【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第150回
2012/10/4
「決定的な決定機」
J1第26節、磐田×新潟。
すごくいい試合だったと思うのだ。新潟のゲームプランがハマッた。攻撃力が売りの磐田を敵地・ヤマハスタジアムで0点に抑え切る。これがどれだけすごいことか、これまでの磐田のホームゲームのスコアを確認していただきたい。さすが柳下監督は去年まで磐田を率いていた方だ。ジュビロの抑え方を知り尽くしている。まぁ、スカウティングという意味では何年がかりで調べぬいたようなものだ。スカウティングのついでに選手を育てたり、タイトルを獲ったりしている(?)。さぞや磐田側はやりにくかったろうと想像する。
けれど、勝てなかった。僕は新潟は最善の戦いをしたと思う。最良のスカウティングに基づいてトレーニングを積み、最善の戦いをした。チームは柳下さんの指導で他と見劣りしない状態に整備された。整備されたのに勝てないのだ。今季の課題である得点力がなかなか向上しない。サッカーの形はすごく良くなっているのに、最後のゴールが決まらない。
磐田戦はそれがはっきり出た試合だった。今季51点(リーグ1位)も取ってる磐田攻撃陣を完封したけれど、こちらも得点が遠かった。まぁ、大雑把な分け方で話をすると「守ってカウンター」の形は決定機自体は少ないのだ。その代わり、決定機が来ると(馬鹿みたいな言い草だが)決定的となる。サッカーが一面で人数合わせのゲームである以上、逆をとるのが最も効果的な「敵の減らし方」だ。問題はその決定的な決定機を決定するかどうかなのだ。
決定的な決定機が決定しきれない。決定してほしかったなぁ。誰もが最大のチャンスだったと振り返るのは後半9分の藤田征也のシュートシーンだ。あのときはもらったと思った。カウンターの形だ。左サイドから田中亜土夢が持ち上がり、並走して上がったブルーノがエリア中央でスルー、大外を上がった藤田征也がGKと1対1で打った。これが右側に外れる。ピッチ脇の柳下監督が一瞬、しゃがみ込んでいた。
もうひとつの決定機は終盤ロスタイム、ミシェウさんのゴールがオフサイド判定になったシーンだ。矢野貴章が敵パスを奪い猛然と持ち上がる。駆け戻った敵DF&GKが身を挺してコースを消した脇をスーッとクロスが抜ける。待っていたのはフリーのミシェウさんだった。軽々と合わせ無人のゴールにボールが吸い込まれる。劇的な決勝弾は、しかし無情にもオフサイドの判定。いやぁ、ダメっすかぁ~? マジでダメっすかぁ~? 見逃してくれ~。うわああぁぁぁ~。まぁ、ブーイングしようと何しようと判定は覆(くつがえ)らない。試合後、気持ちのおさまんないサポから僕のところにもメールが届いた。実はそのとき、僕は文化放送のスタジオに入って生番組をやってる最中だった。←スタジオではケータイ切っとけ俺。
まぁ、こういう話をいくらしてもスコアレスドローはスコアレスドローなので、切り替えて前へ進むしかないんだなぁ。「あれが決まってれば」はサッカー談義の最高のネタだけど、今、誰もネタを楽しむ余裕がないだろう。厳然として残るのは、この試合で勝ち点1しかモノにできなかったという事実だ。又、今節、残留争いのライバル、大宮&ガンバがともに5ー0というスコアで大勝しているから気が気じゃない。
じゃ、どうしますか? 「札幌と新潟は決まったな」に与(くみ)しますか? 重圧に負けてチームを見捨てますか? よーく考えてみて下さい。勝ち点1をもぎ取ってるんですよ。好調の磐田を0点に抑え、チームは必死に食らいついている。そりゃ、今節、新潟も5ー0で勝利して、勝ち点差も得失点差も動かないのがベストではあります。ベストではあるけれど、そんなマンガみたいなことにはならない。今は食らいついてることが大事です。食らいついてるかぎりチームは死んでない。
アレですね、「よそはよそ、うちはうち」理論がサッカーにも適用できると皆、気が楽なんですけどね。うちの親は厳しかったからマンガとかオモチャとかぜんぜん買ってくれなかった。「クラスの石崎君は買ってもらったよ」と言っても「よそはよそ、うちはうち」。「クラスの子、みんな持ってるんだよ」と言っても「よそはよそ、うちはうち」。たぶんうちの親なら言うと思うんですよ、「大宮もガンバも5ー0だよ」、「よそはよそ、うちはうち」。「うちも得点が欲しいよ、みんな取ってるよ」、「よそはよそ、うちはうち」。
ただこの理論で納得してしまうとJリーグでは簡単にJ2降格してしまうだろうなぁ。やっぱり子育てとJリーグは違うんだ。僕は以前、人間が不幸になる秘訣は「比べること」だと発見したことがあります。他と比べて劣等感にさいなまれる。去年の自分と比べていじいじする。だから比べなければいいようなもんだけど、悲しいかな順位表はすぐ目につくところにあるんだなぁ。新潟日報にのってるし、クラブ公式HPにも出ている。
まぁ、「よそはよそ、うちはうち」理論の優れたところは何かというと、自分の子の成長をまっすぐに見ていることでしょうか。親は自分の子だけ見ている。わりと勝手なところがあったりしますよ。この子に今、何が必要かだけ考えてる。ま、つまり全ての親にとって自分の子は特別なんですね。
単にケチにしか思えなかった「よそはよそ、うちはうち」理論の背景には「私にとってお前は特別なんだよ」という親ごころがあった気もする。クラスの子が全員同じオモチャを買ってもらってたとしても、うちはお前を特別扱いするぞー。うーん、やっぱりケチかなぁ。
何言ってんだかわからなくなりましたが、順位表の一方で、チームを見る親ごころ(?)は失くさないでくださいね、ということかな。こういう状況だとファン、サポーターを鼓舞する勇ましい言葉を書いたほうがウケがいいけど、そんな「一億玉砕!」みたいなこと言ってもしょうがない。どっしり行こうよ。うちの子はちゃんと成長してるよ。歯車がピタッと合うのが先か、このままあとちょっとの感じで終わってしまうのか。ホームの勝利が欲しいですね。流れを変えるのはホームの勝利だと思います。
附記1、この土日はタレントさんみたいなスケジュールです。サッカー講座あり、スタジアムトークあり、単行本のサイン会あり、翌日曜日はTVの収録まである。てか、僕、往復新幹線で新潟行くの久しぶりじゃないのかなぁ。ちょっと仕事が大変な時期なんですけど、僕で役に立てるんなら頑張りますよ。何でもやってスタジアムを盛り上げたいですね。よろしくお願いします。
2、私事で恐縮、というか附記は主に私事を書くところなんですが、このほど私、日光アイスバックスの運営会社役員を退任しました。何でかっていうとアルビが降格危機にあるからです。っていうのはうそで、まぁ、実際は肩書き外れただけですね。ほとんど仕事(無給ですけど)は変わらない。後任の取締役には元選手の土田英二が就任しました。土田はこれから日本アイスホッケー界の顔になっていく男です。
3、しかし、この原稿の80パーくらいは(日光往復の東武線車内で)ポメラで書いたんですよ。使えるなぁ、バッテリーが単三電池オンリーなのも充電気にしなくていい。これから俺のことはポメラの使い手、ポメラニアンとでも呼んでくれ。
J1第26節、磐田×新潟。
すごくいい試合だったと思うのだ。新潟のゲームプランがハマッた。攻撃力が売りの磐田を敵地・ヤマハスタジアムで0点に抑え切る。これがどれだけすごいことか、これまでの磐田のホームゲームのスコアを確認していただきたい。さすが柳下監督は去年まで磐田を率いていた方だ。ジュビロの抑え方を知り尽くしている。まぁ、スカウティングという意味では何年がかりで調べぬいたようなものだ。スカウティングのついでに選手を育てたり、タイトルを獲ったりしている(?)。さぞや磐田側はやりにくかったろうと想像する。
けれど、勝てなかった。僕は新潟は最善の戦いをしたと思う。最良のスカウティングに基づいてトレーニングを積み、最善の戦いをした。チームは柳下さんの指導で他と見劣りしない状態に整備された。整備されたのに勝てないのだ。今季の課題である得点力がなかなか向上しない。サッカーの形はすごく良くなっているのに、最後のゴールが決まらない。
磐田戦はそれがはっきり出た試合だった。今季51点(リーグ1位)も取ってる磐田攻撃陣を完封したけれど、こちらも得点が遠かった。まぁ、大雑把な分け方で話をすると「守ってカウンター」の形は決定機自体は少ないのだ。その代わり、決定機が来ると(馬鹿みたいな言い草だが)決定的となる。サッカーが一面で人数合わせのゲームである以上、逆をとるのが最も効果的な「敵の減らし方」だ。問題はその決定的な決定機を決定するかどうかなのだ。
決定的な決定機が決定しきれない。決定してほしかったなぁ。誰もが最大のチャンスだったと振り返るのは後半9分の藤田征也のシュートシーンだ。あのときはもらったと思った。カウンターの形だ。左サイドから田中亜土夢が持ち上がり、並走して上がったブルーノがエリア中央でスルー、大外を上がった藤田征也がGKと1対1で打った。これが右側に外れる。ピッチ脇の柳下監督が一瞬、しゃがみ込んでいた。
もうひとつの決定機は終盤ロスタイム、ミシェウさんのゴールがオフサイド判定になったシーンだ。矢野貴章が敵パスを奪い猛然と持ち上がる。駆け戻った敵DF&GKが身を挺してコースを消した脇をスーッとクロスが抜ける。待っていたのはフリーのミシェウさんだった。軽々と合わせ無人のゴールにボールが吸い込まれる。劇的な決勝弾は、しかし無情にもオフサイドの判定。いやぁ、ダメっすかぁ~? マジでダメっすかぁ~? 見逃してくれ~。うわああぁぁぁ~。まぁ、ブーイングしようと何しようと判定は覆(くつがえ)らない。試合後、気持ちのおさまんないサポから僕のところにもメールが届いた。実はそのとき、僕は文化放送のスタジオに入って生番組をやってる最中だった。←スタジオではケータイ切っとけ俺。
まぁ、こういう話をいくらしてもスコアレスドローはスコアレスドローなので、切り替えて前へ進むしかないんだなぁ。「あれが決まってれば」はサッカー談義の最高のネタだけど、今、誰もネタを楽しむ余裕がないだろう。厳然として残るのは、この試合で勝ち点1しかモノにできなかったという事実だ。又、今節、残留争いのライバル、大宮&ガンバがともに5ー0というスコアで大勝しているから気が気じゃない。
じゃ、どうしますか? 「札幌と新潟は決まったな」に与(くみ)しますか? 重圧に負けてチームを見捨てますか? よーく考えてみて下さい。勝ち点1をもぎ取ってるんですよ。好調の磐田を0点に抑え、チームは必死に食らいついている。そりゃ、今節、新潟も5ー0で勝利して、勝ち点差も得失点差も動かないのがベストではあります。ベストではあるけれど、そんなマンガみたいなことにはならない。今は食らいついてることが大事です。食らいついてるかぎりチームは死んでない。
アレですね、「よそはよそ、うちはうち」理論がサッカーにも適用できると皆、気が楽なんですけどね。うちの親は厳しかったからマンガとかオモチャとかぜんぜん買ってくれなかった。「クラスの石崎君は買ってもらったよ」と言っても「よそはよそ、うちはうち」。「クラスの子、みんな持ってるんだよ」と言っても「よそはよそ、うちはうち」。たぶんうちの親なら言うと思うんですよ、「大宮もガンバも5ー0だよ」、「よそはよそ、うちはうち」。「うちも得点が欲しいよ、みんな取ってるよ」、「よそはよそ、うちはうち」。
ただこの理論で納得してしまうとJリーグでは簡単にJ2降格してしまうだろうなぁ。やっぱり子育てとJリーグは違うんだ。僕は以前、人間が不幸になる秘訣は「比べること」だと発見したことがあります。他と比べて劣等感にさいなまれる。去年の自分と比べていじいじする。だから比べなければいいようなもんだけど、悲しいかな順位表はすぐ目につくところにあるんだなぁ。新潟日報にのってるし、クラブ公式HPにも出ている。
まぁ、「よそはよそ、うちはうち」理論の優れたところは何かというと、自分の子の成長をまっすぐに見ていることでしょうか。親は自分の子だけ見ている。わりと勝手なところがあったりしますよ。この子に今、何が必要かだけ考えてる。ま、つまり全ての親にとって自分の子は特別なんですね。
単にケチにしか思えなかった「よそはよそ、うちはうち」理論の背景には「私にとってお前は特別なんだよ」という親ごころがあった気もする。クラスの子が全員同じオモチャを買ってもらってたとしても、うちはお前を特別扱いするぞー。うーん、やっぱりケチかなぁ。
何言ってんだかわからなくなりましたが、順位表の一方で、チームを見る親ごころ(?)は失くさないでくださいね、ということかな。こういう状況だとファン、サポーターを鼓舞する勇ましい言葉を書いたほうがウケがいいけど、そんな「一億玉砕!」みたいなこと言ってもしょうがない。どっしり行こうよ。うちの子はちゃんと成長してるよ。歯車がピタッと合うのが先か、このままあとちょっとの感じで終わってしまうのか。ホームの勝利が欲しいですね。流れを変えるのはホームの勝利だと思います。
附記1、この土日はタレントさんみたいなスケジュールです。サッカー講座あり、スタジアムトークあり、単行本のサイン会あり、翌日曜日はTVの収録まである。てか、僕、往復新幹線で新潟行くの久しぶりじゃないのかなぁ。ちょっと仕事が大変な時期なんですけど、僕で役に立てるんなら頑張りますよ。何でもやってスタジアムを盛り上げたいですね。よろしくお願いします。
2、私事で恐縮、というか附記は主に私事を書くところなんですが、このほど私、日光アイスバックスの運営会社役員を退任しました。何でかっていうとアルビが降格危機にあるからです。っていうのはうそで、まぁ、実際は肩書き外れただけですね。ほとんど仕事(無給ですけど)は変わらない。後任の取締役には元選手の土田英二が就任しました。土田はこれから日本アイスホッケー界の顔になっていく男です。
3、しかし、この原稿の80パーくらいは(日光往復の東武線車内で)ポメラで書いたんですよ。使えるなぁ、バッテリーが単三電池オンリーなのも充電気にしなくていい。これから俺のことはポメラの使い手、ポメラニアンとでも呼んでくれ。