【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第223回
2014/8/7
「折り返し地点」
J1第17節、川崎×新潟。
リーグ戦再開後、これで3連敗だ。すべてスコアは0対1。印象としてはうまく戦われちゃったなぁ、という試合ばかりだ。夏場の連戦は相手にとってもきつい。この日の川崎も5連戦に加え、とんでもない蒸し暑さ(ゲリラ豪雨がたまたま等々力競技場を逸れてくれた)でコンディション的にはきびしいものがあったろう。「要所のところを頑張る」戦い方だった。川崎はこういう試合運びができるチームになったんだな。資料を見ると(新潟とは逆に)1対0で着実に結果を拾ってきている。
新潟は「ゴールが遠い病」。ちょっと重症になってきた。それでも田中達也、成岡翔がスタメンを張った前半は面白い攻撃もあったんだよ。試合が進むにつれ、尻つぼみになってしまった。決勝点を奪われたのは後半15分、中村憲剛→大久保嘉人→森谷賢太郎と2本いいパスがつながったシーン。特に大久保のラストパスは見事だった。DFを引きつけて、走り込んでくる森谷にそっと渡す。森谷は「流し込むだけでよかった」ってやつだね。
まぁ、川崎5連勝(天皇杯含む)&新潟3連敗だから両軍関係者やファン、サポーターの雰囲気が対称的なのはしょうがない。試合後、新潟応援席からは珍しくブーイングが起きた。また会見で柳下正明監督は口ぶりが重く、風間八宏監督はニコニコだった。
僕は監督会見で柳下さんに質問しようかどうか、ものすごく迷ったのだった。というのは記者席で久々に会ったライターの中山淳さんから「川又はケガですか?」と訊かれたんだね。中山さんはずっとブラジルへ行ってたこともあって事情を知らない。ていうか、事情を知らない人のほうが多いと思うんだ。去年のベストイレブン・川又堅碁の欠場に関してアナウンスがあんまりない。まぁ、選手の調子みたいな部分は微妙な問題だと思いますよ。ケガならお医者さんの診断をアナウンスできるけどね。
だけど、例えば巨人が菅野智之のローテーション2つ飛ばしたら何らかのアナウンスはするでしょ。それは川又や菅野が「真のエース」かどうかみたいな話とは別の問題だ(それはファンがスポーツバーとかでひと晩、語り明かせばいい)。僕が質問しようかどうしようか迷った事柄は「何故、川又は外れてるんですか?」。結局、わざとらしい気がして質問自体はやめたんだけど、ヤンツーさんのコメントの形でアナウンスを引き出したほうが役に立てるんじゃないかと真剣に考えたのだ。。
実はヤンツーさんは第15節・浦和戦後の会見で一度、この問題に言及している。「どうして川又はベンチ外なんですか?」という記者に、「練習を見に来てないでしょ。今日、ゲームをやる準備ができてなかったので外しました」とちょっととりつく島がなかった。僕もW杯にかかりきりで練習取材に行けてなかったから、ありゃ、困ったなぁと思った。ただ埼スタの会見場では聖籠へ行ってない記者のほうが多いと思う。それから一般のサッカーファンは聖籠に行かない人がほとんどだ。
で、すぐ新潟メディアの記者さんに尋ねてみたんだね。普段から聖籠に通い詰めてる、信頼できる何人かの記者さん。そしたら、どうも本当にケンゴは調子を落としてるらしい。「見ればわかりますよ」くらいの感じだった。ケガとかじゃなさそうだ。まぁ、僕がちょっと心配したのは、ケンゴは昔、神経性胃炎やってるでしょ。初めて柏戦でスタメン出場することになったときだね。ケガじゃないにせよ、そういう心因性の何かだったら困ったなぁということだった。
まぁ、それで浦和戦の後、FC東京戦、川崎戦と首都圏勢シリーズを順々に見てきたんだけど、何しろ「ゴールが遠い病」だ。フツーに考えれば「何で去年の得点ランキング2位は出ないんだ?」となる。等々力の会見でヤンツーさんは「ラストパスとフィニッシュの精度を高めていかないと、時間はかかるが、勝ち点は取れない」と語った。精度を上げるのはカンタンじゃないだろう。コメントの行間にあるのは「しばらく変わらないかもしれないが、腰をすえて取り組むつもりだからヨロシク!」というニュアンスだ。
で、僕は中山淳さんの「川又はケガですか?」を思い出したんだね。ケンゴに関してアナウンスがいるなぁと思って。いや、「調子落ちですよ」で構わないんだ。プロスポーツは「事情をわかってくれてる常連サポーター」のほうだけ向いててもよくないでしょ。なるべく一般が誰でもストーリーにアクセスできるのが望ましい。
まぁ、会見場では質問しなかったんだけどね、この原稿は書く決心をした。自分なりにきちんと向き合う。知りうる範囲でアナウンスを試みる。
問題はどこにあるかというと、リーグ戦再開後の3連敗だね。F1とかでスターティンググリッドでエンストしちゃって、置いてかれるクルマを見たことがあるけれど、ちょうどあんな感じだ。まぁ、実際問題、けっこう長く(リーグ戦の)勝ちから遠ざかっている。それでも前向きでいられたのは負けが少なかったからだ。
それがいきなり3連敗して、いきなり降格圏が視界に入ってきた。8月の結果如何では、2年ぶりにゴール裏が「残留」と大書した断幕を用意しかねない。
まぁ、僕がトライしたいのはひとつひとつポジティブなものを提示していくことだな。まず風通しを良くしたい。僕は今年はわりとピンチだと見る。たぶんこの夏場から皆、気合い入れてかかんないと大変だ。という意味では、僕は今季、優勝争いをするつもりでいたから、見誤ったことをハッキリ詫びたい。
附記1、といって実際はシーズンの半分が終わっただけです。これから何が起きるか誰にもわからない。ケンゴが復調して大爆発、気がついたら得点王を争ってたなんて事態も、はんにゃむ~ほんにゃむ~、あるといいなぁ。
2、その場合ですけど、結局、優勝争ってたりして。そうしたらあらためてもういっぺん「見誤った」と詫びますね。
3、セレッソ戦ですけど、宿がないんですよ。長岡花火の影響みたいですね。あきらめてTV観戦することにして、当日は南関東総体の女子サッカーを取材することにしました。北信越代表の「開志学園JSC」は1回戦、北海道代表「北海道文教大明清」と当たりますよ。
4、だもんでセレッソ戦は応援たのみます。観客動員で圧倒できないかな。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

J1第17節、川崎×新潟。
リーグ戦再開後、これで3連敗だ。すべてスコアは0対1。印象としてはうまく戦われちゃったなぁ、という試合ばかりだ。夏場の連戦は相手にとってもきつい。この日の川崎も5連戦に加え、とんでもない蒸し暑さ(ゲリラ豪雨がたまたま等々力競技場を逸れてくれた)でコンディション的にはきびしいものがあったろう。「要所のところを頑張る」戦い方だった。川崎はこういう試合運びができるチームになったんだな。資料を見ると(新潟とは逆に)1対0で着実に結果を拾ってきている。
新潟は「ゴールが遠い病」。ちょっと重症になってきた。それでも田中達也、成岡翔がスタメンを張った前半は面白い攻撃もあったんだよ。試合が進むにつれ、尻つぼみになってしまった。決勝点を奪われたのは後半15分、中村憲剛→大久保嘉人→森谷賢太郎と2本いいパスがつながったシーン。特に大久保のラストパスは見事だった。DFを引きつけて、走り込んでくる森谷にそっと渡す。森谷は「流し込むだけでよかった」ってやつだね。
まぁ、川崎5連勝(天皇杯含む)&新潟3連敗だから両軍関係者やファン、サポーターの雰囲気が対称的なのはしょうがない。試合後、新潟応援席からは珍しくブーイングが起きた。また会見で柳下正明監督は口ぶりが重く、風間八宏監督はニコニコだった。
僕は監督会見で柳下さんに質問しようかどうか、ものすごく迷ったのだった。というのは記者席で久々に会ったライターの中山淳さんから「川又はケガですか?」と訊かれたんだね。中山さんはずっとブラジルへ行ってたこともあって事情を知らない。ていうか、事情を知らない人のほうが多いと思うんだ。去年のベストイレブン・川又堅碁の欠場に関してアナウンスがあんまりない。まぁ、選手の調子みたいな部分は微妙な問題だと思いますよ。ケガならお医者さんの診断をアナウンスできるけどね。
だけど、例えば巨人が菅野智之のローテーション2つ飛ばしたら何らかのアナウンスはするでしょ。それは川又や菅野が「真のエース」かどうかみたいな話とは別の問題だ(それはファンがスポーツバーとかでひと晩、語り明かせばいい)。僕が質問しようかどうしようか迷った事柄は「何故、川又は外れてるんですか?」。結局、わざとらしい気がして質問自体はやめたんだけど、ヤンツーさんのコメントの形でアナウンスを引き出したほうが役に立てるんじゃないかと真剣に考えたのだ。。
実はヤンツーさんは第15節・浦和戦後の会見で一度、この問題に言及している。「どうして川又はベンチ外なんですか?」という記者に、「練習を見に来てないでしょ。今日、ゲームをやる準備ができてなかったので外しました」とちょっととりつく島がなかった。僕もW杯にかかりきりで練習取材に行けてなかったから、ありゃ、困ったなぁと思った。ただ埼スタの会見場では聖籠へ行ってない記者のほうが多いと思う。それから一般のサッカーファンは聖籠に行かない人がほとんどだ。
で、すぐ新潟メディアの記者さんに尋ねてみたんだね。普段から聖籠に通い詰めてる、信頼できる何人かの記者さん。そしたら、どうも本当にケンゴは調子を落としてるらしい。「見ればわかりますよ」くらいの感じだった。ケガとかじゃなさそうだ。まぁ、僕がちょっと心配したのは、ケンゴは昔、神経性胃炎やってるでしょ。初めて柏戦でスタメン出場することになったときだね。ケガじゃないにせよ、そういう心因性の何かだったら困ったなぁということだった。
まぁ、それで浦和戦の後、FC東京戦、川崎戦と首都圏勢シリーズを順々に見てきたんだけど、何しろ「ゴールが遠い病」だ。フツーに考えれば「何で去年の得点ランキング2位は出ないんだ?」となる。等々力の会見でヤンツーさんは「ラストパスとフィニッシュの精度を高めていかないと、時間はかかるが、勝ち点は取れない」と語った。精度を上げるのはカンタンじゃないだろう。コメントの行間にあるのは「しばらく変わらないかもしれないが、腰をすえて取り組むつもりだからヨロシク!」というニュアンスだ。
で、僕は中山淳さんの「川又はケガですか?」を思い出したんだね。ケンゴに関してアナウンスがいるなぁと思って。いや、「調子落ちですよ」で構わないんだ。プロスポーツは「事情をわかってくれてる常連サポーター」のほうだけ向いててもよくないでしょ。なるべく一般が誰でもストーリーにアクセスできるのが望ましい。
まぁ、会見場では質問しなかったんだけどね、この原稿は書く決心をした。自分なりにきちんと向き合う。知りうる範囲でアナウンスを試みる。
問題はどこにあるかというと、リーグ戦再開後の3連敗だね。F1とかでスターティンググリッドでエンストしちゃって、置いてかれるクルマを見たことがあるけれど、ちょうどあんな感じだ。まぁ、実際問題、けっこう長く(リーグ戦の)勝ちから遠ざかっている。それでも前向きでいられたのは負けが少なかったからだ。
それがいきなり3連敗して、いきなり降格圏が視界に入ってきた。8月の結果如何では、2年ぶりにゴール裏が「残留」と大書した断幕を用意しかねない。
まぁ、僕がトライしたいのはひとつひとつポジティブなものを提示していくことだな。まず風通しを良くしたい。僕は今年はわりとピンチだと見る。たぶんこの夏場から皆、気合い入れてかかんないと大変だ。という意味では、僕は今季、優勝争いをするつもりでいたから、見誤ったことをハッキリ詫びたい。
附記1、といって実際はシーズンの半分が終わっただけです。これから何が起きるか誰にもわからない。ケンゴが復調して大爆発、気がついたら得点王を争ってたなんて事態も、はんにゃむ~ほんにゃむ~、あるといいなぁ。
2、その場合ですけど、結局、優勝争ってたりして。そうしたらあらためてもういっぺん「見誤った」と詫びますね。
3、セレッソ戦ですけど、宿がないんですよ。長岡花火の影響みたいですね。あきらめてTV観戦することにして、当日は南関東総体の女子サッカーを取材することにしました。北信越代表の「開志学園JSC」は1回戦、北海道代表「北海道文教大明清」と当たりますよ。
4、だもんでセレッソ戦は応援たのみます。観客動員で圧倒できないかな。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
