【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第214回

2014/6/5
 「ナビスコ連敗」
 
 ナビスコカップ第4節(Bグループ)、柏×新潟。
 仕事をかたづけて常磐線に飛び乗ったら、もうスタメンが発表されていた。それがめっちゃ新鮮なメンツだ。DFラインに大野和成、ソン・ジュフンが入る。舞行龍ジェームズは1列上がってボランチらしい。それから右サイドハーフに小泉慶。非常にチャレンジングなチームだ。柏とはついこないだ(J1第13節)、ところも同じ日立台・柏サッカー場で当たっている。あのときはスリリングな好勝負だった。当コラムは「完敗」と評したのだけど、実際は四分六くらいで、ほんの少し敵が上回っていただけだ。

 あのときのリベンジマッチだ、と燃えていた。雨上がりのRC気分だ。朝から降り続いた雨が上がって、スタジアムの向こうに夕暮れの街が見える。ピッチは濡れていて、プレーに多少影響が出るだろうけど、本降りのなか試合するのとは気分が違う。スタンドは数こそ少ないが、本当のサッカーファンで埋まる。

 しかし、気分爽快だったのは試合が始まるまでだなぁ。いやもう、見てるこっちまでパニックですよ。ありゃりゃ。新潟どうした。いや、試合は10日前くらいにやったのと同じ、スピーディかつスリリングな展開なんですよ。少なくとも柏レイソルはそっくり同じ感じで入った。強いて言えばレアンドロが復帰して、チームのムードが上がっていたかもわかんない。まぁ、でも大体こないだと同じだ。新潟の様子が違った。

 守れてないんだよ。穴が開く。そりゃ柏はとんでもなく速く、そして巧い。が、こないだはほぼ互角にやり合ったじゃないか。やっぱり、新しく入った選手が流れに乗れてない。見てるこっちも肝を冷やす。と思ったら大野があっさりウラをとられて、右サイドをえぐられ、折り返しを田中順也に決められた(前半9分)。

 超やばいことになった。たぶん緊急避難的な判断で、舞行龍がCBのポジションに下がり、変則的に5バックになってる。で、とにかくはね返すんだけど、今度は中盤がスカスカなんだ。そりゃ当たり前だね、舞行龍が1列下がって、ボランチの位置がレオ・シルバひとりだから。さすがのレオも孤立すると仕事ができないんだな。レオも人間なんだと変なところで感心した。

 で、追加点を茨田陽生に決められる(前半34分)んだけど、やっぱりスカスカのスペース使われちゃったんだな。後半に渡部博文にもう1点許し(後半13分)、都合3対0で負け。但し、実際にはラッキーが重なって3失点で済んだ内容。きっついなぁ。5、6点取られてもおかしくなかった。メンバー変えたら柏クラスとはやり合えないのか?


 ナビスコカップ第5節(Bグループ)、新潟×浦和。
 この試合は録画観戦だった。当日は日光アイスバックスの元プレーヤー・小林弘典の結婚披露宴で札幌プリンスホテルにいた。ていうか正確にいうとキックオフ時には札幌ドームでプロ野球交流戦、日ハム×DeNAを見ていた。5回裏まで見て、あわてて地下鉄に飛び乗ったのだ。プロ野球といえばこの週、アベノミクス関連のニュースで「プロ野球16球団」構想が報じられたのだった。首相サイドが経済施策としてプロ野球チームを4つ増やすアイデアをメディアへ向け語ったようだ。新球団のホーム候補地は北信越、静岡、四国、沖縄の4ヶ所だそうで、ことによると「北信越」は福井、富山、長野、新潟をざっくりひとくくりにしたフランチャイズかもしれない。だけど、これは支持されるのかなぁ。例えば「北信越アスレチックス(仮にですよ)」の本拠地がエコスタになった場合、他県の人は応援するか(もしくは本拠地が長野オリンピックスタジアムになった場合、新潟県民は応援するか)。そしてもちろんアルビレックスBCの立場はどうなるだろうね?

 で、ナビスコ浦和戦の結果はホテルへと移動し、シャワーを浴びて身づくろいをした後、ケータイ速報で確認した。というか知人サポーターから続々と凹んだメールが届いた。「自滅。浦和は別に強くなかったけど、うちがチャンスを活かせない決められない」「オウンさんがゴールしました」「やられた…。得点するチャンスはたくさんあったし、ものすごく面白かった。結果がついてこないです」。

 そして披露宴の途中には代表合宿で酒井高徳がケガをしたらしいというメールが届く。主賓テーブルで、隣りはセルジオ越後さんだ。僕は日本一早く高徳のケガの可能性をセルジオさんに伝えた男になった。「セルジオさん、酒井高徳が病院へ行ったみたいです」「時期が早いからあんまり騒がないほうがいいのね。必要なら準備してまだ間に合うから」。

 で、翌日帰京してから録画を見た。苦手中の苦手・浦和レッズとやった試合にしてはなかなかの内容じゃないか。柏戦の反省を生かし、守りを安定させたな。ソン・ジュフンがグッと良くなった。まぁ、試合終盤、大野和成がオウンゴールしてしまうのだが、クリア(ミス)はツキの部分もある。悔しさは次の試合で晴らそうぜ。がんばれ大野、がんばれがんばれ。ワカゾーは常に顔を上げろ。

 しかし両チーム、さすが守備に自信を持ってるだけあって、危険な場面はあっても失点に至らない。逆にいうと得点にも至らない。新潟としては今季繰り返してきたストーリーだ。取るべきときに得点を取っとかないと勝機を失う。ナビスコ連敗でグループ勝ち抜けはかなり難しくなった。もちろん可能性は残っているけどね。もちろん(1節空いて)次の第7節・大宮戦も駆けつけるけどね。


附記1、酒井高徳選手はどうやら大丈夫みたいですね。ホッとしました。いよいよ日本代表は直前のフロリダ合宿です。

2、なでしこジャパンのアジアカップ初制覇はしびれました。ベトナムの暑さ、超タイトな日程をものともせず、むしろ新旧世代の融合を一歩すすめて、その上で「結果」をつかんで帰る。百点満点ですね。アルビレックス新潟レディース所属の上尾野辺めぐみ、小原由梨愛の2選手もおめでとう&おつかれさまでした。

3、しかし、なでしこは新潟と縁のある選手が多かったですよね。僕は『蹴る女/なでしこジャパンのリアル』(河崎三行・著、講談社)を読んで、阪口夢穂が新潟で過ごした日々を追体験してたので、アジアカップの国際映像を見ても「新発田市のナミックス月岡工場の皆さんも応援してくれてるかな」なんて思ってました。この本は(なでしこブームになる前から)たぶん日本一現場に張りついてたフリー記者が書いた本です。選手との距離感、プレーや人物描写の解像度がズバ抜けてる。文句なく名作だと思いますよ。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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