【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第92回
2011/5/26
「宣福初スタメン」
J1第11節、新潟×柏。
NHK-BS1の録画中継にて観戦。えぇーっ、何で生中継じゃないのぉーと思ったが、この試合は元々ナイター開催が予定されていたのだった。ま、19時からのNHK中継の方が本来だったともいえる。震災後、変更されたキックオフ時間にNHKの番組編成が追いつかなかった。
で、首位・柏をスワンに迎える一戦である。もはや柏レイソルの好調は疑いない。僕の住む東京都台東区のマンションには熱心な柏サポがお住まいで、震災直後、情報交換なんかをしていて「とりあえず首位なんですけど(と、僕らは何の話題でもまずJリーグの話から入る)、もう、食器が割れて大変でした」なんて感じだったんだけど、リーグ再開後も勢いが止まらない。
ちょっと脱線。僕に『ジャイアントキリング』情報をもたらしてくれたのが、その柏サポのAさん御一家だった。ちょうど去年、NHKでアニメが始まる前くらいかなぁ。いや、あのマンガ、僕んちのあたりが舞台なんですよ。「台東リバーサイドスポーツセンター」って区営施設がそのまんま出てくる。スタジアムは日立台がモデルなんだけど、うちから徒歩4分くらいの場所に移築されたみたいな設定なんだ。ETUの選手にも「石浜」とか「清川」とか、ここら辺の地名が採用されてる(ちなみに僕んちは石浜通りです)。いや、だからETUは僕にとってもAさんにとっても「地元クラブ」だ。僕の散歩コースはETUの練習用ピッチ(実際には2面の野球グラウンド)の横を抜けて、桜橋を渡るのが決まりだ。
一方、新潟もここまで5戦負けなし。NHK録画中継の話も含め、もう何が本来かよくわからないのだが、本来であれば好調どうしの楽しみな一戦だったのじゃないか。というのは新潟に故障者があい次ぎ、とても「本来」とは呼べない状況だったのだ。「非常事態」でいいだろう。メンバー選考に関して黒崎監督は選択肢がなかった。ベンチ入りしてない選手が全員、ケガか体調不良だ(厳密にいうと大島選手のように完調ではないが、ベンチ入りしたケースもある)。
チョ・ヨンチョル、ブルーノ・ロペス抜きの布陣は「飛車角抜き」と報じられた。個人的には田中亜土夢に期待をかけた(前回コラム参照のこと)が、脚を痛めてしまった。川又も体調不良だ。何と前節、途中出場でJデビューを果たしたばかりの酒井宣福がスタメンを張る。高卒ルーキーには、これ以上ない経験だ。こうなったらがむしゃらに行ってほしい。
新潟のベースは守備の堅実さだ。しぶとく守り抜いて、敵サイドバック、ジョルジ・ワグネルのウラへボールを入れる。そこを起点に2列めが駆け込む得点パターンだなぁ。新潟としてはとにかくロースコアの競り合いに持っていきたい。実際、序盤は好調・柏の攻撃をどうにかしのいでいた。
が、次第に人の間に入られ、ギャップが作られていく。「攻略」モードになってから、柏がめちゃめちゃ元気だ。守りだけじゃ押し返せない。敵陣にボールがおさまらない。僕は柏がやってるような「攻略」の仕掛けを去年、ミシェウが嬉々としてやってたなぁと思い出す。今、ピッチのミシェウさんは身体を張ったおさまりどころになるにしてはセンが細い。
前半23分、左サイドのもつれたところからジョルジ・ワグネルの個人技ゴール。この選手を上がりにくくしようと考えたわけだから、いかにプランが崩れたかということでもある。だけど、スーパーゴールはある意味、あきらめがつく。問題はこの後、いかに粘れるか。
前半終わり間際、新潟にこの日、最大のゴールチャンスが訪れる。いや、結果的にスタッツ上「シュート1本」だから唯一のというべきか。本間の落としにミシェウだった。バウンドが合わない。シュートは力なく敵GK・菅野の手におさまる。
後半はきびしかったなぁ。完全にゲームを支配された。ほぼノーチャンスといっていい内容。粘れませんでした。失点の描写は省く(後半16分・近藤、後半36分・工藤)。あぁ、やられるなぁ、これはやられるなぁと思って、やっぱりやられた。それがどういうやっぱりだったかについて熱心にはなれません。
まぁ、柏の強さも本物なのだろう。新潟は今季最多の3失点で敗れる。が、あえていえば新潟としては別に凹む試合じゃない。今季初黒星だ。敗れた理由もはっきりしている。
選手層の薄さははっきり見えてしまった試合だ。が、控えを厚くするには補強するか、若手に出場機会を与えるしかない。僕らは「何もできなかった酒井宣福」を覚えていればいい。根性があればこの試合を成長の糧とするだろう。
1、だから誰も凹む必要ないです。千葉選手も凹むな。これもサッカーです。次が大事。それよりこの試合、新潟出身の選手が5人(本間、酒井兄弟、長谷部、大野)もピッチに立ったんですよ。完敗の試合ではあるけれど、クラブ史の到達点じゃないですか。その意味でも亜土夢も出てほしかった。
2、JR東日本の復興支援企画「JR東日本パス」って凄いですね。第1回が6月11日から20日、第2回が7月9日から18日。何と新幹線も含め、東日本エリア1日乗り放題1万円です。日程を調べると第1回は関東サポ等のスワン観戦、第2回は新潟からのアウェー観戦にばっちり使えます。
3、ってことは6月18日の仙台戦、僕は朝早く上野を出て用もないのに長野へ行って善光寺さんお参りした後、大急ぎで大宮へとって返してスワンへ急行、試合後はダッシュで新潟駅へ駆け込めば終電に間に合って1万円で帰京可能ってことですね。落ち着きがないなぁー。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第11節、新潟×柏。
NHK-BS1の録画中継にて観戦。えぇーっ、何で生中継じゃないのぉーと思ったが、この試合は元々ナイター開催が予定されていたのだった。ま、19時からのNHK中継の方が本来だったともいえる。震災後、変更されたキックオフ時間にNHKの番組編成が追いつかなかった。
で、首位・柏をスワンに迎える一戦である。もはや柏レイソルの好調は疑いない。僕の住む東京都台東区のマンションには熱心な柏サポがお住まいで、震災直後、情報交換なんかをしていて「とりあえず首位なんですけど(と、僕らは何の話題でもまずJリーグの話から入る)、もう、食器が割れて大変でした」なんて感じだったんだけど、リーグ再開後も勢いが止まらない。
ちょっと脱線。僕に『ジャイアントキリング』情報をもたらしてくれたのが、その柏サポのAさん御一家だった。ちょうど去年、NHKでアニメが始まる前くらいかなぁ。いや、あのマンガ、僕んちのあたりが舞台なんですよ。「台東リバーサイドスポーツセンター」って区営施設がそのまんま出てくる。スタジアムは日立台がモデルなんだけど、うちから徒歩4分くらいの場所に移築されたみたいな設定なんだ。ETUの選手にも「石浜」とか「清川」とか、ここら辺の地名が採用されてる(ちなみに僕んちは石浜通りです)。いや、だからETUは僕にとってもAさんにとっても「地元クラブ」だ。僕の散歩コースはETUの練習用ピッチ(実際には2面の野球グラウンド)の横を抜けて、桜橋を渡るのが決まりだ。
一方、新潟もここまで5戦負けなし。NHK録画中継の話も含め、もう何が本来かよくわからないのだが、本来であれば好調どうしの楽しみな一戦だったのじゃないか。というのは新潟に故障者があい次ぎ、とても「本来」とは呼べない状況だったのだ。「非常事態」でいいだろう。メンバー選考に関して黒崎監督は選択肢がなかった。ベンチ入りしてない選手が全員、ケガか体調不良だ(厳密にいうと大島選手のように完調ではないが、ベンチ入りしたケースもある)。
チョ・ヨンチョル、ブルーノ・ロペス抜きの布陣は「飛車角抜き」と報じられた。個人的には田中亜土夢に期待をかけた(前回コラム参照のこと)が、脚を痛めてしまった。川又も体調不良だ。何と前節、途中出場でJデビューを果たしたばかりの酒井宣福がスタメンを張る。高卒ルーキーには、これ以上ない経験だ。こうなったらがむしゃらに行ってほしい。
新潟のベースは守備の堅実さだ。しぶとく守り抜いて、敵サイドバック、ジョルジ・ワグネルのウラへボールを入れる。そこを起点に2列めが駆け込む得点パターンだなぁ。新潟としてはとにかくロースコアの競り合いに持っていきたい。実際、序盤は好調・柏の攻撃をどうにかしのいでいた。
が、次第に人の間に入られ、ギャップが作られていく。「攻略」モードになってから、柏がめちゃめちゃ元気だ。守りだけじゃ押し返せない。敵陣にボールがおさまらない。僕は柏がやってるような「攻略」の仕掛けを去年、ミシェウが嬉々としてやってたなぁと思い出す。今、ピッチのミシェウさんは身体を張ったおさまりどころになるにしてはセンが細い。
前半23分、左サイドのもつれたところからジョルジ・ワグネルの個人技ゴール。この選手を上がりにくくしようと考えたわけだから、いかにプランが崩れたかということでもある。だけど、スーパーゴールはある意味、あきらめがつく。問題はこの後、いかに粘れるか。
前半終わり間際、新潟にこの日、最大のゴールチャンスが訪れる。いや、結果的にスタッツ上「シュート1本」だから唯一のというべきか。本間の落としにミシェウだった。バウンドが合わない。シュートは力なく敵GK・菅野の手におさまる。
後半はきびしかったなぁ。完全にゲームを支配された。ほぼノーチャンスといっていい内容。粘れませんでした。失点の描写は省く(後半16分・近藤、後半36分・工藤)。あぁ、やられるなぁ、これはやられるなぁと思って、やっぱりやられた。それがどういうやっぱりだったかについて熱心にはなれません。
まぁ、柏の強さも本物なのだろう。新潟は今季最多の3失点で敗れる。が、あえていえば新潟としては別に凹む試合じゃない。今季初黒星だ。敗れた理由もはっきりしている。
選手層の薄さははっきり見えてしまった試合だ。が、控えを厚くするには補強するか、若手に出場機会を与えるしかない。僕らは「何もできなかった酒井宣福」を覚えていればいい。根性があればこの試合を成長の糧とするだろう。
1、だから誰も凹む必要ないです。千葉選手も凹むな。これもサッカーです。次が大事。それよりこの試合、新潟出身の選手が5人(本間、酒井兄弟、長谷部、大野)もピッチに立ったんですよ。完敗の試合ではあるけれど、クラブ史の到達点じゃないですか。その意味でも亜土夢も出てほしかった。
2、JR東日本の復興支援企画「JR東日本パス」って凄いですね。第1回が6月11日から20日、第2回が7月9日から18日。何と新幹線も含め、東日本エリア1日乗り放題1万円です。日程を調べると第1回は関東サポ等のスワン観戦、第2回は新潟からのアウェー観戦にばっちり使えます。
3、ってことは6月18日の仙台戦、僕は朝早く上野を出て用もないのに長野へ行って善光寺さんお参りした後、大急ぎで大宮へとって返してスワンへ急行、試合後はダッシュで新潟駅へ駆け込めば終電に間に合って1万円で帰京可能ってことですね。落ち着きがないなぁー。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!