【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第104回(後編)
2011/8/18
うわ、でたらめに長くなった。あらためてJ1第20節。清水がすっかり調子をおかしくして、ビッグスワンへやって来た。以前も書いたが、僕はこのチームがよくわからない。前回、日本平で対戦したとき、勝てる試合を失った印象があるので、4対0の大敗を2戦連続しでかし中の相手にきっちりリベンジを果たしたい。
試合。新潟はサイド攻撃が圧倒的によくなった。右の亜土夢&村上、左のヨンチョル&ゴートク。推進力もスペースの作り方も素晴らしい。この日は夜になっても大変な蒸し暑さが残り、選手には過酷なコンディションだったと思うが、サイドが機能することで新潟は水を得た魚のようだ。今季最多3万8千人の声援を受けて、試合を完全に支配する。清水の時間帯は前半わずかしかなかった。久々に新潟の波状攻撃が見られた。叉、清水のDFが左右に振られると弱い。
前半40分、ミシェウの先制ゴールはその典型だ。右から入れて、ニアで田中亜土夢がバイシクルのモーションでひきつけ、ファーで受けたヨンチョルがフェイントを入れて、中央へ顔を出したミシェウへラストパス。左右に振って、うまく顔を出す選手に渡す。
1対0で後半へ。黒崎監督は「ここまでは前回、日本平の対戦と同じ」とチームを引き締める。あのときはイージーミスで自ら流れを変えてしまった。その轍は踏むまい。新潟はがっちりペースを握って、渡さない。清水が暑さに参っているのと対照的に「手がつけられない新潟」状態が続く。たぶん読者はこう思っただろう。あれっ、いつの間にかすごくいいチームになってる。選手の持ち味が足し算、かけ算されて、ついに「11年アルビレックス」が姿を現した。
後半22分、チョ・ヨンチョルのループシュート。後半32分、突撃ブルーノ・ロペスのマイナスのパスからミシェウの走りこみ。3点獲った。祭りだ祭りだ。ビッグスワン祭りだ。いや、それが4点めもあったのだ。ロスタイム、交代出場のアンデルソン・ゴンサガがCKを蹴った。これが見事なボールだ。千葉がドンピシャで合わせた。何と千葉ちゃんJ1初ゴール!
当たり前のことを書く。ポジティブな上にもポジティブな結果だ。ケガ明け以降、物足りなかったヨンチョルが復調を予感させ、新加入の村上がバリバリ、その上、アンデルソン・ゴンサガまでがわずかの時間でひと仕事やってみせた。面白いぞこのチーム。大体、菊地→鈴木大輔、ヨンチョル→藤田の交代の豪華さは何だ。知らない間に層が厚くなっている。
附記1、この日はなでしこリーグとの2本立てで、本当にビッグスワン祭りでした。炎天下の観戦はちょっときつかったでしょうか。それでも澤選手はスーパーな働きを見せてくれました。アレですね、「今、女子サッカーというジャンルを定立させるのだ」という気概ですね。
2、その大観衆の前で、男女ともにアルビレックス新潟は最高のデモンストレーションが出来たんじゃないでしょうか。きっと初めてサッカーを見る人だっていたと思います。
3、ただビッグスワン祭りの祝祭性のなかで、唯一、松田直樹選手への黙祷を行い、喪章をつけねばならなかったことだけが悲しかった。考えれば考えるほど悲しいです。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
試合。新潟はサイド攻撃が圧倒的によくなった。右の亜土夢&村上、左のヨンチョル&ゴートク。推進力もスペースの作り方も素晴らしい。この日は夜になっても大変な蒸し暑さが残り、選手には過酷なコンディションだったと思うが、サイドが機能することで新潟は水を得た魚のようだ。今季最多3万8千人の声援を受けて、試合を完全に支配する。清水の時間帯は前半わずかしかなかった。久々に新潟の波状攻撃が見られた。叉、清水のDFが左右に振られると弱い。
前半40分、ミシェウの先制ゴールはその典型だ。右から入れて、ニアで田中亜土夢がバイシクルのモーションでひきつけ、ファーで受けたヨンチョルがフェイントを入れて、中央へ顔を出したミシェウへラストパス。左右に振って、うまく顔を出す選手に渡す。
1対0で後半へ。黒崎監督は「ここまでは前回、日本平の対戦と同じ」とチームを引き締める。あのときはイージーミスで自ら流れを変えてしまった。その轍は踏むまい。新潟はがっちりペースを握って、渡さない。清水が暑さに参っているのと対照的に「手がつけられない新潟」状態が続く。たぶん読者はこう思っただろう。あれっ、いつの間にかすごくいいチームになってる。選手の持ち味が足し算、かけ算されて、ついに「11年アルビレックス」が姿を現した。
後半22分、チョ・ヨンチョルのループシュート。後半32分、突撃ブルーノ・ロペスのマイナスのパスからミシェウの走りこみ。3点獲った。祭りだ祭りだ。ビッグスワン祭りだ。いや、それが4点めもあったのだ。ロスタイム、交代出場のアンデルソン・ゴンサガがCKを蹴った。これが見事なボールだ。千葉がドンピシャで合わせた。何と千葉ちゃんJ1初ゴール!
当たり前のことを書く。ポジティブな上にもポジティブな結果だ。ケガ明け以降、物足りなかったヨンチョルが復調を予感させ、新加入の村上がバリバリ、その上、アンデルソン・ゴンサガまでがわずかの時間でひと仕事やってみせた。面白いぞこのチーム。大体、菊地→鈴木大輔、ヨンチョル→藤田の交代の豪華さは何だ。知らない間に層が厚くなっている。
附記1、この日はなでしこリーグとの2本立てで、本当にビッグスワン祭りでした。炎天下の観戦はちょっときつかったでしょうか。それでも澤選手はスーパーな働きを見せてくれました。アレですね、「今、女子サッカーというジャンルを定立させるのだ」という気概ですね。
2、その大観衆の前で、男女ともにアルビレックス新潟は最高のデモンストレーションが出来たんじゃないでしょうか。きっと初めてサッカーを見る人だっていたと思います。
3、ただビッグスワン祭りの祝祭性のなかで、唯一、松田直樹選手への黙祷を行い、喪章をつけねばならなかったことだけが悲しかった。考えれば考えるほど悲しいです。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!