【第10回】成功を重ね、チャレンジを重ねよう!
2018/8/14

全体評価は難しいけれど、光るプレーがあったルヴァン仙台戦
4月も後半に入って一気に暖かくなってきました。先週はルヴァンカップ仙台戦、J2リーグ大宮戦がありましたが、1勝1敗。ルヴァン仙台戦は、勝利という結果は良かったのですが、相手にも高校生が多く入っていて、「チームとしてどうだったか」を推し量る点では難しかったですね。おそらく仙台も本来やりたかったことができなかったのではないでしょうか。
そういう状況でも光るプレーはあって、優汰くんがサイドで何度も突破したり、泰基が仕掛けからオウンゴールを誘ったりしていました。それに達也さん。あのゴールは「さすが」の一言で、感覚的にあの辺りにゴールがある、と分かっていてのシュートだったと思います。本当に達也さんは上手いなと、感じ入ってしまいました。個の部分で新潟が上回れるところは多かったと思います。
最後のターレスと新太がPKを争った場面は、僕も含めてスタジアムにいた人たちがズッこけるような展開でしたね(笑)。でも、あれも新太が前に行こうとするから生まれたもので、良さはすごく出ていたんじゃないかと思います。
僕が感じるアルビレックス、ビッグスワン
さて、J2リーグ大宮戦の前に、僕がビッグスワンについて日頃考えていること、思っていることを少し話させてもらえればと思います。僕は子どもの頃からビッグスワンに通って、アルビレックス新潟のゲームを見てきました。その頃からの夢である、新潟の選手としてピッチに立つことも実現し、スタジアムの雰囲気を肌で感じることもできました。
ビッグスワンには「オレンジの壁」があると僕は表現しています。たとえばレアル・マドリーだったら、あまりにも有名ですが伝統の白いユニフォームを選手たちが着用して、スタジアム全体が白いユニフォームやフラッグでひしめいている。「白い巨人」と言われていますが、それは新潟にもある、と僕は思っています。
イケイケドンドンは適切な表現ではないかもしれません。でも、「ここでは何かが起こるんだ」という雰囲気にさせてくれるのがビッグスワンの良さじゃないかと。サポーターの熱に呼応して、選手たちもゴールを目指し、アグレッシブに突き進む。ミスが起きても、またボールを奪い返しに行くことで、どんどんスタジアムが熱くなっていく。
そういうアルビレックス新潟だったり、ビッグスワンは相手にとって本当に嫌なんじゃないかと、いま色々な視点からゲームを見ている立場では思うんです。でも、今はそういったものを活かし切れていないように感じています。
色々なギャップを埋めていきたい
たとえばサイドにボールが入ったり、前に行った時に、横や後ろへのパスが出ると、「アァ…」という声がスタンドからもれます。昔と比べたくはないのですが、ずっと応援してくれているサポーターの方々は、新潟のサッカーのイメージと、いまピッチで展開されているもののギャップが生じているのかもしれません。選手同士でもギャップを埋めていく作業は大事ですが、そういったギャップも互いに理解を進めていきたいな、と思います。
前に選択肢がなかったり、相手のウィークを突けたり、駆け引きだったり。色々な条件があるので、プレーしている側としては、闇雲にすべて突っ込めばいい、とは思いません。でも、仕掛けどころ、勝負どころで、ビッグスワンがウワッとなる瞬間はありますよね。そのサポーターが作り出す波に、選手が乗っていくこともあっていい。何より、勇気を胸に、前に進んでいくことが僕たちには重要です。
相手に楽な状況を新潟から作っている可能性
大宮戦まで3連敗をしていて、正直に言えばあまり状況が良くない中で、どうしてもボールを大事にしようとする気持ちは痛いほどよく分かります。自分たちがボールを大事にすれば、失点しなかったり、ゲームを優位に進める大きな要因になることは、間違いないと思います。
でも、フィフティフィフティになるかもしれないけれど、行けるチャンスを逃してしまうことによって、対戦相手のDFラインや守備的な選手にとっては、すごく楽な状況を新潟側から作ってしまっているかも知れない。もしかしたら、ボールを持って相手に攻撃をさせないと思うあまり、自分たちが得点できるチャンスをやり過ごしている可能性もあるんじゃないかと。
対照的だったターレスとシモヴィッチ
大宮戦はターレスが先発起用されました。足元の高い技術があり、ボールを扱えるのは何試合かを見て分かっていることですが、率直に言ってもう少し前でプレーしてくれてもいいと僕は思います。自分がDFなら、DFラインギリギリのポジションでターレスのフィジカルを活かされる方がしんどい。収められても困るし、ボールが入ってアクシデントが生じる可能性もあるからです。
ディフェンスラインとの駆け引きではないですが、そこに居続けられることの方が、嫌なんですよね。つまり、ターレスはそれほど脅威になり得る存在だという裏返しでもあります。
今回は大宮に9シモヴィッチがいました。対照的だったのですが、シモヴィッチは新潟のCBに上手く付いていました。当然新潟はシモヴィッチを潰そうとするのですが、すると10大前選手や二列目の選手が、シモヴィッチをマークする選手の裏を狙おうとしていました。FWとCBの駆け引きに加えて、別の攻防もあったわけです。逆に新潟にはそれが少なく、先ほども言いましたが楽な時間が多かったのではないかと思います。
相手に脅威を与え続けよう
いま、新潟は後ろではボールを回せているので、ゴール前の脅威が欲しい。大宮戦では後半、ファウルを取られましたが、ターレスが相手を背負ったところから反転して豪快にゴールネットを揺らしたシュートがありました。ゴールという結果が出なかったのは残念ですが、僕はとても明るい材料だと思いました。あれを繰り返されたら、相手DFは本当に嫌だったはずです。
だからこそ、あのプレー後にチームとして「もっとこれを繰り返そう」となって良かったんじゃないかと思います。選手たちの間でどう話し合っているかは分かりませんが、脅威を与えられるポジションを取ることで、周りの選手がどう動くかも決まってくる。あそこから、「次はカワくんがどう動くか」だったり、その後のアクションがどんどん生まれてくれば、ゴールの匂いはどんどん濃くなってくるんじゃないでしょうか。
ターレスはチームメイトとコミュニケーションを交わす場面もあります。前線からのプレッシングや、フォア・ザ・チームの姿勢を見せてくれているのはとてもプラスですよね。だからこそ、攻撃面でもチームの狙いをみんなで話し、共有して役割を果たしてくれることに僕は期待します。高さに関してはシモヴィッチに軍配が上がるかもしれませんが、強さは間違いなくターレスの方が上なのですから。
最終的な目標を見失わないことが大事
僕はこういう時だからこそ、ゲームにおける最終的な目標である「勝利」や「ゴール」を大事にするべきだと思います。難しく考え過ぎるのは、逆に自分たちを縮こまらせる。4-4-2にしてボールを回せていないことを問題にするのか、得点を取れていないことを問題にするのか。もちろんボールを回せるに越したことはありませんが、それよりもどこを狙うか。方法の部分が目標にすり替わってしまわないようにしていきたいですよね。
大宮戦では新太が途中交代で入りました。彼らしいゴールを目指すガムシャラなプレーが加わって、明らかにチームには推進力が生まれ、攻撃の厚みが増しました。以前も言いましたが、チームにメッセージを伝えられる意味では、貴重な存在になってきていると思います。
「勝ちたい、点を取りたい、前に行きたい」という気持ちが新太からは伝わります。その意志をみんなが持つことも大事だと思うのと同時に、新太自身が影響力を高めるためには、あいつがゴールを取るしかない。もちろんチームの決まりが大事なので、冗談なのですが、「PK譲っている場合じゃないぞ。自分で行けよ!」と言いたいですね(笑)
成功を重ね、チャレンジを重ねよう!
よく「いい練習、いい日々の過ごし方から」と言いますが、嫌な流れはゲームで払拭するしかないと思います。試合で成功体験を得ることは、何よりも大きなプラス要素。まずはキックオフから、ひとつひとつ成功体験や、恐れずチャレンジを重ねていくことで、勢いに乗っていきたいです。また、そうすることで良さが出る選手が新潟には何人もいるじゃないですか。それを活かさなければ、もったいないです。
たとえばカワくん。開幕当初はDFラインの裏を狙うプレーで何度もチャンスを作り出していました。大宮戦も、前半立ち上がりにそういう動き出しから、手を上げて「寄越せ」と求めた場面があったんですよね! そこに出て良くなるのであれば、もっと厳しく要求してもいい。チームのためなら、厳しく言っていかないといけないと思います。
それで送られたボールが味方に渡らず、はね返されたっていい。新潟本来のアグレッシブさが活きるセカンドボールの攻防があります。拾えれば全体が前に行き、二次攻撃、三次攻撃につながっていく。綺麗な崩しからばかりがシュート数やチャンスを増やすことではないし、裏を狙うことが相手攻撃を受けないための改善策なのかもしれません。
アウェイ連戦、山口と金沢へ
J2リーグはアウェイの連戦となります。28日に対戦するレノファ山口FCは、チーム全体的にも若いですが、特に前線にフレッシュな選手がたくさんいます。以前も触れた高木大輔もいますが、アグレッシブに動けて、気持ちを前面に押し出してくる。
正直、上手さはそんなにないですが、ガツッとパワーをかけてボールに向かってくる山口のようなチームは、一度乗せるとチーム全体に伝染します。逆に終盤にはベテランの選手を送り込んで落ち着かせるようなこともしてくるので、現状4連敗している新潟としては、率直にやりづらい。相手の良さを上手く出させないように、それこそ最初にどういうプレーをしなければいけないかを考えて臨みたいです。
その次は、新潟の監督も務めたヤンツーさんが率いる金沢。ヤンツーさんは怖かったですが、球際や、戦う部分に関しては本当にすごいものがありました。サッカーのベースになるもので、そこができないとごまかすようなことはできない。球際の部分は逃げずに、やっていかないといけません。苦しい状況で選手たちをサポートできるのは、いつだってサポーターの皆さんの応援です。ひとつひとつの成功体験やチャレンジを盛り上げ、一緒に勝利を目指しましょう!