【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第152回
2012/10/18
「生中継」
J1第28節、新潟×神戸。
直前まで粘ってみるが、単行本の原稿が終わらずスワン行きを断念した。新潟駅のポスター見たかったなぁ。いやー、肩が凝ってる。風邪はすっかり治ったけど、こう長時間机に向かってると立ったとき、ちょっと頭ぐるぐるするね。今日を逃すとしばらく試合に行けないんだ。ミッドウィークの試合はTBSラジオ『えのきどいちろうの水曜ウォンテッド!』がかぶるし、週末は日光アイスバックスのゲームが重なる。次に行けるのは川崎戦だ。ホントに申し訳ない。いちばん大事なときに見に行けないよ。
こういうとき、TVの生中継はすごい有難いなぁと思う。直前まで机に向かっていて、アラームでハッと気がついてリビングへ移動する。移動時間これだけだもん。フルで試合見て、しばらく興奮がおさまらなくても、まぁ、1時間後には再び机に向かってる。相当忙しくても影響が出ないですよ。むしろ、時間までにここまで書こうとか、目標が立てられる。まぁ、だから神戸戦は肩こり&頭ぐるぐるがリビングルーム中央で「よっしゃ、来た~」とか叫んでいたと思ってください。
連勝。この試合に求めるものはその一点に尽きる。名古屋戦のホーム大勝で流れは変わった。選手らも、それを後押しする者もポジティブに行ける。連勝が絶対必要だ。連勝が動きだした空気をホンモノにする。まして神戸はビッグスワンで圧倒的に分のいい相手だ。柳下監督就任すぐのアウェー戦だって充分勝機があった。
神戸は新潟と同じようにシーズン途中、西野さんに監督が代わり、新しいチャレンジを続けてきたチームだ。が、実績日本屈指の西野朗監督を持ってしても思うように行ってない。4連敗で降格圏近くまで順位を下げた。この試合は肉離れで離脱中だった田代のジョーカー役での復帰が報じられている。神戸も正念場なのだ。ガチだ。少なくとも前節の名古屋みたいに最後あきらめてはくれないね。
スカパー映像が選手入場時の新潟コレオ「We are ONE」を美しく映し出す。今日はパーソンズ等のライブフェスタで文句なく観客も熱を帯びている。いい感じじゃないかな。これは勝つでしょ。勝ちますよって空気感が画面から伝わってくる。あとはやるだけ。アルビレックス新潟、やり切ってみせろ!
前節の試合で鼻骨骨折をした石川直樹がフェースガードをしている。が、試合が始まって違和感があったのだろう、早々に外してしまった。石川は読みのタイプのDFだから、感覚を研ぎ澄ませていたいのだと思う。接触プレーとかないといいなぁと思って敵のCKにちょっとヒヤヒヤする。
前半、新潟はいい感じでビルドアップしていた。ミシェウさんが真ん中で受けて、攻めが連動していく。解説の梅山修さんが「選手の距離感」という話をする。ホントにそうだなぁ、往年のオフトさんが言ってた「トライアングル」みたいな感覚だ。選手が動いて常にスペースに顔を出す。短いパスがつながり、好機が生まれる。短いパスということは陣形がコンパクトに保たれてるということだし、パスがつながるということは「トライアングル」で言えば常にパスコースが2つ(以上)作られてるということになる。おお、構築するねぇと期待をもって見ていた。
が、結果から振り返るとこの前半、リズムのあったときに得点できなかったのが応えた。というのは、後半ほぼノーチャンスくらいに何もできなくなるからだ。後半はDFラインが下がって、防戦一方になる。わかんないもんだね、僕はこのところ神戸は後半がよくなかったから、こりゃいけるとハーフタイム、ホクホクしていたのだ。新潟は前半の「選手の距離感」がまるで変わってしまった。
といって神戸のやってきたことは順当すぎるくらい順当なものだ。前線に高さを作ってボールを入れるイメージ。そりゃそうでしょうと思うんだけど、きっと僕の見落としてる戦術的なアヤがあるんだろうな。いや、ちょっとびっくりした。あんなに何もできなくなっちゃうんだな。
押し返す力をイメージして矢野貴章が投入されるが、あまり事態は変わらない。後半、選手らがきつそうだった。勝たなきゃいけないことは皆、わかっているんだ。だから敵は「押し込んでくる神戸」と「刻々過ぎていく時間」のふたつだ。どうにかしようという表情をスカパーのカメラが逃さない。どうにかしたいんだけど、思うようにならない顔というのか。
スコアレスドローだ。うーん、これは神戸には大きな引き分けだけど、新潟は痛恨か。まぁ、食らいついてくという意味では勝ち点1は貴重なんだけど(実際、ガンバが負けて今節、順位がひとつ上がった)、どうなんだろう、勢いをつける絶好の機会を逸した気がしてならない。「まぁ、サッカーは相手があるかならなぁ」で納得してしまえる状況ではないだろう。
試合後、スカパー恒例の梅山さんインタビューで柳下監督がはっきり怒っていた。ミスが多かったと振り返った後で、週の半ば、チームが緩んだという主旨のコメントがあった。それが「大勝の後の気の緩み」だとしたら、ちょっと困ったことだ。この時点でそんな感じだと、もうのんびり屋さんにもほどがあるって話だ。
僕は判断に迷っている。「首の皮一枚つながってる状態で必死に食らいついてる」のか。「柳下さんが締めないと容易に緩んでしまうチーム状態」なのか。今シーズンはここで勝たなきゃきついぞという節目の試合で結果が出ていない。次節・大宮戦もそんな一戦だけど、ここまで来ての勝ち点差2は大きいよ。大宮は(ドローはもちろん)負けても残留ラインまで1差で望みがつなげる。新潟は勝たなきゃならない。
自宅リビングで肩こり&頭ぐるぐるは「マジかぁ~」と叫ぶ。切り替えて仕事に戻るのがしんどい。ベランダの洗濯ものをとり込むことにした。Tシャツをたたんで、ソックスをくるっとまとめる。何かわからないが、必ずかたっぽだけのソックスが出る。どうしてそうなるのだろう。
附記1、と、ここまで書いてTBSラジオへ出かけて、今、帰ってきたんですけど天皇杯負けたんだね。2年連続でアップセット食らったかぁ。うーん、ショックだなぁ。まぁ、リーグ戦とは出場選手が変わってるし、一概にリーグ戦への影響は言えないけど、うーん、まいったなぁ。
2、その天皇杯・福島戦はまだNHK録画中継を見てないので、来週のコラムで扱います。
3、話題変えよう。新潟駅連絡通路のポスター掲示はすごい好評ですね。僕の手書き文字のポスターはね、今シーズン、病気で入院してる子らをビッグスワンへ自腹で招待しているサポがいて、その人に頼まれて、こう、遠足の「歌のしおり」みたいな部数、コピーしてあげたやつなんだ。だもんで、ひらがな多め&子供時代の回想から入っている。その招待試合、アルビは負けたんだけど、皆、「すごかった、人がいっぱいいた!」って顔を輝かせてたって聞いた。僕はひとりぼっちじゃないんだぞ、スタジアムにいっぱい人がいるね、これはオレンジの仲間だ、いつも思い出してほしいって書いたんだ。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第28節、新潟×神戸。
直前まで粘ってみるが、単行本の原稿が終わらずスワン行きを断念した。新潟駅のポスター見たかったなぁ。いやー、肩が凝ってる。風邪はすっかり治ったけど、こう長時間机に向かってると立ったとき、ちょっと頭ぐるぐるするね。今日を逃すとしばらく試合に行けないんだ。ミッドウィークの試合はTBSラジオ『えのきどいちろうの水曜ウォンテッド!』がかぶるし、週末は日光アイスバックスのゲームが重なる。次に行けるのは川崎戦だ。ホントに申し訳ない。いちばん大事なときに見に行けないよ。
こういうとき、TVの生中継はすごい有難いなぁと思う。直前まで机に向かっていて、アラームでハッと気がついてリビングへ移動する。移動時間これだけだもん。フルで試合見て、しばらく興奮がおさまらなくても、まぁ、1時間後には再び机に向かってる。相当忙しくても影響が出ないですよ。むしろ、時間までにここまで書こうとか、目標が立てられる。まぁ、だから神戸戦は肩こり&頭ぐるぐるがリビングルーム中央で「よっしゃ、来た~」とか叫んでいたと思ってください。
連勝。この試合に求めるものはその一点に尽きる。名古屋戦のホーム大勝で流れは変わった。選手らも、それを後押しする者もポジティブに行ける。連勝が絶対必要だ。連勝が動きだした空気をホンモノにする。まして神戸はビッグスワンで圧倒的に分のいい相手だ。柳下監督就任すぐのアウェー戦だって充分勝機があった。
神戸は新潟と同じようにシーズン途中、西野さんに監督が代わり、新しいチャレンジを続けてきたチームだ。が、実績日本屈指の西野朗監督を持ってしても思うように行ってない。4連敗で降格圏近くまで順位を下げた。この試合は肉離れで離脱中だった田代のジョーカー役での復帰が報じられている。神戸も正念場なのだ。ガチだ。少なくとも前節の名古屋みたいに最後あきらめてはくれないね。
スカパー映像が選手入場時の新潟コレオ「We are ONE」を美しく映し出す。今日はパーソンズ等のライブフェスタで文句なく観客も熱を帯びている。いい感じじゃないかな。これは勝つでしょ。勝ちますよって空気感が画面から伝わってくる。あとはやるだけ。アルビレックス新潟、やり切ってみせろ!
前節の試合で鼻骨骨折をした石川直樹がフェースガードをしている。が、試合が始まって違和感があったのだろう、早々に外してしまった。石川は読みのタイプのDFだから、感覚を研ぎ澄ませていたいのだと思う。接触プレーとかないといいなぁと思って敵のCKにちょっとヒヤヒヤする。
前半、新潟はいい感じでビルドアップしていた。ミシェウさんが真ん中で受けて、攻めが連動していく。解説の梅山修さんが「選手の距離感」という話をする。ホントにそうだなぁ、往年のオフトさんが言ってた「トライアングル」みたいな感覚だ。選手が動いて常にスペースに顔を出す。短いパスがつながり、好機が生まれる。短いパスということは陣形がコンパクトに保たれてるということだし、パスがつながるということは「トライアングル」で言えば常にパスコースが2つ(以上)作られてるということになる。おお、構築するねぇと期待をもって見ていた。
が、結果から振り返るとこの前半、リズムのあったときに得点できなかったのが応えた。というのは、後半ほぼノーチャンスくらいに何もできなくなるからだ。後半はDFラインが下がって、防戦一方になる。わかんないもんだね、僕はこのところ神戸は後半がよくなかったから、こりゃいけるとハーフタイム、ホクホクしていたのだ。新潟は前半の「選手の距離感」がまるで変わってしまった。
といって神戸のやってきたことは順当すぎるくらい順当なものだ。前線に高さを作ってボールを入れるイメージ。そりゃそうでしょうと思うんだけど、きっと僕の見落としてる戦術的なアヤがあるんだろうな。いや、ちょっとびっくりした。あんなに何もできなくなっちゃうんだな。
押し返す力をイメージして矢野貴章が投入されるが、あまり事態は変わらない。後半、選手らがきつそうだった。勝たなきゃいけないことは皆、わかっているんだ。だから敵は「押し込んでくる神戸」と「刻々過ぎていく時間」のふたつだ。どうにかしようという表情をスカパーのカメラが逃さない。どうにかしたいんだけど、思うようにならない顔というのか。
スコアレスドローだ。うーん、これは神戸には大きな引き分けだけど、新潟は痛恨か。まぁ、食らいついてくという意味では勝ち点1は貴重なんだけど(実際、ガンバが負けて今節、順位がひとつ上がった)、どうなんだろう、勢いをつける絶好の機会を逸した気がしてならない。「まぁ、サッカーは相手があるかならなぁ」で納得してしまえる状況ではないだろう。
試合後、スカパー恒例の梅山さんインタビューで柳下監督がはっきり怒っていた。ミスが多かったと振り返った後で、週の半ば、チームが緩んだという主旨のコメントがあった。それが「大勝の後の気の緩み」だとしたら、ちょっと困ったことだ。この時点でそんな感じだと、もうのんびり屋さんにもほどがあるって話だ。
僕は判断に迷っている。「首の皮一枚つながってる状態で必死に食らいついてる」のか。「柳下さんが締めないと容易に緩んでしまうチーム状態」なのか。今シーズンはここで勝たなきゃきついぞという節目の試合で結果が出ていない。次節・大宮戦もそんな一戦だけど、ここまで来ての勝ち点差2は大きいよ。大宮は(ドローはもちろん)負けても残留ラインまで1差で望みがつなげる。新潟は勝たなきゃならない。
自宅リビングで肩こり&頭ぐるぐるは「マジかぁ~」と叫ぶ。切り替えて仕事に戻るのがしんどい。ベランダの洗濯ものをとり込むことにした。Tシャツをたたんで、ソックスをくるっとまとめる。何かわからないが、必ずかたっぽだけのソックスが出る。どうしてそうなるのだろう。
附記1、と、ここまで書いてTBSラジオへ出かけて、今、帰ってきたんですけど天皇杯負けたんだね。2年連続でアップセット食らったかぁ。うーん、ショックだなぁ。まぁ、リーグ戦とは出場選手が変わってるし、一概にリーグ戦への影響は言えないけど、うーん、まいったなぁ。
2、その天皇杯・福島戦はまだNHK録画中継を見てないので、来週のコラムで扱います。
3、話題変えよう。新潟駅連絡通路のポスター掲示はすごい好評ですね。僕の手書き文字のポスターはね、今シーズン、病気で入院してる子らをビッグスワンへ自腹で招待しているサポがいて、その人に頼まれて、こう、遠足の「歌のしおり」みたいな部数、コピーしてあげたやつなんだ。だもんで、ひらがな多め&子供時代の回想から入っている。その招待試合、アルビは負けたんだけど、皆、「すごかった、人がいっぱいいた!」って顔を輝かせてたって聞いた。僕はひとりぼっちじゃないんだぞ、スタジアムにいっぱい人がいるね、これはオレンジの仲間だ、いつも思い出してほしいって書いたんだ。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
