【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第97回(後編)

2011/6/30
 試合ががんがん白熱する。新潟がセカンドボールを拾いまくる。歓喜のシーンは後半27分、ブルーノ・ロペスが右に持ち込んで折り返し、川又がニアでつぶれ、その後ろへ駆け込んだ三門のゴール! 三門は直前の「木暮→小林慶」の交代で、ボランチから2列目にポジションを上げていた。奪ってから早く仕掛けたことも含め、新潟の理想的な形だ。

 そして黒崎監督の退場劇。ベンチ前に立ち、目の前で選手がつかまれたのを主審が流したことから怒り爆発だ。ボトルを投げて猛抗議を続ける。監督就任以来、あんなに怒った黒崎さんは初めて見る。まぁ、この日の村上伸次主審は前半からきわどい接触を流すレフェリングだった。闘将のメッセージはピッチに伝わった。勝つぞ。いいか執念だ。

 場内は360度、全て爆心地の音圧。新潟レッツゴー、俺たちの新潟。
 2千人の仙台サポも戦う。レッツゴー仙台。
 関口が反撃のシュートを狙って来た。仙台はここまで気持ちで負けずに来たチームだ。CK2本。気持ちをぶつけて来る。新潟GK・東口の足がつってスタッフが呼ばれる。あるいは足がつったテイで、チームに間をとっているのか。

 仙台の猛攻。赤嶺のヘッドを東口が片手で防ぎ、それをもう一度弾き出す。もう、バレーボールだ。このとき、敵と交錯し、東口は足が痛そうなそぶりをする。新潟はひとりひとりが身体を張った守備を続ける。すげぇ試合だ。俺はこれが見たかった。

 ロスタイムは5分。仙台の闘魂が素晴らしい。しかし、東口がビッグセーブで立ちふさがる。僕はこの時点で彼の足の変調を気にしていなかった。足はつってるかもしれないが、文句なく最高の働きだ。後で録画を確かめたら、試合を止めてスタッフは左ヒザをアイシングしていた。
 失点シーン。公式記録後半45分はつまり終了間際だ。折り返しに菅井のヘッド一閃。東口は左ヒザ内側副じん帯損傷で動けなかったそうだ。全治4週間の戦線離脱。それにしても仙台は鬼神のような勝負強さを見せた。彼らの姿から謙虚に学びたい。サッカーは気持ちで成り立たせるものだ。


附記1、と、ここまで書いて第17節・横浜FM×新潟を見に行ったんですが、これは苦しい試合でしたね。横浜FMも6月連戦に入ってもうひとつ(1勝2敗)だったんです。この日は前線からプレスをかけて新潟にサッカーさせない戦法で来た。これで何もできなくなってしまった。今年はDFからボランチへタテに入れるところを狙ってくるチームが目立つなぁ。攻めの組み立てをさせないんだ。ま、失点はPKの1点だけだからよく守ったとも言えるけど、勝機はほとんどなかったかな。川又も疲れてた。仙台戦が良かっただけにいい試合が続かないのが残念。前向きな要素は菊地&ミシェウの復帰、そしてGK・小澤英明の頑張りですね。

2、先週のサッカー講座は沢山の方にお集まりいただき有難うございます。エイヤードの丸山さんをひっぱり出して話を聞いたんだけど、みんな泣いちゃったよなぁ。ところで僕ね、サッカー講座やった試合って負けた印象ないんですよ。ゲンがいい。で、ここにもうひとり「まだ生涯、アルビの勝った試合しか見たことない」というゲンのいい男がいます。次回は大高洋夫(第三舞台)連れていかねば。

3、そういえばサッカー講座で発表したんですけど、亀田製菓が「オレンジページ広告大賞・審査員特別賞(えのきどいちろう賞)」を受賞されました。おめでとうございます。いや、厳正な審査の結果であって、別にひいきしたわけじゃないですよ。贈賞式は過日、六本木のリッツカールトン東京で盛大にとり行なわれました。
 
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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