【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第97回(前編)

2011/6/30
「ポジティブな試合」

 J1第16節、新潟×仙台。
 すげぇ試合だった。俺はしびれたよ。勝ち点や順位を考えてる人には悪いけど、とりあえずそういうのは頭からふっ飛んだ。最高のゲームだったなぁ。この試合見に来れなかった人は残念でしたよ。

 「無敗の仙台」をホームに迎えた一戦だ。ベガルタ仙台は特別なシーズンを戦っている。震災後、トレーニング施設をかろうじて確保するところから出発し、避難所のボランティアに人を出したりしながらどうにか陣容を整える。度重なる余震でマルキーニョスが帰国してしまった。そうしたら再開幕してから神がかりのような進撃だ。完全に「負けない東北」のシンボルになってしまった。僕はJリーグ旗揚げ以降、こんなチームはひとつしか知らない。98-99年天皇杯の横浜フリューゲルスだ。

 迎え撃つ新潟は徳俵に足がかかっていた。主力のコンディションが整わないところへ、オリンピック予選に選手を送り出している。従来なら上位チームとの対戦はむしろ見せ場というか、そこを叩いて存在感を発揮する芸風なんだけど、今節は苦しい。逆に言えば、ミシェウもチョ・ヨンチョルもいないこの試合こそチームのベース部分を問うものだ。そして逆境における反発力を問うものだ。僕は正直言って、この試合沈むんなら今シーズン沈むだろうとハラをくくった。

 やることはハッキリしている。戦う。高級な戦術も何もない。バルサじゃないんだ。局面で戦うしかない。どんだけ泥臭かろうが走って、勝負して、ねじ込む。スタメンに川又、木暮、田中亜土夢、三門、大野の名前が並ぶ。ここが新潟のベースだ。ここに覇気がないんだったら緊急補強で誰か連れて来ようが、新潟は沈むしかない。じっくり育てて何年後に花咲かそうなんて言ってる場合じゃないんだ。今、勝負して来い。難しい要求もへったくれもない。ただ戦って来い。

 試合は前半、仙台の勢いが勝る。得意のサイド攻撃が何度もゴールをおびやかす。すっきりしている。信じ合ってるチームだ。攻め上がるときも戻るときも息が合っている。新潟はどうにか対応し、ロングボールをウラへ出すイメージ。と、相手のミスから川又が突っ込んでいく。グラウンダーのシュートはGK・林が抑えるが、これで流れが変わる。新潟にかっさらって攻めるイメージが生まれる。それよそれ、突撃、突撃、ケンゴ! おめ、それ百ぺんやれ! 

 0対0で後半へ。面白いもので「メンバー落ちの新潟」が好調仙台とフツーにやり合っている。この試合は中盤が主戦場だ。仙台のプレッシャーがきびしく、奪い合いが見応え充分。どうよ、「メンバー落ちの新潟」? サッカーやってる気がするだろう。サッカー面白いだろう。試合に出ないとこのびりびり来る感じは味わえないんだぜ。

 川又堅碁が抜群に面白い。こぼれを狙ってかっさらう。ここだと思うと身体が動き出し、ヘディングでポストを叩く。僕は川又は今シーズン、スーパーな選手に成長すると思う。いや、今やってることがスーパーだ。続けろ続けろ。こんな面白い初スタメン、見たことないよ。

−後編に続く−


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