は首都圏のリアリティを知ってもらいたい。当日は雨の予報だった。あんなサッカーバカの友人が家族に反対されたというのだ。理由はもちろん福島原発のもたらした放射性物質の恐怖感である。政府、東電の情報公開が乏しく、僕らは疑心暗鬼のなかで生活している。それどころか情報統制に思える動きもある。ウェブやツイッター上ではデマも流通したけれど、必ずそれを打ち消す自浄作用も働いている。ところが総務省はその一元的な削除をプロバイダー等、管理者に要請した。叉、気象学会は会員である研究者らに、自前の放射性物質拡散データを公表しないよう通達している。今や大新聞ですら「ドイツ気象庁」の拡散データをもとに記事を書いているのだ。意味がわからない。どうも僕らはホントにバカだと思われているらしい。あいつらバカだから情報を出すとパニックになるということだろう。そんなに程度を低く見積もらなくていいじゃないか。

 僕は政治的にはノンポリもいいところで他人に笑われたりするのだけど、これから例えば大連立ということになって、みんな一丸となって復興へ力を注ぐのは大変いいことだけど、その一方で「復興翼賛体制」化してますます情報が出なくなったら困るなぁと思う。野党のチェックが働かなくなるのだ。せめてメディアにはチェック機能の役割を果たしてもらいたい。熊谷へ向かう車中、友人とはそんな話ばかりだった。僕は友人に2泊3日の旅行でもいいから、西日本へ短期疎開するのをすすめた。一日中、ウェブやツイッターを眺めていると、家族もストレスを抱え込む。九州新幹線にでも乗って温泉に行ってきたら、だいぶ気持ちも変わるんじゃないか。

 熊谷競技場は屋根のあるメインスタンドのみの開放だった。入場無料。先週のビッグスワンと違って、断幕もチャントもない静かな練習試合。たぶん2、3千人くらいの観客のうち、4割方は新潟サポじゃなかったか。埼玉県北部の熊谷は、大宮からちょっと遠くてアルディージャはいつも動員に苦労する。本来のNACK5スタジアムは万全に復旧され、サポーターの支援物資集積所として機能する等、大活躍と聞く。来週は仙台とのトレーニングマッチを開催する予定だ。

後編に続く


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