【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 予告編
2013/3/7
「今週は予告編」
読者よ、待ちかねた2013年シーズンの開幕です。いつもサッカーシーズンの到来は不思議な感覚ですね。「奇跡の残留劇」がつい昨日のようにも感じられる。キャンプ情報は毎日入って来るけど、遠い場所で行われている。新潟県は2月に雪が続いた。冒頭書いたように本当に僕らは待ちかねているのです。だけど、同時に実感のともなわない、奇妙な感じでもあるのです。
僕は先週、Jステップ(静岡県)にチームを訪ねた。午後練をのんびり見物してから、柳下正明監督のロングインタビューを収録した。インタビューはおそらく開幕前にモバアルにアップされる筈です。それはそっちで御覧いただくとして、やっぱりね、見に行ったらブワァァーッとに実感わいたっす、という報告をさせて下さい。わいたなぁ。Jステップは清水のちょっと町から離れた丘みたいなところにあるんだね。そこをトコトコ上がっていくと、ピッチがあってチームがいる。あれはね、感激する。サッカーチームの現物が目の前にあるんだ。
僕も書きはじめようと思います。書きはじめると言えば、今シーズンから『PV』誌(アルビレックス新潟プレビュー)の連載がスタートして、これで散歩道、新潟日報、PVとフル参戦ですよ。「そんなに書いて大丈夫なの?」という知り合いサポの声も頂戴したけれど、あんたね、僕がライターで何年食ってると思ってるんだ。ちゃんとコンセプトを変えて、全部やり切りますよ。あ、PVは今年から定期購読オンリーになったみたいだからよろしくお願いしますね。
で、カンジンの散歩道なんですが、毎年言ってることを今年も言おうと思いますね。肩のこらない読みものを心がけたい。いや、僕ね、「散歩道泣けました」的なリアクションもらうのどうなんだろうと思うんだなぁ。タイトルが散歩道ですよ。散歩道ってのんびりしたもんですよ。僕の散歩コースを紹介すると隅田川べりの遊歩道だ。ゆりかもめが飛んでて、水上バスや屋形船が行き交っている。僕はそこで川の匂いや草むらの匂いをかいで、子供の頃に帰るんだ。あぁ、こういう感じでお陽様浴びていたときがあったなぁ。こうしてるとあんまり変わんないなぁ。リラックス~。わかんないけど、散歩道ってそういうイメージじゃないですか。
だからアレです、今年こそあんまりリキまないで、「散歩道笑えました」ってことになるといいです。それにはやっぱりチームに頑張ってもらわないとなぁ。そりゃガケっぷちだと力も入るよ~。お、書いてみると「ガケっぷち」って字づらはかわいいですね。「ぷち」なんだな。ぷっちょ感覚。小規模な崖は「ぷちガケっぷち」? いや、いかんいかん。ガケっぷちなんかに興味を示して何になる。開幕前からエンギでもないですよ。
あ、あとね、ジャーナリストの木村元彦さんと話していたとき、ポピュリズムの問題を指摘されました。ポピュリズムは一般的には政治用語ですけど、これは僕らライターも自戒すべき事柄です。2月10日、北書店で開催したトークイベントで、木村さんは端的にこういう言い方をした。「サポーターが間違うことだってあるんです」。サポーターは間違える。サポーターが常に正しいわけではない。それはその通りですね。「サポーター無謬神話」なんてことになったら、それは原発の安全神話と変わらないでしょう。
ですが、ライターは構造としてサポーターの支持を気にします。早い話、ウケるかウケないか。で、これね、ライターがサポにウケることばっかり書いたらどうなりますか? 歴史はアレです、教えていますよね。戦争が起きたとき、一般大衆が過熱して、それにあおられるように「販売部数を気にした新聞が迎合して、更にあおる」という現象が起きた。
僕の書くものだってこの課題を免れ得ないと思います。僕は血の通った人間なので、たぶん今シーズンだって熱くなるだろうと思っている。それは性分ですね。だけど、書き手として誠実でありたい。僕は「新聞の戦争責任」みたいな大袈裟な話は置いとくとしても、戦前の新聞人は自分の書いたもんが皆をえっらい悲惨な運命に導いてしまった慙愧の念があったと思いますよ。僕は今年もあらためて少数者の立場からスタートします。
それはカンタンに言うと「非サポ」ですよね。以前、この連載に書いた言い方でいうと「友人」くらいの立ち位置。より添って立つけれど、言うべきことはきちんと言える関係。僕は心をこめて、毎週書いていくつもりですよ。それでは皆さん、素晴らしいシーズンを!
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

読者よ、待ちかねた2013年シーズンの開幕です。いつもサッカーシーズンの到来は不思議な感覚ですね。「奇跡の残留劇」がつい昨日のようにも感じられる。キャンプ情報は毎日入って来るけど、遠い場所で行われている。新潟県は2月に雪が続いた。冒頭書いたように本当に僕らは待ちかねているのです。だけど、同時に実感のともなわない、奇妙な感じでもあるのです。
僕は先週、Jステップ(静岡県)にチームを訪ねた。午後練をのんびり見物してから、柳下正明監督のロングインタビューを収録した。インタビューはおそらく開幕前にモバアルにアップされる筈です。それはそっちで御覧いただくとして、やっぱりね、見に行ったらブワァァーッとに実感わいたっす、という報告をさせて下さい。わいたなぁ。Jステップは清水のちょっと町から離れた丘みたいなところにあるんだね。そこをトコトコ上がっていくと、ピッチがあってチームがいる。あれはね、感激する。サッカーチームの現物が目の前にあるんだ。
僕も書きはじめようと思います。書きはじめると言えば、今シーズンから『PV』誌(アルビレックス新潟プレビュー)の連載がスタートして、これで散歩道、新潟日報、PVとフル参戦ですよ。「そんなに書いて大丈夫なの?」という知り合いサポの声も頂戴したけれど、あんたね、僕がライターで何年食ってると思ってるんだ。ちゃんとコンセプトを変えて、全部やり切りますよ。あ、PVは今年から定期購読オンリーになったみたいだからよろしくお願いしますね。
で、カンジンの散歩道なんですが、毎年言ってることを今年も言おうと思いますね。肩のこらない読みものを心がけたい。いや、僕ね、「散歩道泣けました」的なリアクションもらうのどうなんだろうと思うんだなぁ。タイトルが散歩道ですよ。散歩道ってのんびりしたもんですよ。僕の散歩コースを紹介すると隅田川べりの遊歩道だ。ゆりかもめが飛んでて、水上バスや屋形船が行き交っている。僕はそこで川の匂いや草むらの匂いをかいで、子供の頃に帰るんだ。あぁ、こういう感じでお陽様浴びていたときがあったなぁ。こうしてるとあんまり変わんないなぁ。リラックス~。わかんないけど、散歩道ってそういうイメージじゃないですか。
だからアレです、今年こそあんまりリキまないで、「散歩道笑えました」ってことになるといいです。それにはやっぱりチームに頑張ってもらわないとなぁ。そりゃガケっぷちだと力も入るよ~。お、書いてみると「ガケっぷち」って字づらはかわいいですね。「ぷち」なんだな。ぷっちょ感覚。小規模な崖は「ぷちガケっぷち」? いや、いかんいかん。ガケっぷちなんかに興味を示して何になる。開幕前からエンギでもないですよ。
あ、あとね、ジャーナリストの木村元彦さんと話していたとき、ポピュリズムの問題を指摘されました。ポピュリズムは一般的には政治用語ですけど、これは僕らライターも自戒すべき事柄です。2月10日、北書店で開催したトークイベントで、木村さんは端的にこういう言い方をした。「サポーターが間違うことだってあるんです」。サポーターは間違える。サポーターが常に正しいわけではない。それはその通りですね。「サポーター無謬神話」なんてことになったら、それは原発の安全神話と変わらないでしょう。
ですが、ライターは構造としてサポーターの支持を気にします。早い話、ウケるかウケないか。で、これね、ライターがサポにウケることばっかり書いたらどうなりますか? 歴史はアレです、教えていますよね。戦争が起きたとき、一般大衆が過熱して、それにあおられるように「販売部数を気にした新聞が迎合して、更にあおる」という現象が起きた。
僕の書くものだってこの課題を免れ得ないと思います。僕は血の通った人間なので、たぶん今シーズンだって熱くなるだろうと思っている。それは性分ですね。だけど、書き手として誠実でありたい。僕は「新聞の戦争責任」みたいな大袈裟な話は置いとくとしても、戦前の新聞人は自分の書いたもんが皆をえっらい悲惨な運命に導いてしまった慙愧の念があったと思いますよ。僕は今年もあらためて少数者の立場からスタートします。
それはカンタンに言うと「非サポ」ですよね。以前、この連載に書いた言い方でいうと「友人」くらいの立ち位置。より添って立つけれど、言うべきことはきちんと言える関係。僕は心をこめて、毎週書いていくつもりですよ。それでは皆さん、素晴らしいシーズンを!
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
